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箱根駅伝まで1週間と迫り、いよいよ戦いの火蓋が切られる頃となりました。今回は、以前にもご好評頂いた、主務・副務対談の模様をお送りします!  競走部の縁の下の力持ち、山下尋矢主務(スポ4)と江口卓弥副務(スポ3)のお二人に、マネージャー業のイロハからチームについて、また箱根駅伝の見所を存分に教えて頂きました。まさに名選手を生む裏に名マネージャーあり。お二人の息の合った深イイ対談を是非ご覧ください!  






 
山下尋矢主務プロフィール
  スポーツ科学部4年
  浜松西高校・静岡県出身
 


――まず、お二人の陸上競技との出会いは
山下尋矢(以下山下):小中はサッカーをやっていました。中学校一年生の頃からで色んな部活から寄せ集めでチーム組んで駅伝大会に出てて、昔はもうちょっと体が細かったから(笑)、逆にサッカーじゃなくて陸上の方が上目指せるのかなと思って、高校上がるときから陸上に転向しました。
江口卓弥(以下江口):僕も山下さんと同じで小中サッカー部でした。僕は全日本大学駅伝の1区のラスト1キロの所に実家があって、それで小学生ぐらいの頃から毎年前を走っている選手を見ていたのが最初かなと思います。学校もあまり大きなところじゃなかったので、サッカー部に所属しながら、陸上のシーズンの時にその都度寄せ集めで駅伝とか陸上のトラックレースとかに出場していました。僕ももっと軽かったんですけど(笑)、中学の時相撲部とかもやってて、本当に寄せ集めでやってる学校で、色んなスポーツに触れさせて頂いたのがすごい良かったのかなと思います。

――選手の方もサッカー経験者が多いですか
山下:サッカー、野球は多いかな。
江口:柳さんとかも高校の途中までサッカーでしたね。

――そこから早大競走部を目指した理由は
山下:僕は中学校の時までは存在は知ってたけど、箱根駅伝とかしっかり見たことは無かったし、陸上競技にあんまり興味なかったんです。けど、高2かな、自分が陸上始めてちょっとしてから、(早稲田が)駅伝やインカレで勝ったというのを知って、そこのインパクトがかなり強くて。勉強の方は頭いい学校というのは分かっていたんで、早稲田に来てる学生は結構進学校で文武両道を掲げている学校が多いと思うんだけど、うちもそうだったので。やっぱり文武両道ってなると早稲田かなと思って、それで競走部を意識しました。
江口:僕も何か特別なものがあったわけではないんですけど、お母さんが割と先のことまでしっかり考えてくれる人で、陸上だけで大学に行くんだったら早稲田か明治しかだめだよと言われてて。そこから大学選びというか、小学校の頃からだったんですけど、その中でなんとなく早稲田大学を選んだかなという…大学に対するファンというイメージです。僕の場合臙脂色が好きだったというのと、そういう漠然としたイメージの中からその早稲田大学を見たときに、箱根とか見てても、渡辺康幸前監督とかすごい人がいて、そういうのに憧れたのが最初かなと思います。

――お母様は早稲田と明治のファンでいらっしゃったのですか
江口:それもあると思うんですけど、陸上だけの人生にしてほしくなかったんだと思います。

――選手時代の目標や夢はありましたか
山下:それはありますね(笑)。やっぱり早稲田の競走部って二つのタイプがあって、早稲田来たからには日本のトップとか世界を目指すっていう選手もいれば、大学4年間で競技辞めるのをある程度最初から決めてて学生のインカレだったり駅伝に全力注ぐ選手もいる。もちろん自分はそんな世界目指すとかっていうレベルの選手ではなかったんで、インカレとか駅伝とかで臙脂のWを着て結果を残したいというのは目標でした。
江口: 僕はもちろん箱根駅伝とかに憧れて入ってきてはいるんですけど、関カレとかのトラックレースに出たいなというのはあって。結局それは叶わなかったんですけど、ロードレースよりもトラックレースに出たいなというのが強かったですね。あとは、僕は一浪しているので、同じ高校の一個下の佐藤淳(スポ3)が今同じ学年でいるんですけど、そいつには負けたくないなというのは正直あったんですけど、まあそれをスルッと抜かれて(笑)。結局僕もその後上手くいかず、それだから仲が悪いとかは全然ないんですけど、応援しているんですけど、少なからず目標とはしていたかなと思います。




