「学生主体」のスタンスで昨年度から早稲田大学ア式蹴球部の指揮をとる古賀聡監督。監督就任1年目の昨シーズンの振り返りから、現在のチーム・選手に対する思い、そして監督として迎える2回目の早慶戦について語って頂きました。
早慶サッカー定期戦特集第四弾、古賀聡監督インタビューです。
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古賀聡監督プロフィール
早稲田大学教育学部 平成4年卒 2008年-09年 鹿島アントラーズユース監督
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――まず、昨年の事から振り返って頂きたいのですが、昨年、古賀監督がア式蹴球部の監督に就任されてゼロからのスタートだったと思いますが、1年間を終えてどんな感想を持たれましたか
そうですね、まず結果に関して、ア式蹴球部を応援してくれる方々、大学の関係者、そしてア式を支えてくださっているOBの方々に対して、何も結果を残す事ができなかったという事、全く喜ばすことができなかった事に対して申し訳なかったという思いが強いシーズンでした。
――1年間を終えた後、チームに何か伝えられましたか
結果を出す事は出来なかったんですけども、チームとして核を置いている「学生主体」という部分での意識づけは出来たという風に思っています。結果こそ出ませんでしたけども、4年生が自分たちでチームを作っていくんだというような流れだったり、風潮を作ってくれたという事に関して感謝とそれに対してその労をねぎらったりという事はしました。
――いまお話にも出たように古賀監督は「学生主体」を重視されていますが、そのことがどのように試合につながっていくと考えて指導されていますか
やはり、あくまでピッチの中で戦うのは選手である学生なので、そこで難しい状況になってベンチの指示を仰いでたりとか誰かが助けてくれるだろうとかでは全く戦えないので、そういう状況の中でも自分たちで難しい状況を打開していく力をつけていくためにも普段から自分たちで考えて行動していく、発信をしていくことが重要であるということは伝えてきています。
――監督が口にだしたいと思いながらも、選手に考えさせるために言わないでおくということはありますか
チームの幹となる部分、コンセプトに関しては徹底して、繰り返し繰り返し基本的なことは言い続けますけど、そこから派生する部分に関しては彼ら自身が考えて自分たちでつくり出していって欲しいし、そこを任せて選手たち自身に考えてもらってます。
――今年度のチームは攻守の切り替えを強みにしようということですが、それは監督からの指導ですか
そうですね、それは世界のサッカーの流れでもあるんですけども、相手の守備が整った状況でそれを打開していくのは非常に難しい事で、逆にそこが整う前に早くボールに迫っていくということがゴールを得るためには必要なことなので、そこはサッカーの本質として追及していこうということは言い続けています。
――選手から提案されたことはありますか
ピッチの中でもこういう風にしたいということをキャプテン、4年生、それから中心選手含めて話をしてきてくれることもありますし、ピッチの外でも下級生に対してだとか、規律に関してであるとか、そういう事に関して彼らから意見が積極的にでるようになってきたので、人任せにせずに、指導者任せにせずに、自分たちで自分たちの環境を高めていこうとか、もっと良いチームにしていこうとかっていう意識が芽生えてきているという風に感じています。
――チームを引っ張る4年生は監督からみられてどんな学年だと思いますか
今年の4年生は個性が非常に強くて、いろんなタイプの人間がいますし、能力の高い選手も揃っていて、ともすればバラバラになってしまいがちなところは危惧していたんですけども、実際に最上級生になってからは思っていた以上に自分たちでまとまって、もっと厳しく、自分たちが伸びる環境をつくっていこうということでミーティングを重ねて、良い環境が徐々にですけども作れてきていると思います。
――3年生にも中心選手が多いと思いますが、3年生はどんな雰囲気の学年でしょうか
そうですね、3年生に関しては非常にまとまりのある学年で、公私において行動を共にする時間が長いっていうのを思うんですけども、非常に真面目で、しっかり者のが多くて、高校時代にキャプテンを務めていた選手が大半を占めているので、そういった意味では非常にまとまりのある学年だと思います。
――Aチームだけでなく、チーム全体の雰囲気はいかがですか
そうですね、昨年までですと部員が60人、70人いるんですけども、その全員がトップチームに入って関東リーグに出場してチームの勝利に貢献するっていう、そして日本一を自分の力で成し遂げるという意識ではなかったんですね、完全には。ただ、今年に関して言えば、一番下のチームにいる選手でもIリーグを目標にするんじゃなくて、関東リーグに出場して、自分の力でチームの勝利に貢献するんだという目的意識をほとんどの選手が持てるようになってきたので、そういった意味では誰しもが同じ目標にむかって戦えるようになってきているという変化は感じています。
――今回の早慶戦特集では、山中主将、柿沼副将、富山選手、近藤選手の4名にお話をうかがっていますが、監督からそれぞれの選手の印象をお聞かせいただければと思います。
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(上段)左:山中主将 右:柿沼副将 (下段)左:富山選手 右:近藤選手
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まず、山中主将はケガをされて試合にスタメン出場できない中でも、チームのためにということを一番に考えている主将だとお伺いしたんですが、監督は山中主将をどのように見られていますか
そうですね、まさにピッチの中でもピッチの外でも厳しい環境をつくっていこうと、自分たちで土壌を変えていこうという姿勢をチーム全体に自分の行動で、また自分の言葉で示してくれているので、本当に心強く思っています。
――その山中主将から柿沼副将はピッチでいつも引っ張っていこうと思ってくれていて頼れる存在だというお話がでましたが、柿沼副将に対する監督の印象は
