2003年4月20日、第72回早慶レガッタが、今年も隅田川で開催された。その日は朝から小雨と強風に見舞われ、前日までの小春日和がウソのように肌寒かった。「このような天候の中、隅田川は果たして盛り上がっているのだろうか?」私は一抹の不安を抱きつつ、ゴール地点手前の桜橋付近へと急いだ。
ところが私の不安をよそに、ゴール地点へ近付くにつれて早慶両校の覇気のある応援合戦の様子と、艇の到着を今か今かと待ちわびている言問橋上の観衆の姿が、私の目に飛び込んできた。私のささやかな不安は、半世紀以上も前から毎年両校の熱き戦いを見守ってきた隅田川を前にしては、全く無駄な心配に終わった。
午後2時50分、早慶レガッタの目玉である対抗エイトスタートのアナウンスが入ると、川沿いで行われているもう一つの戦いである両校の応援合戦も、さらに熱気を帯びてきた。寒空の中、タンクトップのユニフォーム一枚で声援を送るチアガールや応援団の様子を見ていると、こちらの寒気もあっという間に吹き飛んでしまうようだった。
程なくして、両校の艇が姿をあらわした。初めはどちらの艇が早稲田なのか、そしてどちらの艇がリードしているのかすら判別できないくらい遠くを走っていた2隻の艇であるが、さすがに3200メートルを10分余りで走り切る艇である、その姿はみるみるうちに大きくなり、早稲田が慶応に2挺身差をつけてゴールに飛び込んだ。 去年に引き続き、早稲田大学勝利の瞬間である。
ゴール後、その勇姿をみせる早大選手陣、はたまたうな垂れる慶大選手陣・・・。一年間、この日の為に日々努力してきた末の彼らの姿は、私の胸を強く打った。そして互いの応援を称え合う両校の応援団も、単なる応援の域を超えた、ひとつのスポーツ競技の立派なアスリート達であるように感じられた。
私の隣で観戦していた男性は、何十年も前から毎年両校の戦いを見守り続けてきていると言う。若きアスリート達が勝利へ向けて艇を進ませるひと漕ぎひと漕ぎ、そして声を枯らして発せられるエールのひと声ひと声には、悪天候も全く相手にせずに、人々の心を揺さぶる魅力があるのだろう。そしてその魅力がある限り、早慶レガッタは、これからも隅田川に様々な歴史を刻み続ける事だろう。
戦いが終わった後の隅田川。その流れは、まだその興奮が覚めやらない私の心を映すように荒々しく波打っていた。
来年はいったいどのような新しいドラマが繰り広げられるのであろうか?戦いを終え、隅田川を立ち去る選手陣・応援団・観衆との別れを惜しむように、未だにその激しい流れを静めない隅田川に、私は来年もこの地へ赴くことを誓った。
関連URL
第72回早慶レガッタ公式サイト
早大漕艇部公式サイト
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