 
江口卓弥副務プロフィール
  スポーツ科学部3年
  明和高校・愛知県出身
 

――マネージャー転向の経緯とは
山下:早大競走部の風習で、2年生に上がる時に、将来4年になった時に主務を務める人を1人ミーティングで決めて出すっていうのがあって、2年の7月ぐらいに決まりました。最初はやっぱりやりたくなかったんですけど、周りの同期だったり先輩と話すと、僕が最終的にやろうと思った理由が二つあって。一つは、高校の時までは水をあげたりだとか選手のお世話係がマネージャーだと思ってた部分があったけど、自分が一年生の時に主務をやっていた卯木さんがすごいチームの中で影響力持っている方で、主将以上にチームを引っ張って行く姿が印象的で憧れたっていうのがあります。あと周りの同期が結構怪我したりして、自分より走れなかった人がいたんですけど、でも彼らがすごい真剣に向き合ってなんとか競技やりたいっていう気持ちはすごい一緒にいて伝わってきたんで、彼らのためなら裏方にまわってもいいかなって思ってマネージャーになろうと思いました。
江口:僕の場合は、早い段階で結構故障とかも多くて、マネージャーにならないかって監督とかからも言われてたんですけど、僕の中でマネージャーになる一番のきっかけだったのは、高校までと大学に入ってからとのマネージャーに対する立場の差がすごい大きいかなと思います。渡辺康幸前監督とか相楽さんもそうなんですけど、こうなってほしいとかこういう考え方を持ってほしいと言ってくるのは、もちろん竹澤健介(住友電工)さんとか大迫傑(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)さんとかの選手の名前も出てくるんですけど、人間的にどうなれっていう時に出てくるのが、卯木研也(2012年度主務)さんだったりとか福島翔太(2010.2011年度主務)さんだったりとか、主務の方なんですよね。だから今まで持っていたマネージャー像とは違うものを持っていたのが、すごいかっこいいなと思ったのが決め手だったんだなと思います。

――高校までのマネージャーに対するイメージとは
山下:いわゆる漫画とかである、女の子が男の子に水あげたりタオル渡したり洗濯物干したりというのは、世間一般が持っているイメージだと思うんだけど…(笑)。
江口:周りの友達とかでマネージャーやってる子とかは、山下さんが言ったようなイメージのままやってるんですけど、ここの人達は違うんですよ。早稲田の競走部だけかは分からないですけど。高校まではいてくれてありがとうぐらいでしたね。

――選手への未練などはありますか
山下江口あるよね(笑)。
江口: なければやってられないんじゃないかな。やらされている訳ではないんですけど、自分が未練を持ちながらやるからこそ、自分が立ち止まった時にこれをやらなきゃ意味ないなと思えるんだと思います。糧となってるみたいなかっこいいことは言えないですけど…。
山下: いや(糧と)なってるよ。

――早大競走部マネージャーの仕事とは
山下:よく聞かれるんだけど、色々ありすぎてこれだ!っていうのもないし、これが一番大事だっていうのもないし、やっぱどれもやんなきゃいけないし…(笑)。
江口:先を見るっていうのは大事かなって思います。
山下:それは大事だね。
江口:先を見て、選手でも支えてくれる人達が失敗しないように、上手くいくように見ていけるのが主務であり副務であり、僕たちがやることなんじゃないかなというのは思います。もちろんそんな漠然としたことだけじゃなくて、タイム計測だったりとか試合のエントリーとかお金の計算とか細かいこともあるんですけど。
山下:おおざっぱに言ったら、監督とかより先に頭回して体動かしてっていうのはあるよね。たまにマネージャーの後輩に言うんだけど、選手はもちろん他大学の選手と戦う意識は持ってて、マネージャーは支えるっていう立場だと思うけど、戦う集団にいる一人としては何かと戦う意識を持ってほしいというのは思ってて。監督とかコーチとか選手とかより気付きの速さでは負けたくないなと思ってて、先に仕事見つけたりっていうのはマネージャーの仕事だと思います。
江口:どれだけ円滑に人との間に入って、色んな方向に歯がある歯車になって、色んな人の意志と意志が交錯しないようにして上手く回してあげることと、伝えるべきこととそうでないことを選んでいくことが理想なんじゃないかなと思います。

――マネージャーの仕事は先輩から教わるのですか
山下:細かく教えてもらうこともあれば、ある程度先輩方の姿を見ながら自分達でちゃんと吸収してっていう、どっちもあります。けどマネージャーに求めてくる人達が多いから、自分達で動いてきたし、後輩達も動いてくれてるのかなと思います。
江口:どっちかっていうと見て学ぶ方が多いと思います。仕事関係あんまり喋らないですね。
山下:みんな頭いいからね(笑)。気付くしね。
江口:(マネージャーに)何か渡す時とかって、去年のデータと一緒に渡すんですよ。色々説明しなくても、今までそうしてきたからそれが普通みたいで…。

――言葉をあまり使わないでも気持ちが通じ合うのは、長年連れ添ってきてる夫婦みたいですね(笑)。
山下:でもそれ分かる(笑)。実際そういうのはあるよね。言ってること分かるよね。
江口: 僕と山下さんは同じ部屋に住んでて、本当に小さいことですけど、部活の時間に僕たちは仕事で車で出かけることあるんですけど、二人で同じ時間に出発するじゃないですか。でも明日は何時に出発するとかっていうのを決めたことは一回もないんですよ。
山下:確かに。
江口: なんとなくの雰囲気で、そろそろだなっていう感じでお互い揃って出て来るみたいなのはありますね。

