第81回箱根駅伝。往路では山梨学院大・モカンバ、日大・サイモンの圧倒的な力での区間賞、一年生ルーキーの活躍、「山上り」の5区での順天堂大・今井の区間新など、それぞれの区間ごとに多くのドラマが生まれた。それにもまして、復路では駒沢大の四連覇に注目が集まる。その一方、復路を15位と苦しい順位からのスタートとなった早稲田大学は焦点をシード権獲得という目標へと変更せざるをえない苦しい状況であった。しかし、復路は安定した走りを見せる選手が揃っているため、大幅な逆転劇はないにしても、着実に繋ぐ走りからの巻き返しには期待がかけられた。
伸びなかった山下り
カーブか急なうえに急勾配を一気に下る「山下り」の6区。それゆえにコース取りとテクニック次第ではタイムを大幅に伸ばすことが可能である。このコースにもやはりスペシャリストは存在する。二年連続で区間賞を獲得した中大・野村の区間新に今回の箱根も注目が集められた。しかし、野村は新春の箱根の寒さに加え、路面の状態のわるさから、区間賞は手にしたものの、1時間1秒と予想以上に記録が伸びずに4年目の箱根を終えた。また、往路2位で芦ノ湖を飛び出した駒沢大は東海大との差をじわりじわりと詰めていった。早稲田については、主将杉山一介(人4)が箱根4年目にして初の「山下り」を迎えた。しかし、順位を左右するほどタイムは伸びず、小田原中継所に飛び込んだ。
じりじりと差を詰め寄った中盤の走り
7区、14位でたすきを受け取った原英嗣(人3)。7区では、シード権争いが熾烈を極めた。5大学がひしめきあう第8集団で2チームがシード落ちするという状況が続く。第8集団が牽制しあいながらスローペースで10km地点まで進んでいった。原はチャンスとばかりにペースをあげる。なんとしてでもその集団に加われるように順位をあげたかった。大東大に一時は越されるも、粘りの走りで大東大、東洋大を立て続けにとらえ、区間6位の大健闘の走りで、シード権獲得に望みを繋げ、順位をひとつ上げ、13位で8区の岡部佑介(人4)へたすきを繋いだ。ここにきて、7区終了時、10位の神奈川大まで1分27秒差とシード権獲得が現実味を帯びてきた。
岡部は序盤からスピードに乗れず、優位にレースを展開していくことができず、苦しい走りが続く。表情にも厳しさを見せるが、粘りの走りで順位を落とすことなく、13位で9区河野隼人(スポ2)にたすきリレー。シード権までは1分42秒と依然厳しい状況。河野は前方を走る大東大・馬場のペースにはじめはついていくことができなかったが、自分のリズムで走り、終盤になり盛り返す。河野は前を行く大東大・城西大を鮮やかに抜き去り、区間4位、11位で最終10区の高岡弘(人3)にたすきを繋いだ。この時点で10位神奈川大との差は1分4秒。厳しい状況であることは変わらないが、早稲田は高岡の走りに賭けるしかなかった。
10区、高岡の区間新の走りも…
高岡は今までたすきを繋いできた選手たちの気持ちにこたえる力走をみせる。神奈川大・内野との差を30秒、20秒、10秒と徐々に詰めていく。しかし10kmを過ぎた付近で、内野は高岡が後方から迫っていることに気づき、高岡の追走を許さない。最後まで気の緩みを見せなかった高岡の走りではあったが、ゴールの大手町まで追いつくことはできなかった。10位の神奈川大とは22秒差の11位、11時間15分11秒で早稲田は箱根路の戦いに幕を閉じた。高岡の区間新に加え、復路で粘りの走りを展開しただけに本当に悔しいシード落ちとなった。
優勝は総合力に勝る駒澤大学。すべての区間において安定した力を発揮し、特に4区・田中、9区・塩川らの二大エースが区間賞を取るなどチームを牽引した。その一方で10区・日体大(2位)の躍進を印象付ける山田の力走が印象的であった。それに続いて、日大、中大、順大がゴールテープをきった。対照的に、3年連続でシード権を取りのがすという苦汁を舐めた早稲田。だが、最後の最後まで前を走る選手に追いつこうとする高岡の走りは感動さえ生んだ。来期は主将としてチームを引っ張っていく。あのひたむきな走りに下級生は少なからず刺激を受けただろう。ひとつにまとまった競走部の姿が来期は必ず見られるにちがいない。
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