圧倒的な試合内容であった。2ー0という結果以上に、伝統の早慶戦での、サッカーという競技において、その力の差は歴然であると証明する内容だった。そして、特筆すべきは、臙脂色のシャツを身に纏った女戦士達の戦う様が、あの世界を代表するクラブチームであるバルセロナと共通する要素を持っていたように思えたことだ。
バルセロナのファンには、不快に思う方もいるであろう。今や世界最強を謳歌する、自分の愛するクラブを、プロですらない大学サッカーの1チームと比べられたら、いい気はしないかもしれない。勿論、個々の能力は大学サッカーの標準と大差はない。まだまだ荒削りな部分がとても多く、観ていてヤキモキすることもある。当然、世界中を魅了して止まないポゼッションフットボールなどとは、程遠い。
では、どこが似ているというのか。それは、いくつかの戦術面の要素においてである。そして、その戦術を実行するための、規律を守る力、これがとても洗練されていたように思う。
取り上げたいのは、2点。まず、1つは、ボールロストをした後のリアクションの早さだ。ボールを取られたら、怒涛の勢いで、複数人でプレッシングをかけ、敵にボールを大きく蹴らせてしまうか、奪うかをしてしまう。当然、体力を大きく使うこの戦術を、慶應戦での彼女達は、試合の大半を通して、続けることができていた。かのバルセロナは、華麗なボールポゼッションが1番の武器であると思われがちだが、正確には違う。彼らは取られてから、取り返しにいくというフローが、とても早い。それが、あの支配率の高さを支えているのだ。この点で、彼らは共通していると言えるだろう。しかし、異なるのは、バルセロナはボールを保持する時間が長いために、スイッチのオンとオフを切り替えることができる。つまり、休む時間を作れる。それによって、90分を通して、豊富な運動量が求められるこの戦術を実行することができるのだ。
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