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[特別企画] 競走部 江里口匡史選手 ロングインタビュー〜To be continued〜 

江里口匡史選手特別インタビュー(第3回)

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2011年の世界陸上は、8/27〜9/4まで
韓国のテグで開催される。

――今年は世界陸上が開催される年ですが、2011年度シーズンの目標は?
 やっぱりタイムで言えば自己ベスト、10秒0台はまたチャンスがあれば出さなければいけないなと思いますし、それ以上に世界選手権の準決勝には行かなければダメかなと。やっぱり1回目は「出た」で終わってもまだしょうがないレベルだったのかなとも思えるんですけど、2回目、3回目となっていくと、同じことの繰り返しではやっぱりダメなので、やるからには結果も出していかなければいけないと思ってます。やはり準決勝以上に進んでいかなければ自分の中でも納得もいかないので、まずは準決勝以上の成績を出すこと、それ以前に海外の試合で実力を出し切ることも目標の一つなんですけど。それを出した結果として、個人としては準決勝以上が見えてくると思いますし、やはり国際試合で自分の納得のいく結果を出していきたいですね。国内で(記録を)出してもその次がまだあるんで、やっぱり今年は世界陸上だなと思います。

――今大会から、100mも4ラウンド制から3ラウンド制(予選、準決勝、決勝)になるようですね。
 そうなんですよね。なので、準決勝が今までは2組だったのが多分3組になるので、枠がちょっとは広がりはするんですけど、その分出場する選手も減らすっていうことで標準記録も上がりましたし、その標準を切らなければまず出場さえもできないんですけど、それでもやはり準決勝は自分の中で目標にしていきたいですね。準決勝くらいからしか世界のトップの選手達も力を出してこないので、予選くらいであたふたしていてもやっぱり悔しいですし。

――開催地の韓国・テグは、09年のテグ国際で一度行かれていますがその時の印象は?
 あの時はスーパー陸上が2日前にあって、スーパーで走って次の日に移動して更に次の日にもう試合だったので、結構バタバタしていたんですけど、まあでも競技場はサブトラックもすぐ近くにあって、競技場もすごく盛り上がりそうな感じでしたし、競技場に関しては一回行っているのでそんなに問題はないかなと。あとは、食事に関しても、アジアですし隣の国なのでそこまで気にはならないですね。やっぱりアジアでやるっていうのは結構有利だと思うので、結果を出すのであれば今年は狙い目じゃないかなと思いますね。
 それに、社会人1年目なので、この1年目をどう切り抜けるかで来年以降は全然違ってくると思いますし、やっぱりここで結果を出せれば2年目以降はもっと気持ちとしては楽に色々な事に取り組めると思うので頑張りたいと思います。

――さらに一年後の2012年にはロンドン五輪もありますが。
 もう1年半しかないので、この1年半で出場することだけを考えてもまた一昨年の世界陸上のように終わると思いますし、世界陸上に出ているからにはオリンピックも出るだけではなくて、どうやって戦うのかを考えてやっていかなければいけないと思ってます。その期間があと1年半しかないと考えると、ケガしてこの辺りでくすぶっていてもしょうがないなっていう気持にはなりますね。オリンピックに関して言えば、4継(4×100mリレー)は前回(北京五輪)メダルを取りましたけど、メンバーはまただいぶ変わってきていますから、日本短距離のプランにあるように、個人の走力を磨いた上でのリレーにしていきたいと思います。
 出るだけじゃ終われないっていうのは今からでも思っていますし、オリンピックは24歳の年なので、肉体的にも良いものが出来上がっているとすれば、いいものが見せられるんじゃないかなと。そういう意味では自分自身にいい期待を持って1年半後のために練習はできていますし、気持ちとして一つの区切りを置くならそこだと思っているので、今年はそのための世界陸上でもありますね。

――改めて、世界への想いを聞かせてください。
 やっぱり上には上がいるなっていうのは、やればやるほど嫌というほど分かりますし、正直、陸上の100mっていう距離で日本人が世界で1番を取るのは、まず不可能に近いことなんですけど、やっぱり自分はその100mに関してもちろん1番になりたいっていうのは間違いではないんですけど、自分がどこまでやれるのかっていうのを正直試したいなっていうか、自分自身どこまでいけるんだろうっていう期待はあるので、それがあるから自分より強い人達のいる「世界へ」って気持ちが向くのかなと思いますね。自分が一番で走っている時が良いタイムが出ることは多いんですけど、実際に自分より速い人達と走って、自分が本当にどれぐらいの能力を持っているのかっていう単純なところを見るためにも世界っていうのはいい力試しの舞台だと思いますし、その中で少しでも上に行けたらそれが一番いいので、やっぱり簡単に勝てないからこそやっていて面白いんじゃないかなと。勝てないと諦めるってこともあるとは思うんですけど、でも勝てないからこそどうにかしてっていうのが面白いところだと思うんですよね。自分で言うのもなんですけど、肉体的には確実に恵まれてはないので、それでも日本ではトップになることは出来ましたし、まだ次のステップに進めるなっていう実感はあるので、そういう意味で今のこの自分がどこまでいけるのかっていうのは自分自身が一番興味あるかなと思います。

――競技を続けていく上で最終的な目標は?
 やっぱり世界大会でメダルが欲しいですけど、現実的なのは4継だけかなと。個人で言えば、今はウサインボルト、アサファパウエル、タイソンゲイっていう、9秒7とかちょっと前の世界記録くらいでいつも走っているようなレベルの選手達がいるので(笑)。なので、100mでは『世界大会でのファイナリスト』、あとは『10秒を切る』っていうことはしたいなと。その走力を持っていけば、4継では前回の銅メダル以上のチャンスも確実にあると思います。北京では、日本が実際に世界でメダルを取りましたからね。だから不可能ではないと思ってます。現実的な目標ではあるので、リレーではメダルが欲しいですし、100mではまだ誰もやっていないことをやりたいと思うので、夢と言うか目標と言うか野望と言うか…(笑)、それが自分のやりたいことですね。

――最後に、ファンや応援して下さる方々にメッセージをお願いします。
 本当に大学で大きく成長出来たと思いますし、社会人になってからも理想は10年くらいは陸上をずっと続けたいなと思っています。なので、大学で応援してくれた人もそれより前からずっと応援してくれている人も、競技者としての僕ももちろんどんどん見て、時には厳しい目で見てもらってもいいですし、そしてそれとは別に、『人間としての江里口匡史』っていうもの見てくれれば嬉しいかなと思います。やっぱり競技者だけの視点だと面白くもないかなと思いますし、「普段はこんな人間で、競技の時はこんな結果を出しているんだ」っていう風に知ってもらえた方が面白いと思うんで、競技者の僕とそのままの僕をまた見てもらえながら、気長に応援してもらえたらいいかなと。僕も陸上が大好きなので、これからももっともっと突き詰めてやっていきたいと思います。


 大学4年間で大きく成長し、今や日本のトップスプリンターの座へと上りつめた江里口匡史選手。取材の最後に、「4年間を振り返って」というお題で一筆お願いしたところ、彼が記したのは“人と人のつながりに感謝”という言葉。彼の競技者として、また人間としての成長の裏側には、多くの人々との出会いやつながりがあったようです。
 早稲田で数多くの功績を残した江里口選手ですが、彼の競技生活においてこの4年間はまだまだ通過点。“To be continued” ― 彼の夢への挑戦はまだまだ続いていきます。 これからも、夢に向かって走り続ける江里口選手の姿を温かく見守り、応援していきましょう。

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(TEXT 、PHOTO=岡崎聡
 


 
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