6月29日、日本陸上競技連盟から8月にドイツのベルリンで行われる世界選手権の代表選手が発表された。早稲田からは、先日行われた日本選手権で100m優勝した江里口匡史(スポ3)と、同種目で2位に入賞した木村慎太郎(スポ4)が選出された。
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優勝で念願の代表入りを決めた江里口匡史(スポ3)。
(写真は5月の関東インカレの様子)
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世界選手権の代表選考を兼ねていた今年の日本選手権で、江里口は見事「標準記録を突破し優勝」という代表決定の条件をクリアし、自らの手で悲願の日本代表の座を掴んだ。「実力で(世界選手権の代表の座を)勝ち取る」と並々ならぬ決意を持って今大会に臨んだ江里口は、まず28日に行われた100m予選でいきなり10秒14(+1.0)の自己記録を叩き出しA標準(10秒21)を軽々と突破すると、翌29日の準決勝でも圧巻のレースを見せる。スタートから勢いよく飛び出すと、中盤以降もリラックスした走りでさらにスピードに乗り余裕のフィニッシュ。記録はなんと日本歴代4位となる10秒07。地面からの反発が大きく記録が出やすいという高速トラック、追い風1.9mといった好条件を最大限に活かし、驚異的なタイムで決勝進出を決める。そして迎えた決勝。優勝候補の塚原直貴(富士通)が欠場の中、江里口はスタートこそ出遅れるが、次第に加速に乗り60m過ぎ辺りでトップに立つと、その後は他を寄せ付けない走りで優勝のゴールへと駆け込んだ。今大会3本目のレースで疲労が蓄積していたこともあり準決勝の記録には及ばなかったものの、10秒14(+1.9)でしっかりまとめ、圧倒的な強さでの日本選手権初優勝となった。
今大会の江里口の走りで光ったのは「中盤からの加速力」。春先から取り組んでいた、足の回転を「楕円」から「円」に近づけるという新たな動きをマスターしたことが、今大会での躍進の背景にあると考えられる。本人が課題と語っていた「トップスピード」が上がったことが、大幅な記録更新を可能にしたのだろう。今季はこれまで条件に恵まれず、なかなか記録を出せずにいたものの、江里口自身はかねてから「10秒1台を出す自信はある」と話しており、今大会でマークした記録も決して好条件の影響だけで生まれた記録ではない。昨年北京オリンピック代表を逃した悔しさ、故障なく積めた冬季練習、徹底した自己分析から生まれた新たな走り、大舞台で自分のレースをする勝負強さ。これまでの努力で培われたすべての要素が結実し、勝ちとった優勝、世界への切符となった。
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