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  今回は敵として。〜西陵商の2人〜
   TEXT=山田浩平



高校2年の冬休みも開ける頃だったか、第76回全国高校ラグビー選手権決勝の試合は僕にとって一生忘れる事の出来ない試合だ。

その日、たまたまテレビをつけるとラグビーの試合をやっていた。対戦カードは西陵商×啓光学園。地元愛知県代表の西陵商が出ているということもあり西陵商を応援してはいたが、次第に緊張感の途切れない両校の闘いに魅入ってしまった。前半は8-9の西陵商リードで終えたが、後半もお互い譲り合わない試合が続いた。

後半25分に啓光学園がPGを決め25-19と突き離した。このまま試合は終わると思われた。啓光学園リードのまま時計は後半30分を回りロスタイムに入る。もういつノーサイドの笛が吹かれてもおかしくない状況だ。1トライ1ゴールで西陵商は逆転できるものの、啓光学園のディフェンスも堅く、容易にトライを許さない。「ピッ」と主審の笛が鳴る。「ノーサイドか?」と誰もが思ったに違いない。しかし、まだノーサイドではなかった。次のプレーが本当にラストプレーだろう。西陵フィフティーンはこれを最後の攻撃とすべく、楕円球をサイドに展開した。

「トライ」。
啓光学園が最後に見せたディフェンスの一瞬のスキを西陵商は見逃さなかった。西陵商の執念が実り25-24と1点差に迫る。しかし、これでまだ逆転ではない。最後のキックが決まれば西陵商の優勝、外れれば啓光学園の優勝である。キッカー後藤のプレッシャーはどんなだったろうか。決められない距離ではなかった。しかし、優勝というプレッシャーが正確性を蝕んでいたに違いないのだ。そして、蹴った。会場の、テレビの前の観客は誰もが息を殺してその軌道を見守った。ボールはポールに当たって中に吸い込まれた。25-26。得点の笛とノーサイドの笛が直後に吹かれ、西陵商の全国初優勝が決まった。ドラマのような感動的な試合だった。

…そして、この西陵商のメンバーが2人、早明戦に出場する。早稲田のWTB横井寛之と明治のSH後藤和彦である。横井は途中出場、後藤はスタメン出場が濃厚だ。お互いライバル校に入って己を成長させてきた2人。早明戦の試合予想はほぼ互角。高校3年で、全国優勝を共に味わった2人。大学最後の大一番、早明戦は敵として対決する。勝者は1人。果たしてどちらに軍配が上がるのか。この2人の対決も絶対に見逃せない。


 

TEXT=やまだこうへい
法学部2年。早稲田リンクスマイルストーン編集会所属。現在は早稲田リンクスで、学内イベ ント情報・大学最新情報・受験情報の3コンテンツの更新を主に担当。将来の夢は弁護士で、今年の秋から司法試験予備校にも通っている。



















 
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