8年ぶりの東京開催となった第97回日本陸上競技選手権大会。今夏ロシア・モスクワで開催される世界陸上の代表選考も兼ねており、連日多くの観客が詰めかけた。この頂上決戦に早稲田から挑んだのは9名。彼らにかかる期待は大きかったが、記録・順位ともに悔しい結果が目立った。
叫び声をあげながらトラックを拳で思い切り叩いた昨年の日本選手権から1年―。大迫傑(スポ4)は名実ともに日本長距離界の先導役となってこの試合に舞い戻ってきた。
男子10000m決勝。ロンドン五輪を懸けた前回大会、B標準突破者として臨んだ大迫は同じくB標準の佐藤悠基(日清食品)とのデッドヒートに負け0.38秒差で五輪代表を逃した。だが今年は大迫・佐藤ともにA標準を突破済み。勝てば世界陸上代表に即内定という状況は、両者による記録よりも勝負に徹したレースを予感させた。
スタートとともに集団は縦長に。先頭が入れ替わる中、佐藤は5番手、大迫は10番手あたりをキープし、歩を進める。レースも中盤に差し掛かった頃、大迫がじわじわと6番手まであがると、佐藤はその背後にぴたりとつき大迫をマーク。7000mで先頭に立った宇賀地強(コニカミノルタ)がややペースを上げると、集団は絞られ11人に。この時点でも大迫・佐藤は余裕を持った表情で集団中程に位置する。レースが完全に動いたのはラスト1周。鐘の音とともに宇賀地・大迫・佐藤による争いへ。さらに9700mで大迫がトップに躍り出ると3者による強烈なデッドヒートが繰り広げられた。勝負がついたのは残り100m。佐藤が大迫を交わすとそのまま完全に振り切る形でゴール。大迫は0.9秒差の2位に甘んじた。
ラストで佐藤が大迫を振り切るパターンはまさに昨年の再来だった。だがこの日の大迫はゴール後も冷静さを失わない。スタンドに両手を大きく振る仕草も見られた。世界陸上代表への即内定こそ叶わなかったが、A標準突破者かつ今大会2位の大迫に代表の道が閉ざされたわけではない。昨年の雪辱を晴らしモスクワの地で名を轟かすことができるか―。審判は6月10日に下される。
昨年大会で100m2位の座に輝いた九鬼巧(スポ3)は今大会7位に終わった。だが今シーズン不調が続く九鬼にとって、今大会決勝で出した10秒36は希望を見出す光となったのではないか。今大会を糧に秋シーズンからの巻き返しを図りたい。
一方、「早稲田から世界へ」を体現し続けてきたやり投・ディーン元気(スポ4)は78m73の2位で試技終了。標準突破は叶わず、世陸への道は絶たれた。今シーズンはなかなか勢いに乗れないディーン。無念は世陸と同じ地で行われるユニバーシアードで晴らしたいところだ。
また、大会前にA標準を破っていた400mH・野澤啓佑(スポ4)は中盤以降追い上げを見せるも、トップ争いに加わることができない。得意の後半も伸びずに4位となった。シーズンベストを記録したが、世陸代表の可能性は潰えた野澤。ゴール後はトラックに拳を叩きつけ、悔しさを露にした。早川恭平主将(スポ4)もまさかの準決勝敗退。前回大会では初出場ながら5位入賞を遂げただけに物足りなさが残る。
早稲田の選手にとっては悔しさ残る結果となった日本選手権。国内トップレベルとの差を痛感したに違いない。ここでの経験を胸に、秋シーズンでは生まれ変わった「エンジのW」を見たいものだ。
関連URL
早稲田大学競走部公式サイト
|