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06/08〜10 [競走部]第96回日本陸上競技選手権大会

ディーンが優勝!夢舞台、オリンピックへ挑む



 

 「目標を掲げずに、いけるところまでいきたい」
国内の舞台を制し、ロンドン五輪への切符を掴み取ってもなお、ディーン元気(スポ3)は変わっていなかった。

 大会2日目やり投決勝。
日本選手権12連覇中の村上幸史(スズキ浜松AC)とディーンの頂上決戦に会場中が注目。白熱の戦いの幕開けだ。

 1投目は互いに牽制し合うかのような控えめの投擲だったが、2投目・3投目で村上が昨年自身で打ち立てた大会記録を相次いで更新する82m93、83m95の大投擲を披露。ディーンに追い打ちをかけた。


 
 

窮地に立たされたディーンの4投目。湧き立つ観衆に向け、「静かに」と唇に指を当てる。そして静寂の中、空を切った低めの一投は距離を伸ばし続け、80mを大幅に超えるラインへ。表示された記録は「84m03」―。
村上を超えた瞬間だ。ディーンは満面の笑みを見せながら、ユニフォームの「W」を指差しガッツポーズを決める。会場のボルテージは最高潮へと達した。

 村上は4、5投目をファールで迎え、6投目を残すのみとなった。しかしその最終投擲も赤旗が上がる。

ディーンの日本選手権初優勝、そして五輪代表が決まった。
村上の結果を確認するや否や、ディーンはぴょんぴょんと跳ね上がり、村上と笑顔で互いの健闘を称えあう。愛嬌たっぷりの20歳に誰もが心からの祝福を送った。

 多くの人はディーンを「新鋭」と表現する。
しかし彼がここまで到達することはある意味必然だったのではないだろうか。


 

 世界陸上を目指していた昨年度からディーンはどの試合でも常にこう言ってきた。
「明確な目標はない。行けるところまで行きたい」
そしてこうも言った。
「まだまだいける」と。

 84m以上の大投擲を達成した今もまだまだ通過点のひとつに過ぎない。
ひょっとすると、いつか日本記録(87m60)を更新してもそこはディーンにとっての終着点ではないのかもしれない。

 1年前の春、彼は最終的な目標像をこう語っていた。
「日本だけでわーっと有名な選手になるんじゃなくて、世界でも陸上している人なら知っている、ってレベルになりたいなっていう望みはあります。まぁまだまだ夢ですけど」

 今のディーンの立ち位置は彼自身の言葉を借りればまさに「日本で有名な選手」。それでは満足しない。あくまでも「世界で存在を知ってもらうこと」、これが本当のゴールだ。

 初出場となる五輪の開催地、イギリスは奇しくも父の母国。「家族や応援してくれている人にとっての喜びや励みになればいいな」と1年前に夢見ていた舞台が現実となったいま、ディーンにとって真の意味での世界への挑戦がここからはじまる。

【男子やり投決勝結果】
ディーン元気
1投目71m91、2投目81m62、3投目79m39、4投目84m03、5投目74m00、6投目F

関連URL
早稲田大学競走部公式サイト

(TEXT=矢野真由実、PHOTO=鈴木崇広)
 


 
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