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「なんでそんなに速いのさ」。(前編)

文=白井邦博


「あいつら、電車よりも速いのか!」

待ちに待った箱根駅伝。willwinでは昨年の箱根駅伝も特集を組んで情報をお伝えしたが、僕は一昨年12月に肺気胸で倒れたため、その取材に同行出来なかったのである(順大の岩水と一緒)。今年は現地取材班として、大手町から箱根まで、選手と一緒に走るぞ!でも電車は使うね、という気持ちで1月2日を迎えた。

7時前、大手町のスタート地点に到着。1時間前だと言うのにもうかなりの人が沿道に立っており、いきなり取材班3人は圧倒される。それでも何とか最前列に陣取れる場所を見つけ、スタンバイ。8時のスタートまではラジオを聞きながら情報確認。さらに携帯のメールでテレビ観戦班と打ち合わせ。


8時にスタート。15人のランナーが一斉に飛び出す。「なかお〜!」と叫んだ時にはもう、交差点を曲がってその姿は見えなくなっていた。なんて速さだ!沿道で応援って言っても3秒くらいじゃん!ビックリしながらも次の応援ポイントである横浜へ向かうため、JR東京駅の東海道線ホームまで走る。取材班、自分達も走って、駅伝選手の体力とスピードを実感!

8時13分、東海道線に乗って品川へ。品川からは京浜急行で横浜へ向かうので、ここで乗り換え。ところが改札を出て切符を買っていると、目の前の道路が大声援で包まれた。と、次の瞬間、15人の弾丸がまた3秒で通り過ぎた。アイツら電車よりも速いのか!


9時前に横浜に到着。さすが華の2区、既に駅周辺の道路は人で埋まっている。選手の到着まで余裕があったので、駅から歩くこと20分、ようやく人の切れ目を発見しそこでスタンバイ。

選手通過10分前、ここで何と、法政・徳本にリタイア発生。自分は先にラジオで聞いていたので知っていたが、広報車が選手よりも先に「法政、リタイヤです」と叫びながらやってくると、沿道からは「え〜っ」というざわめきが。法政の幟を持って応援していたオジサンの背中にドラマを感じた。




戸塚中継所前5キロ、原田を追いかけるタクシーから。見えた!  Photo=EISUKE SUZUKI


「わ、早稲田を追いかけてください!」

9時25分、目の前を選手が通過。声を嗄らして必死に応援するが、集団で競り合いながら走っていたので、聞えたかどうかも疑わしい。「ま、仕方無いさ」と思いながら横浜駅まで引き返していると、ラジオから「早稲田先頭!」の声。何ぃ!取材班は色めき立ち、これは何としてももう1回原田を応援しなくてはとの結論に達し、横浜駅前でタクシーをゲット。「わ、早稲田を追いかけて下さい!!」意味不明の行き先。


9時40分、取材班の必死さが伝わったのか、タクシーの運ちゃんは「よっしゃ!」との声を発すとアクセル全開、あわや暴走運転というべきスピードで車を飛ばす。桜木町から有料道路に乗り、120キロで飛ばし(内緒)、着いた所は何と2車線のうち1車線を選手が走る戸塚の5キロ前!隣を選手が走ってる!「俺も長いことタクシーやって初めてだよ!」タクシーの運ちゃんも一緒に大興奮。そしてさらに車を飛ばすと、前には臙脂にWの文字が!「原田〜!頑張れぇぇぇ!!」まるで中継車から応援するコーチの如く、原田を真横から応援する取材班。後でこの馬鹿丸出しの状況がテレビに映っていたと知り、愕然としたのは秘密。


10時、戸塚中継所に到着。タクシーの運ちゃんにはお礼に1000円を進呈。到着5分前とあって、さすがに人垣が幾重にも出来ており、選手を確認することは出来なかったが、それでも雰囲気で誰が来たかは分かる。観客から巻き起こる早稲田コールの中、取材班も「森村ぁ〜!」と絶叫したのでした。でも戸塚中継所、最寄の戸塚駅まで随分と遠い。さて、ここからどうしようか・・・。(後編へ続く)

TEXT=白井邦博
(しらい・くにひろ)

教育学部社会科地理歴史専修4年、愛知県立岡崎高校卒。1979年11月4日生まれの22歳。178センチ56キロ。ラグビー大学選手権の2回戦に出場していた山田君と同じ高校です。

本文でも書きましたが、昨年の箱根駅伝は自宅での観戦でした。肺気胸で病院に入院して、退院した直後だったからです。いわゆる自然気胸は突発的に起こるもので防ぎようがなく、順天堂大学・岩水君の無念さが痛いほど分かります。社会人でもその走りを止めず、箱根の悔しさを晴らす快走を見せてくれることを、心から願っています。

 

 
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