7月4日、異様な熱気に包まれた国立競技場。伝統の一戦、第63回早慶サッカー定期戦が行われた。 早稲田は2009年から屈辱の3連敗を喫している。もう負けることは許されない。「勝利」という栄光の2文字をもぎ取るために、3年間の思いを晴らすために、選手たちはホイッスルとともに走り出した。
早稲田のシステムは4−4−2。ゴールマウスを守るのは新守護神の松澤香輝(スポ2)。副将である菅井順平(スポ4)を直前の怪我で欠く中、DFは安定感のあるキャプテン畑尾大翔(スポ4)と長身の山地翔(政経4)がセンターを固め、両翼を新星の奥山政幸(スポ1)と不動の三竿雄斗(スポ3)が担った。MFはチーム随一の俊足近藤貴司(教2)、2年生のホープ近藤洋史(スポ2)そして最後の早慶戦となる野村良平(スポ4)、島田譲(スポ4)が早稲田の攻守のバランスをとる。FWは公式戦全試合先発出場の榎本大希(スポ3)とニューヒーロー上形洋介(スポ2)で慶応のゴールを狙った。
前半は試合開始の合図とともに取っては取り返すという両校の激しい攻防が繰り広げられた。あたりの強いプレーも多く見られ、まさに誇りをかけた戦いにふさわしいものとなる。慶応の裏をかき、技術で攻めるサッカーに対して、早稲田は前線における守備から攻撃につなげる全員攻守で応戦した。 そんな一進一退が続く中、前半24分、早稲田に最初のチャンスが訪れる。野村の左からのコーナーに近藤洋が頭で合わせる。惜しくも枠の上だったが、それから早稲田にリズムが生まれ始めた。そして32分、三竿の左のクロスから上形のヘディングシュートが見事決まり、遂に待望の先制点を得る。それから4分後の36分、近藤貴が「自分の持ち味でもあるスピードを生かした突破でチャンスを作りたい」と言うように得意の絶妙なアシストから駆けだした榎本へのパスに慶応はゴールエリア内でのファールでしか止められず、早稲田はPKを得る。しかもそのプレーで慶応の長尾はレッドカードで一発退場。早稲田にとっては数的有利な展開となる。PKを蹴るのは野村。相手の意表を突いたチップキックで2点目を追加。この時キーパーは全く反応できず、頭脳プレーを見せつけた。この後も再三のシュートを放ち、早稲田ペースで前半を終える。
後半はハーフタイム中、監督に「相手が減ったことで自分達の運動量が減ったら絶対勝てない」と言われたように早稲田は攻撃の手をゆるめない。しかし、前半とはうって変わって落ち着いてパスを回してゴールを狙うシーンが増える。58分に先制点を決めた上形からエースストライカー富山貴光(スポ4)に交代。そして「流れを作るためにも積極的にゴールを狙ってチャンスメークしたい」という近藤洋のミドルシュートも光った。しかし畑尾が「お互い賭けてるものがあると再認識した」と言うようにこれは早慶戦、簡単には勝たせてくれない。再三のシュートを打ちこまれ終盤につれてひやりとさせる場面が目立つようになる。最後まで油断を許さず、ロスタイムには早稲田が慶応にFKを与え、慶応の山浦が放ったボールは選手の頭をとらえた。だが、ここは主将畑尾を中心に意地を見せ、全員守備で無失点で危機を乗り切った。
試合終了。ピッチの上には早稲田イレブンの歓喜の輪があった。現役選手の中で唯一過去3年間出場しながらも、苦杯をなめ続けた主将畑尾は4年目の初勝利を喜びつつ、「今までこの土俵を作り上げてくれた先輩達に感謝したい」と話し、この勝利が卒業した選手達にも捧げられたものだと感じられた。
しかし早稲田ア式蹴球部はまだまだ戦いの途中。今週末からは総理大臣杯が始まる。榎本は「今日は喜んでもいいと思うんですけど、すぐに切り替えてまず次の1戦勝てるように」と話し、故障明けで今日ゴールを奪えなかった富山も「しっかりコンディションを整えてチームが勝てるように、自分も点を決めたい」と力強く話した。チームは「7冠」というさらなる高みへもう走り始めている。
関連URL
早大ア式蹴球部公式サイト
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