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復路総評

 今年で80回目を迎えた箱根駅伝。記念大会となる今回は、去年の関東学連選抜の出場から更に規模を拡大し、40年振りに関東以外の学生が日本学連選抜として東海道を駆け抜ける権利を得た。初日の5区、山登りでは、その学連選抜の筑波大・鐘ヶ江幸治が区間賞を受賞するなど、大きな活躍も見せた。優勝争いは総合力抜群の駒大に軍配が上がり、2位以下に3分半近くの差をつけるという圧倒的有利な展開で復路を迎えることとなった。
 一方早稲田大学は、1・2区でトップから大きく引き離され、3区の篠浦が区間3位の健闘を見せるも、復路は15位で繰り上げスタートという、最低条件である“シード権確保”までも危うい状況へと追い込まれてしまった。

シード権争いの幕開け

 
7区を走った原。粘りの走りで順位を1つ上げた。

 初日に引き続き、二日目も目の覚めるような快晴で、スタート地点の芦ノ湖からは雪化粧をした富士山をはっきりと望むことができた。だが、それでも新春の箱根の寒さは厳しい。早朝の寒空の中、急勾配を一気に下るには、厳密な調整と相当な脚力が必要となり、6区は5区以上にスペシャリストの存在が望まれる区間である。そして、今年も中大から、野村俊輔というスペシャリストが生まれた。野村は昨年も区間賞を受賞した6区を、中盤まで区間記録を上回るハイペースで駆け抜け、58分29秒という区間歴代2位タイの記録でチームを13位から8位まで押し上げた。この活躍により、中大は復路追い上げの良い流れを築くことができた。
 トップ駒大の吉田は区間3位の危なげない走りで、2位以下に更なる大差をつけた。 一方往路の結果から、他の5チームと共に繰り上げスタートとなった早稲田。当日エントリー変更になった高岡弘(人2)は、併走していた大東大を序盤で振り切ると、その後もリズムの良い走りで独走を続ける。終盤には前を行く帝京をかわし、区間8位、総合14位で小田原中継所へ飛び込んだ。

 早稲田の7区を務めたのは原英嗣(人2)。前哨戦となる伊勢駅伝で、脱水症状の為に途中棄権という悪夢を見た原にとっては、何としてもこの走りでチームへの借りを返したいところだ。日が昇るにつれて、次第に強くなる日差しがいささか心配ではあったが、粘りのある走りで山梨学院をかわすと、13位で8区へ襷をつないだ。
 トップ争いは、駒大・斉藤が安定した走りで一向に他を寄せ付けず、危なげなく8区へ襷リレー。しかし、東海・小出が区間1位の走りで2位へ返り咲き、徐々に駒大との差を詰めていく。

見えない背中

 
10区岡部は苦しい走りだった。

 続く8区も、当日エントリー変更となった大浦周(一文4)が、早稲田のシード権獲得へ向け、湘南の海岸線へ勢い良く飛び出した。しかし、序盤で山梨学院に抜かれると、終盤でも大東大に抜かれ、総合順位は13位と変わらないものの、15番手で襷リレーという悔しい結果で最後の箱根を終えることとなった。この辺りからシード権争いもいよいよ熾烈になってくる。6位で襷を受け取った日体大・梅枝が、区間17位の苦しい走りでシード権獲得ボーダーラインの10位まで順位を下げると、11位の中央学院がそれを追う展開となった。しかし13位にいる早稲田・大浦には、一向に日体大の背中が見えることはなかった。
 トップ争いは、1位の東海・影山が区間1位の走りで駒大との差を1分半詰めるも、駒大・本宮が我慢の走りで首位を死守する。

 9区は復路のエース区間。早稲田・河津直行(一文4)は、今季最も大きく成長した選手であり、最初で最後の箱根で、ぜひともシード権獲得へ向けた積極的な走りが期待された。しかし、序盤に東農大に抜かれると、厳しい暑さの影響からか、苦しい表情を見せ始める。その後も足取りは重いままで、帝京・関学大の2チームに抜かれると、総合順位も14位へと後退してしまう。
 駒大のリードは依然揺らがず、東海との差を広げた塩川が、三連覇へ向けて最終区間の10区・糟谷へと最後の襷リレーを行う。

 
優勝したのは駒澤大学。圧倒的な強さを見せた。

 最終10区では、シード権獲得へ向けて、各校の準エース級ランナーが最後の凌ぎを削る。シード圏内まで7分57秒と、大変厳しい状況で襷を受け取った早稲田のアンカー岡部祐介(人3)は、最後の粘りを見せて前を行く帝京を抜くが、シード圏内の10位までには遠く及ばず、総合16位で大手町のゴールテープを切るという屈辱的な結果に終わった。
 優勝は終始安定した走りを崩さなかった駒大が層の厚さを見せつけ、前日の往路に引き続いて復路も制し、11時間07分51秒で4年ぶり2度目の完全優勝、史上5校目の三連覇も達成した。また、今大会から新設された最優秀選手賞、金栗四三杯には、5区で好走を見せた、日本学連選抜の鐘ヶ江幸治(筑波大)が選 ばれた。」

古豪復活へ向けて

 
オープン参加ながら大健闘した日本学連選抜。

 終わってみれば下馬評通り、総合力で勝った駒大が圧倒的な力で三連覇を成し遂げ、駒大黄金時代の到来を思わせる幕切れとなった。その一方で、準優勝となった東海大、予選会から勝ち上がった亜細亜大の3位躍進など、新勢力の台頭が印象的だった。また、例年では見られない、関東以外の学生の力走も大きな感動を呼び、第80回記念大会は大成功のうちに幕を閉じた。
 しかし、2年連続で予選会からの参加を余儀なくされた早稲田大学にとっては、昨年に引き続き、大変苦い大会となってしまった。だが、下を向いている暇はない。来年へ向けた戦いは、ゴールした瞬間からもう始まっているのだから。幸いにも、今回主力となった選手の多くは3年生以下で、来年も十分に箱根を戦える若いチームである。今大会の悔しさは、彼らの心の中にしっかりと刻まれたことだろう。その悔しさを決して忘れずに、来年こそはぜひとも古豪復活を果たして欲しいものだ。

 

(TEXT=齋藤美穂、PHOTO=杉崎有紀・編集部)

 

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