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[米式蹴球部特集] 挑戦者たち〜THE GREAT CHALLENGE〜

リレー人物紹介其の五:中野由梨&石田義人


 どの競技にも言えることだが、スポーツは選手だけで行うことはできない。実際にプレイする選手を支える人々が存在してこそ、選手は最高のパフォーマンスを行うことができる。今回紹介するのは、アメフト部全体の運営に携わる石田義人マネージャーと選手の体の処置を行う中野由梨トレーナーだ。BIG BEARSでスタッフとして活躍するふたりの役割や、スタッフだからこそ感じる選手やチーム全体に対しての思いを伺った。


 

 

――おふたりの役割の内容を教えて下さい。
 石田: 僕が務めるマネージャーは一言で言うと部の運営に関することなんですが、選手がグランドで力を発揮するための仕事をやっています。具体的にいうと、選手のボトルを作ったりグランドでビデオを撮ったりするのは勿論ですが、その他にもアメフトの連盟との関係の折衝や広報活動を行ったり、OBの方にご挨拶にお伺いしたりなど普通の大学生活では経験できないような責任のある仕事を任されたりします。
 中野: トレーナーの仕事で一番大切なのは怪我の予防ですね。そのために普段はグランドに選手よりも早く来て、各選手に必要なケアをしたり練習が始まればサイドラインから目を凝らして何か起こったらすぐ対応できるように選手に異変がないかどうか見ています。

――なるほど。それではなぜマネージャー、もしくはトレーナーをすることになったのですか?
 中野: 高校生までずっとバレーボールの選手だったのですが、怪我も多くてそれがつらいという体験はよくあったのでそういう選手の力になれればと思っていたからです。
 石田: もともOL(オフェンスライン)の選手だったのですが、昨年の12月に網膜はく離を起こしてしまって…。ちょうどその時マネージャーがひとり足らない状況だったので、マネージャーとして部の運営側にまわることになりました。

――そもそもどうしてアメフト部に入部することにしたのですか?
 中野: スポーツ医学を勉強したいと思って早稲田に入学したのですが、学内で部活の学生トレーナー募集の張り紙を見ていろいろな部活のトレーナーの方の話を聞いていたんです。その時アメフト部も見学して、アメフトというスポーツはその時初めて知ったのですが(笑)、トレーナーの歴史も長くてしっかりしているし、選手の怪我も多い分、自分も勉強になるからやりがいがあるだろうなと思って、アメフト部のトレーナーに決めました。
 石田: 中学・高校とバスケットをやっていて、それを一生懸命頑張って続けたことが自分の自信になっていたのですが、大学に入ってサークルをまわっていると楽しくやるだけという印象を受けて…。大学に入った途端、いきなりそれがなくなってしまうとつまらないなと感じたので、勧誘を受けていたアメフト部で頑張ってみようと思いました。


 

マネージャーへの転向は迷いがあったと語る。

――早大アメフト部の良いところはどこだと思いますか?
 石田: どのチームもカラーというのがあるわけですが、BIG BEARSは変な上下関係はなくて、グランドに立てば下級生が上級生に向かって注意することもあるし、遠慮せずに自分を発揮できる場所で良いと思います。
 中野: 初心者が多いというのもあって他の大学に比べてスター選手というのが少ないと思うのですが、でも毎年そこそこ良いところまで残れるっていうのは、みんなが集まればすごい力を発揮できるチーム、団結力があるチームだと、時間を共にしていてそう感じます。

――石田さんは選手からマネージャーになられる中で、葛藤のようなものはあったのでしょうか?
 石田: マネージャーになった当初は葛藤とかはありましたね。すごい悩んだ時期もあったのですが最終的に思ったのは部員であることに変わりはないし、同期の子が頑張っているし、マネージャーをできることは自分のためにもなると思えたんです。そう思うと世界がすごく広がって、学生なのにたくさんの方にお会いして、特に普通は年配の方とお会いする機会もないですし、そういう方と話すとすごく勉強になりますね。

――中野さんはトレーナーを務める上で特に大変なことは何ですか?
 中野: 学生トレーナーというのはチームドクターや監督・コーチと選手の架け橋という役割があります。チームドクターは常に一緒にいるわけではないので、選手を常に把握して何かあった時はすぐにチームドクターに対応してもらう必要がありますから。常に選手たちとの間に入って、最終的には選手が一番力を発揮できるように、様々な人の間に入って意思疎通を行うことが私たちの大切な仕事なんです。


 

スタッフの仕事は多岐に渡る。

 石田: 選手は試合に出たいわけですよ、無茶をしてでも。トレーナーはそれを止めるんですよね。そこには必ず摩擦が生じるのでそれをつらいと思っているようでは、トレーナーはできませんよね。
 中野: もちろん私たちもやりたいっていう選手にはやって欲しいですが、それでプレイしてしまうと後々響いてしまいます。アメフトなんで頭や首の怪我が多く命に関わるので、必死というか選手の気持ちだけを考えていては成り立たないので。私たちの中でも葛藤というのはあるのですが、トレーナーの立場を考えて行動しています。やはりコミュニケーションをとることは難しいので、日頃から信頼関係を築くようにしています。

 チームでの役割は全く違うがふたりの言葉からは、選手が最高のパフォーマンスをしてチームが勝利を収める、という共通の目標に向かってそれぞれの立場で戦っているのだと強く感じる。アメフトは選手だけでできるのではない、彼らのようなスタッフの力があってこそ観客は手に汗握る試合を目にすることができるのだ。彼らは試合を観戦する際の新たな視点を示してくれたような気がした。

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(TEXT=近藤優美子、PHOTO=米式蹴球部提供、近藤優美子)
 


 
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