昨年度の早慶定期戦で逆転負けを喫した早稲田大学ア式蹴球部。
古賀聡監督は、試合後のロッカールームで「インカレの決勝でまた国立に戻ってこよう」と伝えたそうです。
しかし、昨年度早稲田は惜しくもインカレ出場を逃し、大観衆とともに国立で勝利の喜びを分かち合う約束は果たせませんでした。
その悔しさを胸にア式が再び国立に戻る日―、それが第63回早慶定期戦です。
古賀監督に今季のチームついて、そして目前に迫った早慶定期戦について語って頂きました。
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古賀聡監督プロフィール
早稲田大学教育学部 平成4年卒 2008年-09年 鹿島アントラーズユース監督
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――今季リーグ前半戦を終えての感想を聞かせてください。
7勝1分3敗で3位という結果でした。上位チームとの直接対決において、個の力で上回ることは出来ませんでした。チームとしても「ボールを奪う」という強みと「早さを出してゴールを奪う」という強みを出しきれませんでした。 まだまだ自分達は頂点を取るには力が足りないというのが現段階での認識です。
――去年から能動的な守備でボールを奪うという戦術でしたが、今季も?
そうですね、攻撃から守備への切り替えの早さをベースに前線から積極的に相手にプレッシャーをかけ、相手陣でボールを奪い、相手が整う前にゴールへ迫るという戦い方は継続して磨きをかけています。
――そういったところが上位のチームと戦うときにうまく出せなかった?
その強みを試合の中で出せていない訳ではないですが、90分間途切らさずにコンスタントに出し続けるということが出来ませんでした。
――前半戦連敗ということはありませんでしたが、気持ちの切り替えが出来ているということでしょうか?
他のどこよりも今年関東リーグのタイトルを取るという強い思いをチーム全体で持っています。そのためにシーズン序盤から1戦1戦を優勝のかかったシーズン最後の戦いととらえて闘っています。その思いの強さが粘り強い闘いぶりにつながっていると思います。たとえ1点先行されても、慌てずに自分たちの戦い方をぶれずに貫き通せば追いつき、逆転できるという自信がついてきました。
――畑尾(大翔、スポ4)主将であったり富山(貴光、スポ4)選手であったり主力の選手がチームを離れるという事態が起きましたが、そういった時のチームへの影響は?
主力の欠場という事態がありましたが、代わりに入った田中進之介(スポ2)や上形(洋介、スポ2)がゴールを奪い、チームの勝利に大きく貢献してくれました。日頃から自分が関東リーグに出て活躍してチームを勝利に導くという思いで準備し続けていたことが活躍につながったと思っています。
――昨年は惜しくもインカレ出場ができませんでしたが、新チームが始動する時、何が足りなかったという認識だったのでしょうか?
何が足りないというところでは、自分が持っている既成概念の中でしか物事を考えられていなかったことです。そこを打ち破って、自分の限界をどんどん伸ばしていかないと個人としても伸びないし、チームとしても成長していかないので、合宿では「打破」というテーマを掲げて個々に新たな価値観への挑戦を要求してきました。
――メンタル面をまずは指導されたということでしょうか?
そうですね、まずは、自分の考え方のところでこれまでクラブや高校で培ってきたものはそれとして素晴らしいものですが、そこにとらわれすぎている部分もあったので、新たな価値観をどんどん付け加えていくことの必要性を感じました。また、フィジカルの部分でも頭の中で自分の限界を決めてしまって、自分の持っている身体能力を出し切れていない状況がありました。心理的な限界を打ち破りさえすれば身体はもっともっと動くということを実感していく必要性も感じました。
プレーの面でもあと半歩、あと一歩早く寄せてボール奪おうとすれば、今まで奪えなかったのが、行ってみたら奪えたという気づきにつながると思います。そういったところをまず変えていこうという風にはチームで考えていました。
――現在は、選手のみなさんが変化されてきている実感はありますか?
多くの選手が春の合宿で、もう一歩寄せてみて「もっと行ける」という実感であったり、体力的なトレーニングももっと限界まで追い込んでいけるんだという感覚を持つことができたと思います。まだまだこれからプレーの強度を高められるんだという基準を感じ取ることができたので、それが今の基準、新たな基準になってきていると感じています。
――技術的な面ではどのようなところに重点を置いてトレーニング行っているのでしょうか?
今年は特に攻撃の部分ではプレーのスピードを上げるというとところを大切にしています。オフの段階、ボールの移動中に、自分の目で見て情報を集めてより早く的確な判断をしていくことです。自分たちの強みである早さを出すためにも、ボールの移動中に相手の変化を観て空いたスペースに先手を取って入っていくことは日々のトレーニングの中で習慣化しているところです。
――昨年、今の4年生の代はまじめでしっかり者が多いとおっしゃっていましたが、メンタルや技術的な面の取り組みを、4年生を中心に体現しているのですか?
