今年就任4年目を迎えた古賀聡監督。昨年はインカレ優勝も果たし、現在前期を終えて関東リーグ戦2位。現在のチームの様子、チームの目指すところを詳細にお聞きしました!
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古賀聡監督プロフィール
早稲田大学教育学部 平成4年卒 2008年-09年 鹿島アントラーズユース監督
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――ではまずリーグ戦前半を振り返っていただけますか?
ほぼ全ての試合が拮抗した、難しい展開のゲームでした。その中で真面目に我慢強く、粘り強く戦い抜いて、これまでであれば引き分けで終わっていた試合を勝ち点3に結びつけたり、これまでであれば負けていた試合を引き分けに持ち込んだりすることができました。そうした粘り強さは過去3年間にはなかったチームの強みであると思っています。
――その粘り強さが出た要因は?
普段のトレーニングから4年生を中心に厳しい環境を自分達で作り上げていて、昨年まで以上に真面目にひたむきに、厳しく激しく、という取り組みを積み重ねてきたからこそ、自分達を信じてぶれずに最後まであきらめずに戦いきれているのだと思います。
――選手の方が自主的に作り上げているのでしょうか?
そうですね、これまでは許されてきたような甘さや緩さを選手たち自身がなくそうとしています。さらに自分自身だけでなく、仲間にまで踏み込んで変えさせていこうというところが強まってきているので、そうした点で昨年までよりも更に厳しい環境が出来て、リーグ戦の勝負強さにつながっていると思います。
――2位という順位は?
最低限の結果だと思います。リーグ戦中に選手間からも、スタッフからも伝えて共有していたのは「負けたら終わり」というがけっぷちの緊張感をもって戦い続けることでした。リーグ戦は22試合ありますが、1位の専修大学が開幕5連勝を果たし、ほとんど負けないというような状況の中で、これ以上勝ち点を離されたら自分達が最も大きな目標として掲げた17年ぶりの関東リーグ制覇が潰えるというプレッシャーを1試合1試合にかけて戦うことができました。そうした意味で首位の専修大学と勝ち点2差で前半戦9試合を終えられたというのは目標達成のためには最低限の結果であると捉えています。
――2位は追われる立場ではないですか?
いえ、追われる立場だということは恐らく誰も感じていません。元々ある個の力からすれば他の大学の方が個の技量としては優れているチームがほとんどですので、他とは違う自分達の強みに磨きをかけてその部分で他のチームを圧倒していくことしか勝つ術はないと思います。追われるというよりも自分達に対しての危機感のほうが強いと思います。
――ではアミノバイタルカップの7位という結果は?
昨年優勝して初代王者に輝いた大会ですし、今年は自分達だけが連覇を目指して戦えるということで、総理大臣杯の出場権獲得ではなく、アミノバイタルカップの連覇ということを使命として掲げて臨みました。しかし、準々決勝の流通経済大学戦では、自分達の強みを1試合通して出し続けることが出来ずに敗戦を喫しました。先行されて追いつき、また先行されて追いつき、なんとか土壇場で追いついていくという形になってしまったのが、まだまだ自分達の甘さであると思っています。
――追いついて、追いついて、というところでは粘り強さが見えたのではないですか?
2点ビハインドの状況から追いつけたということ、また延長戦でも最後の最後で追いついてPKに持ち込んだというところの粘り強さとしては、その局面に立たされた時のエネルギーの強さという点で良い闘いぶりだと思います。けれどもその前にやはり2点を先行されるような試合展開になってしまったことが問題です。早稲田は多く得点を取れるチームではないので、相手を最少失点に抑えて、1点、2点の得点で勝っていく戦いをしなければならないと思います。
――5位、6位決定戦(対法政)は最後の最後、ロスタイムに逆転されてしまいましたが
その試合も最後に逆転を許しましたが、立ち上がりに2点先行されて、前半全く自分達の良さであるボールを奪いに行くということが出来ませんでした。先行されて尻に火がついた状況の中で、前半終了間際に追いついて、後半逆転してという試合だったので、まずそういう試合展開になったことを、また前半に自分達の強みを出せなかったこと、そちらの方がやっぱり、最後に逆転されたということよりも、問題視しなければいけないと思います。
――その一方慶應は2位という結果を収めましたね
慶應も2回戦3回戦で本当に粘り強く戦って、終了間際に追いつき、PKに持ち込んで勝利を収めるという戦いをしてきていますので、前期のリーグ戦で戦った時よりもチームとして勝利に執着する姿勢や、個としてハードワークする姿勢が高まってきているなと感じています。
――就任4年目で早稲田のサッカーは浸透してきたと思いますか?
