2013年1月2、3日に行われる箱根駅伝の各校区間エントリーが12月29日に発表された。
スターターを務めるのは、三浦雅裕(スポ1)。大学駅伝経験はまだないが、西脇工業高出身の彼は都大路の出場経験を持っている。駅伝の戦い方は心得ているはずだろう。その三浦、箱根での希望区間は1区。理由は「先頭を走れば1番目立てるから」だ。1年生ながら物怖じしない姿勢が買われる結果となった。だが、今大会に関しては、前田悠貴(スポ4)など、現時点で補欠に回っている選手がこの区間の有力候補。もしくは過去2年連続で1区区間賞の大迫傑(スポ3)が今年も1区に回る可能性もある。ライバルとなるのは田口(東洋大)、油布(駒大)の2強や西池(法大)か。田口は全日本大学駅伝で1区区間賞、油布は1年次に箱根1区を経験済みだ。いずれにせよ、1区は駅伝の流れを作り出す重要な区間。先手必勝の積極果敢な走りで独走状態を築きたい。
花の2区には、3年連続で平賀翔太(基理4)を起用。この区間には、窪田(駒大)、設楽啓太(東洋大)、早川(東海大、学連選抜)といった各校のエースに加え、ベンジャミン(日大)やオムワンバ(山梨学院大)などの留学生組もエントリー。更には前回大会で圧倒的な強さを見せつけた出岐(青学大)も現時点では補欠だが、2区入りが有力視されており、熾烈な順位争いが起こりそうだ。対する平賀は経験値で勝っており、今回も盤石なレース運びを見せてくれるだろう。不安要素は無い。だが平賀はこれまでの箱根で区間賞未取得。それだけエース区間で勝負してきた証拠だ。しかし今度が泣いても笑っても最後の箱根。強豪ひしめく区間での出走だが、平賀ならば区間賞も狙えるはずである。4年生の意地を見せて次へ襷を繋ぎたい。
2区と並ぶ重要区間の3区には、神内隆年(スポ4)がスタンバイ。故障の多かった神内だが、この1年間は両インカレで入賞を果たすなど、最終学年の意地を見せ続けてきた。だがこの区間には大迫などの起用が濃厚か。前回のように、エースの多い2区が混戦となれば、勝負になるのは3区。首位で来た場合、2位以下の場合、いずれにしても流れを変える役割がこの区間では求められる。注意したいのは、久保田(青学大)。出雲駅伝で勝利を呼び込んだ勢いのある1年生だ。ここで一回、他校の勢いを抑え込む走りを早稲田には期待する。
全区間中最短の4区を走るのは、佐々木寛文駅伝主将(スポ4)。「佐々木持前のスピードを生かせる区間配置を」(渡辺監督)と、区間配置の適性が光る。この1年、佐々木は駅伝主将として言葉ではなく背中で引っ張ってきた。主力ながら1・2年次には箱根に出走できなかった無念さもある。だからこそ最後の箱根ではその強さを周囲に再確認させたい。4区で首位を確実なものにさせることができれば、往路優勝の可能性がぐっと近づくだろう。
5区・山上りには山本修平(スポ2)が2年連続のエントリー。前回大会は初箱根ながら1時間19分台の記録で区間3位。今大会には17分台で走りたいと意気込む彼に、区間賞の期待が集まる。区間賞を巡りライバルとなるのは大江(明大)か。前回大会で2区を務めた村山(駒大)や、日体大駅伝主将の服部もこの区間にエントリーされており、面白い存在となりそうだ。ただ山本が17分台で走り切れば、区間賞はまず間違いないだろう。準エースとしての呼び名も高いが、それをプレッシャーと捉えず、安定した力を出せていることが今季の山本の成長点。過去4年間、山の神・柏原(東洋大、現富士通)が切ってきた芦ノ湖のゴールテープを今度こそ奪還し、5年ぶりの往路優勝を掴みたい。
柏原が抜け、初めて迎える箱根。往路優勝に向けては混戦が予想される。往路に絶対の自信を持つ早稲田にとって、往路優勝なくして総合優勝を成し遂げることは困難だ。4区までの平地区間で確実に主導権を握り、5区で一気に他校を突き放したい。