――マネージャーの仕事は忙しそうなイメージがあるのですが
山下:忙しくないって言ったら嘘になるけど、もっと効率よく上手くやったら自分の時間が増えるよなっていうのはあります。でも忙しくて嫌になることはたまにあるけど、そんなには思わないかな。
江口:適度に忙しさに追われてる方が自分の生活が締まるじゃないですか。自分がただ早稲田大学スポーツ科学部にいたら何やってたのかなって思います。割と路頭に迷ってるんじゃないかなと思うんですよ。何となく授業受けて家帰って寝てバイトしてっていう、それを想像した時にすごい怖いんですよね。本当に僕たちはここにいてよかったし、忙しいって思われてるのかもしれないですけど、日曜とか月曜とか遊びほうけてるって言ったらなんか変なんですけど、飲みに行って遅くに帰ったりっていう時間はありますし。
山下:僕とかあと二週間で引退するけど、逆に仕事なくなったらそっから先はもう相当心配、目標失ってるかも(笑)。ちょうどいいよ、今ぐらいが。
江口:僕たちは選手と同じように目標があって、それ(目標)を次のステップで見つけられるか分からない…。
山下:そうそうそれ!(笑)

――スポーツ科学部の授業がマネージャー業に活かされていることはありますか
江口:マネージャーになってからエクセルとかやることがあったんですけど、情報処理みたいな授業を受講しても、自分で独学したものを超えてこないんですよね。だから活かされていることはあまりないかな。
山下:選手にアドバイスしたりするのは、客観性持って、授業で学んだこと踏まえて活かすっていうのはたまにあるかなと思います。
江口: 選手は自分の体を外からでは見れないので、そこに活かしてあげることは出来るのかなと思います。あとは、的外れなことを言ってる子に対して教えてあげたりはしますね。



――マネージャーをしていて良かったことは
山下:たくさんあるけど、視点を変えて何か物事を見ることの大切さはすごい感じます。選手だったけど辞めて周りの人の競技見て、もっと自分が選手だった時にこうしておけば良かったってこともあるし。マネージャーだったから色んな人とつながって、その人たちの話しとかを聞くだけでも違う視点を持ってたりして、自分にはない考え持ってるんだなとか、世界が広がるし。もちろん一つのこと執着してやり続けることも必要だし、その一方で客観的な視点を持つことは今後大事になってくるのかなと思います。
江口: 人と人とのつながりが見えるというか、インカレ前の段階からちょっとチームがガタガタで、苦しい場面があったんですよ。今年の四年生が下の学年に対してどうしていこうかというので、ちょっと崩れかけていた時があって、そこを中心の位置から見れたのはすごい大きいのかなと思ってます。外からは、結果がダメじゃんとか言えるけど、四年生の悩みとか苦しんでることとかを近くで見れたし、例えば田中言(スポ4)さんが山下さんの部屋に来てお酒飲んでるとか、高田康暉(スポ4)さんが来て、山下さんに普通に私生活のこと話してるとか(笑)、そういうことよくあるんですけど、そういうのが耳に入ってきた時に、この人はこういうこと思ってるんだなとか、色んな人の色んな面が見れるところが一番大きいとこですね。

――反対に大変だったことは
山下:求められることとして、「お前らが感じたことを伝えてくれ」っていうのは選手から言われてて、それが厳しいことの方が多くて、そういう時にやっぱり伝えていいのか不安というか自信のなさが、大変というか悩ましい気持ちはありましたね。
江口:(伝えることを)選ぶのに、自信と、自分達がこうしなきゃならない意図が必要で。僕たちは監督とかコーチとかとの関わりも深くて、駒野亮太(長距離コーチ)さんからは、(僕たちは)「マネージャーじゃなくて学生コーチの立場もあるんだぞ」というのを前々から言われていて、選手の走りにも口出さなきゃいけないし、私生活にも口出さなきゃいけないし、でもどこまで言っていいのかっていうのがあって、そこは特に難しいですね。コーチの方も社会人で仕事を持ってて、自分の空いた時間に来てくださっているので、他の大学と違ってずっといることが出来る訳ではないので、そのための補助をしなきゃいけない、してほしいのが僕たちの役目だと思うんですけど、そこが一番大変ですかね。  
山下:難しいよね…答えが無いからね。仕事はね、何やれば正解かが分かってるから、労力だけ使えばいいんですけど。

――他大学のマネージャーの方との交流はありますか
山下:僕らの代は結構マネージャー間仲が良くて、色々飲み行ったり、引退したら一緒に駅伝出ようとか言ってるんですけど(笑)、いろんなやつがいて面白いですね。
江口:僕たちはタイムリーな話しで、12月の頭くらいに関東のマネージャーさん達が集まって、飲み会みたいなのをしました。すごいなと思ったのが、お互いに行ってる競技会とかが一緒なんで、なんとなく顔見たりとかはしてて、仲良くなるのは早いですね。
山下:共通の話題があるからね。
江口:そうですね。強い選手の話しとか聞けて結構面白いですね。裏の話とかも聞けて(笑)。

 

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(TEXT=川口恵、PHOTO=松嶌萌)

 

 


 
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