その試合も今回と同様、突き抜ける青空と冷たい空気の冬晴れの日であった。 試合は一進一退の攻防が続き、後半試合終了間際に早稲田がトライを決め、2点差に追いつく。トライ後のキックを決めれば同点である。そして、このキックが時間的にラストプレーのようである。そんな中、早稲田の選手が楕円のラグビーボールを蹴り上げる。ボールは放物線を描きクロスバーへと近づいてゆく。しかし、バーの間を通過するかに思われたボールはバーに弾かれ、外へと出てしまった。ゴールはならず、22-24で明治の勝利となった。この黒星は過去10年間の早明戦で唯一の黒星である。
そんな嫌な記憶がよみがえった私は、自然と目を閉じてしまった。今年の早稲田大学ラグビー蹴球部は例年にないほどに苦しいシーズンを送っていた。対抗戦では筑波大学に33シーズンぶりに黒星を喫し、帝京大には今年の大学選手権に続いて敗れてしまい、既に2敗していた早稲田は優勝の可能性が消えて臨む早明戦であった。そんな厳しい状況の中、先日の早慶戦にて慶應に大勝し、伝統の一戦に勝利するということと同時に波に乗り始めるという意味でもこの早明戦の勝敗というものは非常に重要なものでもあった。
目を閉じた私は、次の瞬間大歓声を聞くことになる。明治サポーターではなく、早稲田サポーターのである。原田がペナルティーゴールを成功させたのだ。そしてロスタイム2分が過ぎ、早稲田がボールを外に蹴りだす。ここでノーサイド。試合終了である。三年連続の早明戦勝利である。
終わってみれば、互いに逆転を繰り返した試合であり、プレーする選手たち以上に、見ている私たちもどっと疲れた試合であった。辻高志監督(平12 人科卒)が「どっちに転んでもおかしくない試合」と評するのもうなずける。まさにこれぞ早明戦という手に汗握る試合を制した早稲田の戦士たちは次なる大学選手権へと駒を進める。12月18日に愛知県の名古屋市瑞穂公園ラグビー場にて大阪体育大学と激突し、大学日本一への挑戦の火蓋が切られる。昨年度達成できなかった、「大学日本一」へぜひ突き進んでほしい。
私が初めて見た早明戦からはや3年。今回の早明戦が終わると同時に、自らの大学4年間を振り返る自分がいた。大学の講義はもちろんのこと、友人や仲間たちと過ごした日々というものはなににも代えがたい思い出である。そして、私にとって「ワセダスポーツ」というものは私にとって特別なものであり、これからの人生でもともに歩んでゆくものとなったような気がする。そのきっかけともいうべきものを与えてくれた、ラグビー早明戦に感謝したい。ありがとう。
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