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往路総評

  2年連続での総合準優勝に終わった2009年の箱根駅伝。2位という結果にも、早稲田の選手達の顔に喜びはなかった。「次こそは…。」箱根での総合優勝を目標に、尾崎貴宏(教4)主将のもと始動した新年度の早稲田は、突出したエースこそいないものの、実績ある4年生から成長著しい1年生まで、多くの選手の実力が拮抗する「総合力」の高いチームへと成長を遂げた。 そして、ついに迎えたリベンジの時・2010年1月2日午前8時。本命不在といわれる中、17年ぶりの頂点を目指す早稲田や大会連覇を目指す東洋大など、全20チームの想いがぶつかり合う勝負の2日間の幕開けを告げる号砲が、大手町に鳴り響いた。

流れを掴み切れなかった序盤(1区、2区)

 

2年連続で2区を走ったキャプテンの尾崎貴宏。
本来の走りができず区間12位に沈んだ。

 早稲田の1区は2年連続で矢澤曜(教2)。例年スローペースとなる1区だが、今年は序盤から1キロ3分を切るハイペースで展開。学連選抜の森本が積極的な走りで集団を引っ張ると、蒲田(15.3km)までに先頭集団は矢澤を含む7人に絞られる。その後レースが動いたのは、18km付近の六郷橋。ここを勝負所ととらえた明治大・北條がラストスパートをかけ、集団から一気に飛び出すと、勢いは最後まで衰えず、そのままトップで鶴見中継所に飛び込んだ。一方の矢澤は、北條の仕掛けに最初は鋭く反応したものの、次第に離され1位とは12秒差の2位でタスキリレー。2年連続での区間賞はならなかったが、1位と僅差でつなぎ、スターターとして最低限の仕事を果たした。

 昨年に続いて、エースが集う花の2区に挑んだのは、駅伝主将の尾崎貴宏(教4)。持ち前の安定感で上位をキープする走りが期待されたが、この日の尾崎は、7kmを過ぎた辺りからお腹を押さえる仕草をみせるなど、なかなかペースが上がらない。すると、中盤以降も一向に調子の上がらない尾崎に対し、他校のエース達が容赦なく牙を剥く。まず、権太坂の頂上(15.1km)で山梨学院大にかわされ2位の座を明け渡すと、その後も粘り切れず、結局戸塚中継所までに8位へと後退。トップの明大とは1分30秒差に広がり、尾崎にとっては悔しさの残る最後の箱根となってしまった。また、早稲田が順位を落とす傍らで、日本大のダニエルが11人抜きの快走で2位に浮上、注目のルーキー東海大・村澤が日本人トップの区間2位の走りでチームを14位から4位に押し上げる圧巻の箱根デビューを果たした。

期待のルーキーと2年目の秘密兵器(3区、4区)

 

有力選手が集う3区で好走を見せた平賀翔太。
1年生ながら走りの安定感はチーム屈指。

 当日のエントリー変更で3区に登場したのは、期待の1年生・平賀翔太(基理1)。その平賀は、コース序盤の下りを上手く利用して快調に飛ばすと、5km過ぎまでに東農大ら4位集団に追いついて見せる。後半に入っても順調に自分のペースを刻み、18km過ぎには前を行く日大をとらえ3位にまで浮上し4人抜きを達成。初の箱根路でも臆することなく、自分の力を存分に発揮した平賀の区間4位の好走で、早稲田は失いかけたレースの流れを引き戻し、4区へとタスキをつないだ。

 大会最短区間でスピードが問われる4区。トップの明大とは1分49秒差の3位でタスキを受け取った大串顕史(スポ2)は、大学初駅伝の緊張からか、走りと表情に若干の硬さが見えながらも、力強い足取りで足を進めていく。格上の相手ばかりの中、酒匂橋(15.5km)までに順位は6位に後退してしまうが、早大の秘密兵器と目される大串は懸命に食らいつき、何とか6位のまま踏みとどまり5区の八木勇樹(スポ2)にタスキを託した。

未完の大器・八木、本領発揮ならず(5区)

 

4区を走り、区間11位の大串顕史(スポ2)。
今回の経験を糧に今後のさらなる成長を期待したい。

 ここ数年、多くの逆転劇を生んでいる山上りの5区。早稲田の5区を任された八木は、自身の迷いを振り払うかのように、スタート直後から積極的に飛ばし、後方から追い上げてきた東洋大・柏原とともに5.6km付近までで4位に順位を上げる。しかし、7kmを過ぎ本格的な上りに突入すると、表情が曇り始め次第に失速。そして、初の山上りに苦戦する八木を尻目に、今年も箱根の山の主役となったのは柏原だった。1区からトップを守り続ける明大とは4分26秒差の7位でタスキを受けた柏原は、上りをものともせずグイグイ加速し、ごぼう抜きを見せると、大平台(9.5km)では2位の日体大、そして12.7km地点で明大をとらえてついにトップに躍り出る。13km弱で約4分30秒差を逆転する異次元の走りを見せた「新・山の神」は、その後は他の選手を全く寄せ付けず、一人旅に。自身が昨年打ち立てた区間記録を目指して一心不乱に駆け抜け、見事1時間7分8秒の区間新記録で芦ノ湖のゴールテープを切り、東洋大に2年連続の往路優勝をもたらした。また、早稲田の八木は、小湧園(14.2km)までで7位に順位を落とすと、後半も山独特の強い風と腹痛に悩まされ、納得のいく走りができないまま1位の東洋大とは6分5秒差でフィニッシュ。早稲田は7位で往路を終えた。

復路に向けて

 勝負所とされる区間で良い流れに乗り切れず、往路優勝を果たした東洋大とは6分5秒もの差がついてしまった早稲田。目標である総合優勝への道は極めて厳しいものとなってしまったが、7位の早稲田から2位の山梨学院大までの差は2分18秒と、上位は混戦模様を呈しつつある。今大会では往路重視のオーダーを組んでいるチームが多いため、復路に加藤創大(スポ4)ら実績のある選手が控える早稲田には、十分に上位進出の芽はありそうだ。復路では、シード権死守は絶対条件として、ブレーキのない「堅実なタスキリレー」で一つでも上の順位を目指し、そして笑顔とともに『エンジのW』が大手町に戻ってくることを期待したい。

2010年第86回東京箱根間往復駅伝競走 往路個人記録

区間
氏名
学年
学部
出身
個人記録
区間順位
チーム順位

1区

矢澤 曜
2
教育
神奈川・多摩
1.02.39
2
2

2区

尾ア貴宏
4
教育
秋田・秋田中央
1.10.13
12
8
3区
平賀翔太
1
基理工
長野・佐久長聖
1.03.27
4
3
4区
大串顕史
2
スポ科
茨城・水戸第一
58.13
11
6
5区
八木勇樹
2
スポ科
兵庫・西脇工
1.23.34
9
7
5.38.07
 
7

※当日のエントリー変更:3区 西城(スポ1)⇒平賀(基理1)
4区 前田(スポ1)⇒大串(スポ2)

 

(TEXT=岡崎聡、PHOTO=池田恩、酒井杏奈、鈴木雄介)

 

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