早稲田としては「ボールを奪い、ゴールを奪う」というサッカーの本質をどこよりも追求していこうとしています。 今はボールをポゼッションしながら相手を崩すチャンスをうかがうチームが主流になっていますが、ボールを動かすことよりも先にゴールを奪うことをもっと追求していきたいし、構えて自陣に守るのではなく、前から積極的にプレッシャーをかけて、相手陣でボールを奪ってゴールにつなげるというサッカーの本質を追求し続けていきたい。それに関しては皆も理解していますし、意識はすごく高まっているので目指すべきゴールに向けて誰一人漏れることなく、さらに高め続けていきたいと思います。
――シンプルに、積極的にという形でしょうか。
能動的にボールを奪う、貪欲にゴールを奪うという、シンプルですけど一番大切な幹となる部分を本当に重視して、大切に育てていきたいと思います。
――今のチームの調子は?
アミノバイタルカップが終わって、前期が終了したと捉えています。次の8月の総理大臣杯、9月の関東リーグ後期開幕に向けて、2ヶ月のオフシーズンといいますか、鍛錬期に入ったと考えています。これまでの試合期のインシーズンよりも選手間でもコーチングスタッフからも選手一人一人により強いストレスやプレッシャーをかけた中で、精神的なたくましさや個の領域を広げる挑戦を要求しています。したがって、雰囲気が良いというよりはかなりもがき苦しみながら、自分自身を高めようとしていると思います。
――DFライン等下級生の活躍が目立っていますね。
そうですね。金澤(拓真、スポ2)や八角(大智、スポ2)は昨年ほとんど公式戦に出てない中で、自分の持ち味を出してチームに貢献していると思います。やはり「トレーニング=ゲーム」で、日頃からのトレーニングの中で他の選手よりも自分に厳しいプレッシャーをかけて全力で取り組んでいますし、本当に強い思いを持ってトレーニングから臨んでいます。そうした積み重ねが、ゲームで少々ミスをしたとしても、そこで心が折れることなく、更にそれを取り返してやろうというような強いエネルギーを出せる精神的なたくましさにつながっているのだと思います。
――では、早稲田の今の課題は?
とにかく目指しているのは「どのチームよりも早く強くゴールを奪う」ということですし、「どのチームよりもボールを奪う」ということです。その自分達の強みをいかにこれからの時間の中で圧倒的な他チームとの違いにしていけるかが勝負だと思っています。
アミノバイタルカップでは試合の前半に出せなかったことで苦戦を強いられたので、その強みを最初のキックオフの瞬間から試合終了の笛が鳴るところまで出し続けられるか、出し尽くせるかというところが課題だと思います。
――では少し時間を遡って、昨年はインカレ優勝、日本一になりましたね。
最後の最後で最上級生である4年生が本来の力といいますか、成長してきた姿を見せて、下級生を引っ張って優勝に導いたというシーズンでした。ただそこまでは一番の目標にしていたリーグ戦においても力を出し切れなかったというシーズンだったと思います。
――昨年の主将、畑尾大翔選手(平25スポ卒)試合に出られず苦しんでいました。そこで最後に優勝できたというのは
苦しめば苦しんだだけ、もがけばもがいただけ、最後に成長するんだということを改めて実感させられましたね。畑尾に限らず、富山(貴光、H25卒)も怪我があり、リーグ戦中は思うように活躍することができませんでした。絶対的エースとして自分のゴールでチームを勝利に導かなければならないという重圧の中、本当につらい日々を過ごしていたと思います。その中で心を折らずに歯を食いしばって、強い気持ちで努力を積み重ねたからこそ、最後、大学選手権決勝の舞台で決勝点をたたき出すというような力を出せたのだと思います。
――では今年の主将、中田航平選手(スポ4)はどんな方ですか?
