6月22日、国立競技場にて第58回早慶サッカー定期戦が行われた。ア式蹴球部は、関東リーグ終盤戦を連勝で折り返し、勢いにのったかに思われたが、総理大臣杯予選初戦で、神奈川大にまさかの敗戦(0-1)。
今季3冠を掲げていただけに、ショックは相当なものだったに違いない。その悪い流れを断ち切るためにも、この試合は是非とも結果を残したいところである。小雨がぱらつく悪天候に、試合前は観客数が心配されたが、実に9,400名を超える観衆がスタジアムにつめかけた。試合前には、両校傘下のサッカースクールに所属する子供達の花束贈呈が行われ、会場は和やかなムードに見舞われたが、試合は両チームの意地がぶつかりあう激しいものとなった。
早稲田のシステムは4-2-2-2。「中盤でタメをつくりたかった」(大榎監督)と、塗師(スポ3)、松本征(教育3)がボランチを形成する珍しい布陣をとった。通常より前の位置に入った鈴木(スポ4)には、U-22代表戦で決めたようなミドルシュートが期待された。一方、今季の慶應は、近年で最も戦力が充実し、今期は2部で首位を走り(11節現在)、自信を深めている。その兆候はこの試合にも現れ、守備的に臨む例年とは異なり、3トップと攻撃的な布陣で臨んできた。そして序盤から、縦へ直線的な攻撃を仕掛けていく。早稲田はその圧力にラインを下げざるを得ず、中盤の空いたスペースから決定機を創られる。まずは12分、14番三輪(2年)のミドルシュートがゴールを襲うも、伊藤(スポ3)が濡れたピッチ状況にも慌てず、冷静にセーブする。さらに20分、ゴール左25m付近でボールを受けた大河が、躊躇なくシュート。弧を描いたボールは、枠を捉えたかに思われたが僅かに枠を外れ、早稲田はピンチを逃れた。一方、早稲田は、渡邉(スポ3)、山本(スポ4)の両FWがタイトなマークに合い、攻撃の起点を創れない。それでも、兵藤(スポ4)が激しく動き回って自らボールを集めると、早稲田もチャンスを迎えるようになる。35分、塗師、兵藤と繋ぎ鈴木がシュートを狙うも枠を外れる。42分には兵藤の突破から左サイドで得たスローインを、松本がグラウンダーのクロス。鈴木が飛び込むも、ゴールを捉えられない。そして、前半終了。「慶應優勢」という印象を残しハーフタイムを迎えることとなった。守備的な2人をボランチに配置したためか、ボール奪取後の展開が見られず連動性に欠け、前線の選手が闇雲に突破を仕掛ける単調な攻撃が目立った。しかし終了間際、疲れの出た慶應に対し、好機を迎え始めた。後半の巻き返しに期待がかかる。
後半、早稲田は選手交代と慶應の運動量低下により本来のパスサッカーを展開し始める。8分に山本に代え中島(社学4)を、24分には松本怜(スポ2)を投入する。左では、本来のボランチへ戻った鈴木、中島、兵藤のパス交換。そして右では松本のドリブル突破と、早稲田は両サイドから攻撃を仕掛けていく。25分、横山(スポ4)がCKからシュートを放つも、惜しくも外れる。32分には幸田(スポ1)のクロスに渡邉が頭から飛び込むがミートできず。
35分には鈴木がフリーキックを狙うも、キーパーの正面をつく。慶應は、終盤足のつる選手が続出し、得点が生まれるのは時間の問題かに思われたが、この日の早稲田は精度を欠き、枠内シュートは結局数本に留まってしまった。40分に兵藤が観衆を沸かせる見事なボールコントロールを見せるも、シュートには持ち込めない。その後両チームとも、セットプレーから得点を狙ったが、ゴールは奪えず試合終了。2004年以来となる引き分けとなった。
終了後、歓喜に沸く慶應と対照的に、早稲田メンバーは足早に控え室へと戻っていった。試合後、大榎監督は「満足はできない。慶應は気合が入っていて、こちらのやりたい事をつぶしてきたが、その中でも自分たちのサッカーができなくてはだめだ」と内容に不満を抱いていた。また「コンディションが整わなかったのも事実」と言うように、教育実習で多くの選手が、直前までチーム練習に参加できなかったという影響も少なからずあった。後半早々に交代となった山本もその一人。試合後、「最後の早慶戦なのに、正直悔しかった」と声を漏らした。MVPには鈴木が輝いたが、「本人も満足していないだろう」(大榎監督)というように、どこか冴えない表情が印象的だった。チームが勝利を逃してしまっては、その喜びを素直に受け入れることはできなかったのだろう。悔しさばかり残る試合となってしまったが、いつまでも後ろを向いてはいられない。今年は総理大臣杯がないため、関東リーグ再開(9月下旬ごろ)まで長期に渡りチーム練習を行うことができる。大榎監督も「一つ一つのプレー精度と、攻撃の仕掛けや判断スピードの向上に取り組みたい」と秋以降の戦いを見据え、この夏への決意を語った。早くから「勝負の年」と期待されてきた今チーム。しかし、現状ではその期待に沿う結果が出ているとは言い難い。開幕からこれまで、笑顔よりも不満顔を多く目にしてきた印象がある。選手には「このままでは終われない」という断固たる決意でこの夏に臨んでほしい。今度は冬の国立で、「最高の笑顔」を見れるように。
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早大ア式蹴球部公式サイト
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