順大・今井正人(現・トヨタ自動車九州)、東洋大・柏原竜二(現・富士通)、そして我らが早大・山本修平(スポ2)。この3人に共通するのは、5区山登りのスペシャリストであるということだ。毎年さまざまなドラマを生む箱根駅伝だが、その中でも私たちを魅了してやまない箱根の山。標高差は800メートル以上とどの区間とも比べ物にならない過酷さが待ち構え、選手の走力とともに精神力が試される。
今回、そんな箱根の山に私たちもおさんぽと称して登ってみた。以下はWasedaWillWinによる4時間半のレポートである。
<10:20 小田原中継所>
メガネスーパーの看板に目が引かれる。私たちはこの先に地獄が待ち受けようとは知らず、意気揚々とスタートした。一直線に続く道は湯本まで続き、風が吹き抜ける。
この後、あまりにも風が強かったため、早くも心が折れて箱根湯本までバス移動。選手はこの中を走り抜けるのだから、「すごい!」の一言である。
<10:50 箱根湯本駅>
ここから本格的な山の傾斜が始まる。箱根の観戦スポットの中でも1、2を争う賑わいを見せる。飲食店や土産店が立ち並び、観光ももちろん可能だ。
その中で選手に間近で応援したいなら、商店街を抜けて函嶺洞門の手前にある橋での観戦をおすすめする。小さな橋だが、ここは毎年混雑も少ないため選手への応援に熱を入れたい場合に最適だろう。
<11:50 ヘアピンカーブ>
かの有名なヘアピンカーブ。1時間歩き続けて無口になっていた私たちはこの登場に沸いた。実際に走ってみると思いの外カーブはきつくはなかった。しかし、走っている側からすればコースの形状以上に距離感をつかむポイントとなり、気持ちの切り替えには有効だろう。
<12:10 宮ノ下>
宮ノ下は大きな温泉地となっているため、沿道からの声援が盛り上がる地点だ。ホテルや飲食店も多いため、気軽に観戦が楽しめる。中でも最近ベーカリーの激戦区となっており、おいしいパン屋が多く存在するため、観戦と一緒に自分好みの店を見つけるのも楽しいかもしれない。私たちもここでお昼休憩。温泉シチューパンが美味しかった。疲れた体を癒す特効薬。しかし、ここで6キロ。まだまだ道のりが長いと思うと気が重い…
ここから急傾斜が続く。選手にとってこの宮ノ下までをいかに余裕をもって登ってきているかが5区を走りきる勝負の分かれ目。ここでオーバーペースで登ってきてしまった選手は後半の伸びが期待できない可能性が高い。
<13:13 踏切>
宮ノ下と小涌谷の間の踏切は今となっては選手が優先だが、昔は電車優先で選手が鉢合せしたときは電車通過のために待った時間をタイムラグとして後で計算をするという方法を取っていた。しかし、走りのリズムを止められてしまった選手にとってみればタイムは変わらないとしても致命的。本当に恐ろしいものである。
<13:35 小涌園>
ここを抜けるといよいよ人里がなくなってさびしくなる。箱根湯本から10キロ登り続け、選手にも疲労が見えるポイントだ。ここでは唯一と言っていいかもしれない平地となるので選手がリズムを取り直す重要なポイントでもある。
私たちは最後のコンビニを名残惜しく後にした。横を通り過ぎるバスの誘惑がこのあたりからつきまとうようになる…。
そして、ひたすら登り続け…
<14:40 箱根最高点>
ようやく到着。地獄から解放されて達成感に満ち溢れた私たち。もうこの時間は日が出ていても寒いが、そんなのおかまいなし。とにかく感動につつまれた。あとは下るだけとなる。ここからは再びバスに乗車。優雅にゴールへ向かう。
対称的なのが選手。ここからの下りの走りはタイムに関わる。登りの走法を一気に下りの走法へチェンジして足にブレーキをかけずに駆け下りていくことができた選手が栄光のゴールに早くたどり着く選手なのである。ゴールまであと3キロ! <15:00 往路ゴール>
感動のゴール。皆さんもぜひこの感動を1月2日に目に焼き付けてほしい。
結果的におさんぽのつもりがしっかり登山となってしまった。画面ではわからなかったが、選手たちは歩くだけでも大変な急な坂に挑んでいるということを肌で感じた4時間半となった。いよいよ2週間後と迫り、緊張感が高まってきた箱根駅伝。本番当日、趣向を変え、選手の気持ちになって駅伝を観戦してみるのも新鮮で面白いかもしれない。
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