翌日3日、復路のトップバッター6区には西城裕尭(スポ4)が登場。山下りの練習を継続し、初出場となった前回大会では区間15位とほろ苦いデビューに終わった西城。2度目の今回は、前回大会の経験を基に挽回を図りたい。この区間は序盤に上り坂、その後は急な下り坂が待ち構えるタフなコースである。前回大会で西城自身が課題として挙げた上りから下りへの切り替えが上手くできれば、賞賛は十分にあるだろう。早大と競り合いが予想されるのは、市川(東洋大)。また、前回大会で西城が交わされた廣瀬(明大)、そして現時点ではリザーブの千葉(駒大)なども当日のメンバー変更でこの区間に入ってくることが予想される。駒澤・東洋の2強はいずれも経験豊富な4年生。同学年である以上、西城も負けていられない。ガッツある走りで幸先良いスタートを切りたいところだ。
箱根の山を攻略し終え、平地の仕切り直しとなる7区には、志方文典(スポ3)が登場する。高低差が少ない代わりに気温差が激しいのがこの区間の特徴。仮に往路で差がほとんど無かった場合は、復路区間、その中でも7区がキーとなりそうだ。例年、優勝校の7区の選手は区間賞もしくは区間2位、最低でも区間4位以内に入っている。復路特有の堅実な走りとともに、積極的な攻めの姿勢も求められるだろう。「スタートラインに立つことが最低目標」と語る志方。絶好調ではないことが伺える。だが、志方はここで足踏みしているような選手ではないはずだ。スタートラインに立つことはもちろん、区間上位の走りを見せて箱根を復活レースとしてほしい。
続く8区には、柳利幸(教1)がエントリー。陸上競技経験は2年弱と浅いがゆえに、「期待値が高い」と渡辺監督に言わしめる存在だ。周囲からは1人で走れるタイプではなく、集団区間が適任、と思われているが、柳自身は「1人で自分のペースで走った方が走りやすい」と考えている。復路区間はそのほとんどが1人旅になりがちだ。自身の力を周囲に証明するにはもってこいの区間だと言えるだろう。まずは堅実に区間上位の走りで襷を繋ぎ、翌日の1月4日(=柳が陸上を初めてちょうど2年目となる)を笑顔で迎えたいところだ。
復路のエース区間9区は田中鴻佑(法3)が務める。大学駅伝初出場ながら、責任ある9区を任されることとなったが、田中は今、部内で最も勢いのある選手の一人。好調な選手として、また上級生として、自身の役目を務め上げてくれるだろう。9区は上位校の順位変動も多く、ここでの結果が最終順位に繋がることも稀ではない。上野(駒大)など安定感のある選手に加え、他大学でも現時点では補欠の主力選手がこの区間にエントリーしてくることが予想される。ライバルに屈することなく、優勝を決定づける走りを田中には期待したい。
今大会のトリを務めるのは、田口大貴(スポ2)。「ゴールテープを切ってみたい」という自身の念願が叶う形となった。これまでの大学駅伝経験は今年度の出雲のみと少ないが、上り調子の田口にとって経験の少なさは積み上げてきた練習でカバーできるはず。前回大会、早稲田はこの区間で明大の大エース・鎧坂(現旭化成)に牙を剥かれ4位に後退している。迎える今回の10区、現時点では他校でもエース級選手の登録は見当たらないが、注意したいのはアンカー経験の豊富な後藤田(駒大)。また、箱根出場経験はないものの、今シーズン秋以降に調子を上げてきている冨岡(東洋大)にも気を付けたい。
現時点で早稲田はエース大迫、主力前田、そして市川宗一朗(スポ4)を、東洋大は設楽悠太と服部を、駒大は攪上、久我、千葉の4年生を、そして青学大はエース出岐と大谷をリザーブに回しているなど、各校の腹の探り合いは当日まで続きそうだ。
しかし選手たちにとって最大のライバルは自分自身。自分たちの走りに集中するだけだ。「先頭を走らせたら必ずみんな3割増しで走る」(渡辺監督)と言う通り、各々が120%の力を出した時、早稲田の優勝が見えてくる。
前回大会ではまさかの4位。屈辱を味わった。だからこそ、もう失うものは何もない。佐々木駅伝主将を中心に4年生全員で作り上げたチームが今、雪辱を誓う。
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