そうですね、主将畑尾の強いリーダーシップのもと、副将菅井(順平、スポ4)がアラートな空気を作り出しています。またグラウンドマネージャーという立場で島田(譲、スポ4)がコーチと選手のパイプ役になり、チームの強みを率先して体現する役割を担っています。山地(翔、政経4)も新人監督としてピッチ内外で下級生の模範となる姿を見せています。野村(良平、スポ4)、富山も試合に出ている4年生として自分自身の色で下級生に刺激を与えています。下級生も4年生について行くだけではなくて、自分達から自発的に早稲田らしさを体現していこうという風潮が、チームに根付いてきていると感じます。
――ここからは早慶定期戦についてお伺いしたいのですが、今季リーグ前半戦ではすでに慶應と対戦し、勝利をおさめました。今季の慶應のチームの印象は?
しっかりディフェンスラインからボールを動かして、ボールを大事にしながら組み立ててくるというチームだと思いますし、個々の技術はしっかりしていますし、要所に能力の高い選手がいますので、タイプとしては早稲田と対照的かもしれないですが、レベルの高いチームだと思います。
――昨年の慶應との違いは何か感じましたか?
昨年は両サイドバックに能力の高い選手がいたので、サイドから積極的に上がってくるという形であったと思うんですが、今年はそれにプラスして中盤や前線で仕掛けてくるというスタイルに変わってきていると思います。
――その慶應スタイルに対してリーグ戦で勝利したことで、早稲田もこういう戦い方をすれば勝てるというような手ごたえはあったのでしょうか?
慶應に限らず早稲田はいつも自分達の強みである、前線から積極的に相手にプレッシャーをかけてボールを奪って相手が整う前にフィニッシュに持ち込むこと、相手が整っていても深さや広がりを取るようなアクション、パスをシグナルに相手が動いて変化したスペースを逃さずに使って攻めていくということをどの相手にも変らずにやっています。毎試合、相手によって特別に変えるということはないので、自分たちの強みをコンスタントに出し続けられればどこと対戦しても勝利はつかみ取れると確信しています。
――リーグ前半戦での対慶應戦の勝利後、選手の皆さんの様子はいかがでしたか?
特に4年生に関しては入学してからリーグ戦も定期戦も勝てていませんでしたが、前期のリーグ戦を勝てたことでひとつ胸をなでおろしたという部分もありますし、まだまだ借りは返せていないということから早慶定期戦、後期リーグ戦でも勝ち続けると誓いを新たにした部分もあったと思います。
――慶應に対してみえてきた課題もあったのでしょうか?
しっかりとビルドアップしてきますし、長短のパスを織り交ぜて攻撃を組み立ててくるので、その出所に対してプレッシャーをかけ続けられるかというところが勝負ではないかと思っています。
――今の選手のみなさんは監督から見てどのように映っていますか?
今年に関しては早慶戦に限らず、学生自身で「7冠奪取」という目標を掲げています。そのうちの一つが早慶戦というわけですが、前期の関東リーグがあり、そして早慶戦があり、リザーブのJr.リーグ、BチームのIリーグもあり、早慶戦のすぐ後にも総理大臣杯の本戦があるということで切れ目無くタイトルのかかったゲームが続いています。緊張感を持続しながら、全てのタイトルを取るという思いを強くしていく一方で、支援してくださる方々のためにも勝たなければならないというプレッシャーと戦っている状況です。
――緊張感のあるピリピリとした雰囲気なのか、緊張感がありながら明るくという雰囲気なのか、どちらでしょうか?
アミノバイタルカップで優勝を果たすことができました。リーグ戦もまだまだですけれども優勝が狙える位置にいます。全てのタイトルの可能性を十二分に残しているという部分では、気力に満ち溢れています。タイトルを絶対つかみ取るというような緊張感と少しずつついてきた自信との両面が現われているような雰囲気ですね。
――選手のみなさんは良い心理状態だというように監督の目には映っているでしょうか?
そうですね、そういう緊張感を持ち、プレッシャーや責任を背負って戦えるのが早稲田の伝統であり、早稲田ならではの良さであると思っているので今の状況は決して悪くないと思います。
――監督ご自身は、就任3年目の早慶定期戦を目前に控えたいまのお気持ちはいかがでしょうか?
早稲田の強みを90分間絶え間なく出し続けることができれば、自ずと勝利はつかみ取れると確信していますし、1年の中でア式を支援してくださる方、応援してくださる方が最も多く集まってくださる日なので、その方々と共に勝利の喜びを分かち合い、感謝の気持ちを表せるように戦っていきたいと考えています。
――最後に、ファンのみなさんにメッセージをお願いします!
早稲田らしくどこよりも真面目にひたむきに、上手くはなくとも泥臭く、力強く勝利を勝ち取りに行きますのでご声援の程よろしくお願い致します。
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「最後にガッツポーズの写真を撮らせて下さい」というリクエストに快く応じてくださいました!
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90分間自分たちの強みを出し続けること―、それが勝利への絶対条件のようです。
3年連続で敗戦を喫してきた早慶定期戦ながらも、古賀監督のもと「打破」というテーマを掲げ、またひとつパワーアップした早稲田大学ア式蹴球部が熱い90分間を魅せてくれるはずです!
関連URL
ア式蹴球部公式ホームページ
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