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往路総評

 第80回目を迎えた箱根駅伝。節目となる今年は、去年に引き続き大幅なルール改正も行われ、去年にも増して多くの選手に新春の東海道を駆け抜ける門戸が開かれた。前哨戦となる出雲駅伝と全日本駅伝では共に混戦となり、駒澤大学の黄金時代から戦国駅伝時代の幕開けかと思われた今大会であったが、往路が終わってみれば、駒澤大学が他を寄せ付けない走りを見せ、2位以下を大きく引き離して明日の復路を迎えることとなった。
 一方去年の無念のシード落ちから、何としてでも古豪復活を目指したい早稲田。シード権獲得は最低条件として、上位争いへ向けベストの布陣を組んだものの、前半のまさかのブレーキで、去年に引き続き厳しい戦いを強いられることとなった。

大混戦の2区

 
スタート前の大手町。ここから長い戦いが始まる。

 午前8時。大手町の読売新聞社前を、20人のランナーがスタートした。今年は昨年と打って変わって暖かな陽気の中、沿道の応援にも熱が入る。何としてもシード権が欲しい早稲田。レースの流れを決める為に重要な1区を務めたのは、今季安定感抜群の杉山一介(人3)。しかし、山梨学院・橋ノ口が例年にないハイペースで集団を引っぱると、杉山は5km付近で先頭集団からずるずると後退し始める。
 区間賞争いは駒大・太田と日体大・鷲見の対決。二人はデットヒートの末、再三な走りを見せたルーキーの鷲見が太田を引き離し、首位で鶴見中継所へ飛び込んだ。杉山はその後、なんとか喰らいつこうと粘りの走りを見せるが順位は上げられず、14位で2区へ襷をつなぐ。

 
2区の空山。残念ながら順位を下げてしまった。

 「花の2区」は、各校のエースが集う花形区間。駒大・内田、山梨学院・モカンバ、日大・藤井など、大学長距離界のエースに割って入りたい早稲田は、昨年7区での快走を期待されながらも、故障により当日のエントリー変更を余儀なくされた空山隆児(人3)を送り込む。1年時、7区での区間賞デビューが鮮烈だっただけに、去年の悔しさを晴らすような快走を見せてくれるのではないかと、周囲の期待も大きい。だが、序盤から足取りは重く、2年前のような強気な走りは見られない。3区が待つ戸塚中継所に到着した頃には、逆に18位まで順位を下げてしまっていた。この時点でシード権内の10位・神大とは4分差。このままではシード権獲得も危ぶまれるのではないかと、暗雲が立ちこめる。
 一方注目される区間賞争いは、東洋・三行が8人抜きの快走を見せ、モカンバや内田を押さえて獲得。チームも駒大を抜き、首位で3区へと襷をつないだ。

粘りの走りで、徐々に上位へ

 
今年も沿道には多くの観衆が詰め掛けた。


 続く3区。この区間はつなぎ区間と思われがちだが、毎年海岸からの強い向かい風が選手たちを苦しめ、短距離でも侮れない区間である。幸いにも今年は選手を悩ませる浜風はほとんど姿を現さなかったが、代わりに容赦なく地面を照り付ける強い日差しが選手の体温を上昇させていった。シード権獲得に向け、もう失敗は許されない早稲田。厳しい状況の中、区間3位の快走を見せたのが、今季関東・全日本の両インカレで3000m障害を制した篠浦辰徳(人3)。持ち前のスピードで、5km付近で前を行く城西大学をかわすと、4区が待つ平塚中継所まで安定した走りを見せ、シード獲得への望みをつなぐ。
 トップ争いは駒大・佐藤が区間賞の走りで首位を奪回し、そのまま独走体制を作った。

 続く4区でも駒大・田中が区間賞の危なげない走りで、後続を引き離す。一方早稲田の4区は当日エントリー変更となった、期待のルーキー藤森憲秀(スポ1)。順位こそ上げられなかったものの、往路の準エース区間で粘りの走りを見せ、往路最終区間となる、5区へ襷をつなぐ。

 山登りの5区は、主将の五十嵐毅(人4)が4年連続で起用された。1年時から5区を任され、昨年は区間3位の好成績を残した山登りのスペシャリストに、区間賞の期待も募る。4区で藤森が詰めた東農大との差を一気に逆転すべく、慣れたコースを積極的に登り、早々に順位を上げる。脱水症状によりブレーキとなった大東大・馬場もかわし、15位へと順位を上げたものの、区間賞争いには加われずに15位で芦ノ湖のゴールテープを切る形となった。
 往路優勝を飾ったのは、終始危なげない走りでトップを守ってきた駒大。日本インカレのハーフマラソン王者である東海・中井の猛追も及ばず、2位以下に3分半近くの差をつけて、明日の山下りへ望むこととなった。早稲田はトップと10分48秒差の15位で、明日は無念の一斉スタートとなった。

シード権獲得へ向けて
 絶対的なエースの存在がなく、下馬評では昨年以上に層が薄いと言われていた早稲田。上位進出、シード権獲得には全区間でのベストな走りが絶対条件だったが、肝心の最初の2区間で大きく足踏みをし、復路の最大の目標をシード権獲得へと変えざるを得なくなってしまった。復路を終えた時点で、シード圏内となる10位・日大との差は3分30秒差。往路に主力を注ぎ込んだ早稲田は、往路以上に厳しい戦いとなることは必至であろう。しかし、何が起こるか分からないのが箱根駅伝。往路の結果を引きずらずに一人一人がベストを尽くせば、決して逆転できない差ではない。トップから10分差以上の6チームに課せられた一斉スタートも、考えようによってはプラスに考えられる。残る5チームと併走しながら、決して諦めずに前を追って欲しい。
 まだまだシード権獲得への望みは絶ち切られたわけではない。苦しい時ほど力を発揮できるのが、早稲田魂である。復路は早稲田特有の粘り強い走りで、きっとシード権を獲得してくれることを信じて、大手町でのゴールまで見届けたいと思う。

 

(TEXT=齋藤美穂、PHOTO=近藤優美子)

 

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