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  Realvoice年間プロジェクト 

2002/12/12掲載 第7回

水泳飛込 大槻枝美

 アジア大会から約3週間。髪をバッサリ切って待合せの大隈講堂前にふらっと現れた彼女の表情は、いつも以上に明るく見えた。4月からの長いシーズンを終え、ゆっくりできるオフ期間。来シーズンに向け、ゆっくりリラックスしているのかな、、、。と思いインタビューを始めたが、私の予想は大きく裏切られた。

釜山アジア大会編
大槻枝美 

−−まずは、釜山アジア大会お疲れさまでした。率直な感想はどうでしたか?
「え〜、あんまり成績がよくないから納得できないけど。今回、審判が北朝鮮・韓国びいきだったんですよ。もう、思いっきりですよ。思いっきり点数に出てしまって。一番最初の試合とか、チームみんなでショック受けちゃって、誰も選手に声かけられませんでした。」

−−大きな大会でも、そういうことってあるんですか?
「はい、そうなんですよ。FINA主催のワールドカップだと、”審判をジャッジする審判”もいるんですけど、アジア大会レベルはいないんですよ。日本人の審判も1人も入れなかったんで、やりたい放題で。最初は、審判の席順とスコアボードの順番とかもバラバラになってて、どの審判がどの点を出したのもわからなかったんですよ。恵太さん(飛込みコーチの金戸恵太さん)が抗議して、最後の方はだいぶマシになってきたんですけど。」

−−でも、そんな悪条件の中で、シンクロ3位に入れたのは収穫でしたね?
「はい、そうですね、、、。う〜ん、でも個人の方が緊張感が欠けちゃって。シンクロでメダル取れて安心してしまったってのもあったのかと思いますね、今思い返すと。」

−−ところで、宿舎とかその他の環境はどうでしたか?
「(選手村は)すっごいキレイでした。私、お金払って住みたいくらいでしたよ(笑)。選手村は、次にアジア大会が終わったら売り出す、新築のマンション群だったんですよ。3LDKで、ベット7つあるとこに4人で宿泊できたので、広くてキレイでよかったです。ただ、、、22階建てなのにエレベーターが1つしかなくって。」

−−それって設計ミスじゃないんですかねぇ?(笑)
「どうなんでしょう?でも、前のスペインの大会の時もそんな感じでした。今回は私達は6階だったからなんとか歩けたけど。でも、いっつも上りで気付くと5階なんですよ。私も友達も、無意識で行けるのが5階みたいで、『あ〜、まだあと1階あるよ〜』ってなってました。(笑)」

−−5階というと、ちょうど高飛込みの10Mの高さと同じくらいですよね?
「あ〜、そうですね。関係あるかもしれないですね(笑)。」

最近の生活
空港にて 

−−さて、最近ですが、もう練習は再開したとのことですが、結局オフはどのくらい休んだんですか?
「4日間です(笑)。数えたら、、、あれ?4日間!?って。年々オフが短くなっている気がします。」

−−たった4日間でリフレッシュできたんですか?
「う〜ん、多分出来ているのかな(笑)。でも、来年も4月に室内選手権、夏に世界水泳、日本選手権、ユニバ(ユニバーシアード)があって、再来年には2月にオリンピックセミ大会、その夏がオリンピックってず〜っと大会が続くんですよ。しかも試合は全部繋がっているから(例:室内選手権の成績で世界水泳とユニバの代表が決まるなど。)、2・3年先を照準に入れていかないと行けないんでゆっくりもしてられないんです。まぁ、そういう風にコーチに洗脳されてるともいうんですけど。(笑)」

−−ってことは、今はオフシーズンとはいえ、全然オフではないんですね?
「全然ですよ(笑)。今の時期って、種目を上げるから、実は一番大変かも知れないんですよ。今、新しい種目を3種類くらいやってるんですけど、、、やりたいなとは思っているんですけど、、、(笑)、今の時期が一番大事なんですよ。今の段階で徐々にやっていって安定させておいて、次のシーズンで試合に出れるレベルにしていかなきゃならないんで。新しい種目を作れるのって今しかないんです。」

−−オフも短くて、更にず〜っと先を見続けないといけないって大変ですね。でも、やっぱり練習は好きなんですか?
「そうですね。苦ではないですね。気が乗らない日とかはあるんですけど、基本的に好きなのは変わらないですね。」

−−でも、練習と言っても、基礎練習みたいのもあるじゃないですか。サッカーで言うと、インサイドキックをひたすら繰り返すみたいな。あれも、苦にならない?
「あ〜、ありますね。水面と同じ高さから飛んだり、陸上で跳び箱と柔らかいマットを置いてひたすら飛ぶのとか。特に、陸上(体育館)ではひたすら飛ぶんですよ。1種目につき、40本飛ぶとか。5本ずつ区切って飛んでいるんですけど、結局5回が何回だっけ?ってなっちゃうんですよね(笑)。そういう練習は、慣れてくると”ただやってるだけ”になっちゃわないようにするために意識を使いますね。でも、それも”苦”ではないですね。」

 今回、初めてインタビューに同行した後輩は、取材後、「大槻さんって基本は、普通の大学生なんですね〜。」と漏らした。確かに、彼女の自然な語り口は、彼女が”トップアスリート”であることをいつの間にか忘れてしまう。しかし、それには、もう一つの理由があるような気がする。それは、彼女にとって、飛込みがあまりに”自然な生活”になっているということだ。飛込みが好きで、練習が好きだからこそ、オフも気分転換だけで十分だし、自然体で飛込みについて語ることができるのではないだろうか。一方で「卒論、ホント逃げ出したいですよ〜。」と呟く普通の大学生であり、一方でトップアスリートであることは、私達が思っているよりずっと、本人にとっては自然な生活なのかもしれない。

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(TEXT=鈴木英介・PHOTO=田村拓実、大槻枝美本人提供)

 

 


 
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