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往路総評

  12年ぶりの往路優勝、総合2位の好成績を残し名門復活の狼煙を上げた昨年の箱根駅伝。逆境をはねのけ掴んだ喜びとあと一歩のところで頂点を逃した悔しさを胸に、竹澤健介(スポ4)主将のもと始動した2008年度の早稲田は、エースの世界舞台への挑戦やルーキーの活躍などが部員に刺激を与え、チーム内に激しい競争が生まれた。するとチーム力は着実に向上し、大会屈指の選手層と能力を誇るチームに仕上がった。そして、満を持して迎えた2009年の箱根のスタートライン。第85回の記念大会のため出場チームも23チームに増え、例年以上に熾烈なレースが予想された今大会。悲願の「総合優勝」を目指す早稲田、連覇を狙う王者・駒澤大など23チームそれぞれの想いがぶつかりあう、2日間に渡る戦いの始まりを告げる号砲が、2009年1月2日午前8時、澄み切った青空の広がる大手町に鳴り響いた。

重圧をはねのけ、絶好のスタート(1区、2区)

 

故障の竹澤に代わり、2区に登場した尾崎。 持前の安定感で、68分台の好記録。

 早稲田の1区を務めたのは矢澤曜(教1)。レースは当初の予想通り、スローペースで展開。今年も1区には突出した選手がいないこともあり、15km過ぎまで大きく仕掛ける者は現れず、23人全員で集団を形成。しかし、蒲田を過ぎた辺りからペースが上がってくると、集団は次第に縦長となり、六郷橋の地点では先頭集団は約半数の11人に。すると、スタートから集団の後方で待機し冷静にチャンスを窺っていた矢澤が19km過ぎで一気にスパート。鶴見中継所への残り2kmの道のりを一心不乱に駆け抜けた矢澤は、2位の神奈川大と4秒差のトップで2区に襷を繋ぎ、早稲田では12年ぶりの1区区間賞を獲得。スターターとしての役割を十分に果たし、チームに勢いをもたらした。

 山梨学院大・モグス、日本大・ダニエルの両留学生が注目を集めた花の2区。早稲田は2区を回避した竹澤健介(スポ4)に代わり、安定感ある走りで渡辺康幸監督からの信頼も厚い尾ア貴宏(教3)を起用。尾アは、権太坂付近までに6位に順位を下げてしまうものの、慌てることなく他校のエースと互角に渡り合い、区間7位の好走。上位との差を最小限に食い止め、3区に控える主将の竹澤に襷を託した。一方で、2km過ぎからトップを独走し続けたモグスが2年連続で区間新記録を樹立。また22位からスタートしたダニエルは、大会新記録となる20人抜きでチームを2位に押し上げた。

エースとルーキーで2区間連続の区間新(3区、4区)

 

故障を抱えながらの出場となった主将の竹澤。 それでも区間新記録を樹立し、格の違いを見せつけた。

 2年連続で3区での出場になったエース竹澤は、先頭の山学大とは3分36秒差で襷を受け取ると、序盤からエンジン全開。3.5km付近で中央学院大らの2位集団を捕えると、その後も区間記録を大きく上回るペースでトップを猛追する。東洋大・大西智や東海大・佐藤悠基など実力者が続々登場した今年の3区の中でも、異次元の走りを見せた竹澤は結局、従来の区間記録を30秒以上更新して2年連続の区間賞。先頭との差を16秒にまで縮め、流れを再び大きく早稲田に引き寄せたスーパーエースは、最後の箱根でも圧倒的な存在感を放っていた。また、4年連続区間新記録の期待がかかった東海大・佐藤は、チームを3位に浮上させるも区間新には届かず。大会2連覇を狙う駒澤大は、渡邉が区間21位の大ブレーキで17位に後退した。

 大会最短区間の4区。憧れの竹澤から襷を受け継いだ三田裕介(スポ1)は、ルーキーらしからぬ落ち着いたレース運びを見せる。1km付近で先頭の山学大に難なく追いつくと、それからしばらくは山学大・後藤との並走が続く。10kmを過ぎ、疲れの見え始めた後藤が遅れだすと、その後は三田の一人旅。中盤の細かなアップダウンをものともせず、自分のペースを守り抜いた三田は、初の箱根路ながら55分04秒の区間新記録で小田原中継所に飛び込み、会心のガッツポーズを見せた。

箱根の山が生んだ熾烈な先頭争い(5区)

 

自身最後の駅伝としての箱根に挑んだ三輪だったが 思うような走りが出来ず区間13位に終わった。

 昨年、早稲田の大逆転劇を生んだ山上りの5区。今年度、長距離ブロック長としてチームを牽引してきた三輪真之(人4)が「天下の険」攻略に挑む。他の駅伝に出場せず、この箱根の山に備えてきた三輪だったが、なかなかペースが上がらない。すると11.6kmで2位の山学大・高瀬に並ばれるも、直後に高瀬の突然の失速もあり、三輪はトップの座を死守し続ける。早稲田を始めとする上位陣が苦戦する中、今年の山の主役に躍り出たのは東洋大のスーパールーキー・柏原。柏原は9位で襷を受け取ると序盤からオーバーペース気味に突っ込み、一気に箱根の山を駆け上がる。鮮やかな「ごぼう抜き」を見せる柏原は、16.5km付近で2位山学大、19.2km過ぎには早稲田の三輪を捕えついにトップに立つ。するとここから、二人の熾烈なデッドヒートが繰り広げられる。一度は離された三輪だったが、20km過ぎの下りを利用し再び柏原に追いついてみせる。しかし、自力で勝る柏原に21km付近で振り切られると、結局区間記録を50秒近く縮める圧巻の走りで4分58秒差の大逆転劇を演じてみせた柏原がトップで芦ノ湖のゴールテープを切った。東洋大は初の往路優勝、早稲田は惜しくも22秒差の2位で往路を終えることとなった。

16年ぶりの総合優勝を目指して

 早稲田は惜しくも2年連続の往路優勝は逃したものの、トップ東洋大との差は僅か22秒であり、総合優勝に向け好位置につけたといえるだろう。往路重視のオーダーを組んだ東洋大や3位の日体大に対し、早稲田は復路にも昨年6区区間賞の加藤創大(スポ3)ら力のある選手が控えている。復路に有力選手を残す駒澤大も、トップとは8分近い差があり、優勝は絶望的な状況だ。復路では、いずれの区間でも選手一人一人が冷静なレース運びと堅実な走りが求められる。周囲の状況に関係なく確実に襷を繋ぎ、そして大手町にエンジのユニフォームが会心の笑顔と共に戻ってくることを期待したい。16年ぶりの栄光の瞬間は、確実に近づいている。

2009年第85回東京箱根間往復駅伝競走 往路個人記録

区間
氏名
学年
学部
出身
個人記録
区間順位
チーム順位

1区

1
教育
神奈川・多摩
1.04.48
1
1

2区

3
教育
秋田・秋田中央
1.09.36
7
6
3区
4
スポ科
兵庫・報徳学園
1.01.40
1
2
4区
1
スポ科
愛知・豊川工
55.04
1
1
5区
4
人科
石川・星稜
1.22.38
13
2
5.33.46
 
2

 

(TEXT=岡崎聡、PHOTO=田辺里奈)

 

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