12月29日、箱根駅伝区間エントリーが発表された。12月上旬に行われた16人のエントリーから14人に絞られ、各大学の今年の戦陣が見え始めた。
早稲田は主力となる三年の杉山一介(人3)、空山隆児(人3)、篠浦辰徳(人3)を1区から順に配置し、5区の「山登り」に経験者の五十嵐毅(人4)を持ってくるなど、完全に往路重視の作戦をとっている。特に最初に走る杉山、空山、篠浦がそろって力を出し切りタスキをつなげることが、チーム全体を勢いに乗せる不可欠の要素であり、決して失敗は許されない。
杉山が走る1区には全日本インカレ5000、10000メートル二冠を成し遂げた橋ノ口(山梨学院大)、10000メートル28分台の実力を持つ久保田(東洋大)らエース級の選手らも配置され、例年通りのスローペースではない可能性もある。それも考慮に入れつつ今季は安定感抜群の杉山は、状況に対応してレースを作っていくことが必要とされる。
各校のエースが集う花の2区の走者となった空山は、前回の箱根では7区にエントリーされたものの、自身の故障が影響し当日に変更、辛酸をなめた。その悔しさをバネに春の関東インカレでは10000メートルを初の28分台で入賞するなど、着実に力をつけてきた。10月の予選会では個人総合43位と振るわなかったが、11月の日体大の長距離記録会では10000メートルの自己記録を更新。モカンバ(山梨学院大)、藤井(日本大)、内田(駒沢大)といった現在の学生長距離界の頂点に立つ選手がそろう区間で、「未完の大器」と言われた本来の実力を発揮してほしい。また、4年連続で5区の山登りにエントリーした主将の五十嵐。1年時は区間9位、2年の時は体調不良ながらも7位、昨年は区間3位の走りで往路から不振にあえいだチームを勇気づけた。今年は四年目の山登りという経験と実力を生かし、区間賞もぜひ期待したい。
往路重視のオーダーの中で、今回の復路は未知数の部分が大きい。その中でも注目したいのが、9区の「裏エース区間」の河津直行(一文4)だろう。河津は昨年まで補欠にも入っていなかったが、今季大きく成長。入学時は入部時は5000メートルが15分後半程度であったが、現在は1分以上縮めておりハーフマラソンも1時間5分18と貴重な戦力になっている。いわゆる「早稲田のたたき上げ」の選手であり、最終学年の箱根で大きくばけることができるか。また、11月の全日本大学駅伝で脱水症状を起こし、途中棄権した原英嗣(人2)は7区に起用された。全日本は棄権という結果になってしまったが、安定した実力を持ちつつあるのは確か。二年生の中でも柱になるべき存在の原、全日本の悪いイメージを払拭し、一皮むけるような走りを期待したい。
昨季の15位シード落ちから一年。今年の早稲田は例年に比べても選手層が薄いと言われている。しかし昨年のチームが悩まされたような選手の故障はなく、補欠には、昨年の経験者である四年の大浦周(一文4年)や関東インカレ1500メートル4位入賞の藤森憲秀(スポ1)や秋以降めざましい成長を遂げてきた河野隼人(スポ1)ら頼もしい選手が控えており、10人の選手が実力を発揮するという条件においては、悪い予想を大きく裏切るような快走も期待できるだろう。
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