山中がケガで出遅れたという関係で、ピッチの上でリーダーシップを強く発揮してくれていて、自分のやりたい事も彼の中にはあるとは思うんですけども、それを押し殺してでもチームが勝つためにやるべき事を示してくれているので、そういった部分で下級生の信頼もあついですし、厳しさをピッチの中でうえつけてくれていると思います。
――富山選手は、ア式蹴球部のエースストライカーだと思いますが、どんなところに期待されていますか
富山の良さは、どんな状況でも、いろんな選抜とかも選ばれてますけども、驕ることなく献身的にチームの勝利のためにトレーニングからゲームでも戦力を尽くせる選手なので、そういった部分がこれから先も成長できる大きな要素だと思っています。
――近藤選手は1年生ながらもスタメンを勝ちとられていますが、近藤選手の強みは
彼は非常にクレバーな選手で、攻守において相手に先んじて、予測をして動けるというのが彼の強みであるので、更にそこに磨きをかけて早稲田を代表する選手、そして大学サッカーを牽引するような存在に成長していって欲しいなと思っています。
――ここからは今季のチームの戦いぶりについて振り返って頂きたいのですが、第8節まで終了した現時点での感想は(※取材を行ったのは6月23日)
途中経過なので、選手も認識してますけども、まだ何も成し遂げていないわけで、最終的にア式蹴球部は頂点に立たなければ評価はされませんし、応援してくださるみなさんに喜んで頂くことにはつながらないので、いまは1位にいますけども、勝ち続けていかないと最終的に頂点に立てないので、そこは慢心することなく自分たちの強みを出し続けていきたいと思っています。
――昨年の早慶戦特集インタビュのー際に「トレーニング=ゲーム」(トレーニングから部員全員が戦い抜いていくことが結果に繋がってくる)だとお話されていましたが、いま途中経過ではありますが、結果が出ている中で、良いトレーニングがつめていると感じますか
そうですね、その意識はやっぱり昨年1年間の経験を経て、チーム全体に浸透してきてると思いますし、試合になって特別何か作戦があるわけでもないので、トレーニングで積み上げてきている要素が発揮できれば勝利につながるし、トレーニングでやってきたことが欠けてしまえば勝つ事ができないし、というような認識には至っていると思います。
――具体的に手ごたえを感じる部分は
守備の意識がチーム全体で高めるということができているというところが一番大きなポイントだと思います。
――課題だと思うところは
まず、守備は良くなってきてはいるんですけど、まだところどころでやるべきことができていなかったり、そこが甘かったりっていうところにつながっているので、そこを突き詰めて、もっとボールを自分たち主導で奪えるチームという風にしていきたいと思います。リーグの中でもゴールを瀬戸際で守れるっていうチームはあるんですけど、能動的な守備でボールを奪って攻撃につなげるっていうチームは数少なくて、それが早稲田が筆頭になれればという風に考えています。
――早慶戦の事についてもお伺いしたいのですが、昨年、早慶戦を監督として戦われた感想は
そうですね、全く良さを出す事ができなかったという悔しさと申し訳なさでいっぱいでした。
――ご自身が学生時代だった時と監督として戦われた時と何か違う思いというものはありましたか
やっぱり、責任の重さは感じますし、いろいろな舞台裏であったり、応援してくださる方々の思いであったりというものを現役当時よりもすごく理解できるようになっていると思うので、そういった意味では責任重大だなという風に感じています。
――昨年の早慶戦前にどんな状況であっても「戦い抜く集団」の姿をみせたいとおしゃっていましたが、振り返ってみてそこは達成できたと思われていますか
学生はみんな100%の力を出してくれたと思うんですけど、リーグ戦から連戦で続いて、前期の終了近くで早慶戦っていうタイミングだったんですけれども、やはり体力的な面も含めてまだまだ足りなくて、去年の早慶戦では力を出せるっていうコンディションではなかったという思いがあります。
――今年度はまだリーグ戦で戦われていない慶應ですが、イメージは
戦う姿勢は非常に強く持ってすばらしいと思いますし、はやくボールを動かして積極的にゴールを目指してくるという攻撃的な非常にすばらしいチームだと感じています。
――過去2年勝利できずに、「今年こそ」はという想いも強いと思いますが、早稲田の勝利のために選手たちにはどんなプレーを期待したいですか
「トレーニング=ゲーム」なんで、普段通りに自分たちの積み重ねてきたベースをしっかりと表現して、その中で難しい状況もありますけど、我慢強く最後までやり続ける事ができればおのずと勝利は近づいてくると確信しています。
――たくさんの観客の方がいらっしゃると思いますが、その方たちにむけてメッセージをお願いします
今年こそは「WASWDA THE 1ST」っていう目標を達成できる集団に変化してきていますので、是非その変化してきている姿を見て頂いて、戦える集団であることは間違いありませんので、今年こそはチーム全体の力で勝利を掴みたいと思っています。
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以前、ご自身の学生時代の早慶戦について「なかなか勝ちきれない試合が多かった」とおしゃっていた古賀監督。監督として戻ってきた早慶戦で今年こそは勝利を掴みます!
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ひとつひとつの質問に言葉を選びながら丁寧に答えてくださった古賀監督。それにもかかわらず、「言葉がうまくまとまっていないので、編集をお願いしますね」とおっしゃる姿からは真面目なお人柄が伝わってきました。
古賀監督の下、部員ひとりひとりが自らで考え、「トレーニング=ゲーム」という意識を持って日々の練習から戦い抜いてきた早稲田大学ア式蹴球部。目前に迫った早慶戦では"普段通り"の力を発揮するのみです。
「WASEDA THE 1ST」――いざ、伝統の一戦へ!
関連URL
ア式蹴球部公式ホームページ
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