9月14日、愛知県刈谷市体育館は、一種独特な雰囲気に包まれた。第56回全国選抜相撲大会。学生と実業団、アマチュア相撲人が凌ぎを削り頂点を目指すこの大会。体育館に特設された相撲場には、年代を超えた選手たちの意地とプライドがぶつかり合い、観客席を盛り上げる。早大からは、地元・愛知県出身の兄弟、青山智昭(スポ3)、青山貴昭(スポ1)の2名が出場。実業団選手と一戦を交えた。
1回戦シードでむかえた第2回戦、この日一番の相撲を見せたのが、弟の青山(貴)だった。体重差50キロ。自分よりも体重の重いトヨタ自動車の選手を相手に、青山(貴)は落ち着いていた。立会いから鋭い踏み込みで圧倒すると、すばやく右差しを狙う。その動きに、半身になりながら突き上げで応戦する相手選手。しかしその動きに青山(貴)はすばやく反応。身体を正対させると、相手の右腕を押っ付けながら、前に出る。そして、低い姿勢で相手から右の下手を奪い、万全の体勢に。脇を固め前に押し出す青山(貴)の攻めに対し、相手選手は為す術がない。相手は半身のまま土俵の外へ。青山(貴)は、寄り切りでこの一番を制した。
続く3回戦は、東洋大・荒木関との対戦が組まれたが、相手は個人戦で優勝経験のある実力者。立会いの踏み込みでは勝る青山(貴)だったが、相手の鋭い突き押しに圧倒された。バランスを崩しそのまま土俵を割る。突き倒しで敗退。力を見せつけられた一番となった。
一方、最近好調の兄、青山(智)は、京都市上下水道局と対戦。序盤から相手を良く見た相撲を取るが、差し手を奪われた途端に後退し、2回戦にて敗退を喫した。
試合後、「3回戦の相手、(東洋大・荒木関の圧力は)すごかったですよ。」と全国レベルの力に苦笑いを浮かべる青山(貴)。親類に迎えられての青山兄弟の戦いは共に予選トーナメント敗退と、ほろ苦いものとなった。だが一方で、今日の試合をこのようにも振り返る。「(2回戦の一番は)立会いから右の下手を狙う事を考えていた。作戦通りにいきました。」大きい相手を制した一番での手応えをしっかりとした口調で振り返った。
早稲田相撲部は、フルメンバー5人。人数を考えると、団体戦では圧倒的に不利な立場。だからこそ、個人の力が重要となる。全国の力を感じ取ることが出来る今大会は、青山兄弟にとって、絶好の成長の場になったのではないか。
今月21日には、兄・青山(智)の出場する個人体重別の全国大会も控える。個人の成長で、チーム全体のレベルアップが図られることを期待したい。
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