中田に関してはこれまでの3年間、4年生になるまでの取り組みで、既にリーダーシップを発揮していましたし、ピッチ内、ピッチ外に関わらずチームの中心として、仲間の信頼を勝ち得てきた選手なので4年生になっても更にそこを強く発揮してチームを良い方向に導いてくれていると思います。
――中田選手は完璧と選手の方は言われていましたが
どうですかね(笑)でも完璧ということはないと思います。彼はアミノバイタルカップでこそ先発出場することがありましたが、リーグ戦では先発出場を一度も果たせていません。試合に先発出場できない中で主将を務めるというところで、前半戦は非常に苦しい思いをしたと思います。それでもその現実から目を背けることなく、チームの勝利のために今出来ることを自分で作り出し、なおかつ自分の弱みを克服しようと自分を打破し続けるための挑戦をしています。周りに対しても自分が嫌われ役になることを厭わずに、厳しい働きかけを仲間の内面にまで踏み込んでし続けています。そういうところで仲間からの信頼を得ているのではないでしょうか。
――皆さんが「チームのため」という思いを持っていますね
やはり大きいのは支えてくださる方々の力の大きさといいますか、その思いの強さを感じられているというのが大きいと思いますね。その支えてくださる方々、おそらく大学サッカー界では早稲田が一番多くの方に支えられていますし、応援してくださっています。そうした意味で支えられているものとしての責任というか、覚悟というのが部員一人一人に根付いてきたのではないかと思います。
――その点に関して古賀監督がチームに何か言うときは?
それは常々。全てのア式蹴球部の活動は支えてくださる様々な立場の方のご尽力によって成り立っています。素晴らしいグラウンドがあり、夜でも練習ができる照明があり、新しいボールが沢山あるのも当たり前ではありません。支えてくださる方がおられるからこそ今の素晴らしい環境があるのです。その点はスタッフから話をしなくとも、選手間の中でそういう話が毎回試合前のミーティングでも出てきますし、感謝の思いとそのご支援に応える責任感はどんどん強くなっているのだと思います。
――では三竿雄斗副将(スポ4)はどんな方ですか?
下級生の頃は少しやんちゃなところと言いますか、精神的な甘さが見え隠れする部分もありましたが、上級生になり、普段の取り組みから常に100%以上の全力で、最初のダッシュ一本から最後のゲームまでやりきる習慣を身につけました。また勝負に執着する姿勢、1プレーへのこだわりというのを常にこのチームでは最もトレーニングから強く示してくれていますし、試合でもそういう最後の最後の勝負強さや粘り強さをもたらしてくれている存在ですね。
――三竿選手が練習にいないと雰囲気が変わると選手の方はおっしゃっていました。今チームの練習から抜けることも多いと思いますが
それもすごく良い影響で、三竿がいないという危機感を他の選手が持ってトレーニングに臨んでいるので、三竿だったらここでもっと厳しい言葉を投げかけていたよな、このトレーニングの勝負にもっと執着していたよなということに至っているので、その分を自分達がやらなきゃいけないという認識に他の選手がなっているので、良い影響をもたらしてくれていると思います。
――主将等を決める時に古賀監督は意見を出したりするのですか?
基本的には最上級生である4年生がミーティングをして誰を主将にする、副将にする、グランドマネージャーにする、新人監督にするということを、決めて上げてきてもらったものをスタッフで承認をするという形です。若干「ここはこうしたほうが良いのでは」という話はしますが、基本的には学生が決めたものを尊重して決定します。
――4年間つき合っていると、誰が主将になるだろうというのは分かるものですか?
今年の4年生に関しては中田が間違いなく主将になるというのは1年生の時から決まっていたような学年だとは思いますね。リーダーシップが取れる圧倒的な存在ではありましたからね。
――では早慶戦について。慶應に前期リーグ戦で2-1で勝利しましたね。
昨年からもそうですけど、個々の技術が高い選手がいますし、個で突破出来る選手もいるので、攻撃的な素晴らしいチームだと思います。
――昨シーズンとの違いは?
リーグ戦に関しては戦い方がこれまでと全く違う戦い方をしてきたので、そこについては驚かされました。早稲田のセンターバックの身長が低いということもあり、シンプルにロングボールを、長身のFWへ集めてセカンドボールを中盤の選手が狙うという、これまでにないシンプルな戦い方をしてきたのでそこは予想外でした。
――古賀監督も早慶定期戦は意識されますか?
そうですね、もちろん伝統の一戦ですし、1万人以上の早慶を支えてくださる方々が会場に足を運んでくださる素晴らしい舞台です。支えてくださる方の期待に応えられるような試合を作り上げなければいけないという大きな責任感を持っています。
――最後の国立ですが
大学サッカーでは、早慶定期戦と大学選手権決勝だけが国立競技場で試合をすることを許されています。まさに歴史と伝統ある早慶両校だけに許された特別な場所での、最後の闘いになります。是が非でも勝利をつかみ取り、支えてくださる方々と共に歓喜の瞬間を迎えたいと思います。
リーグ戦を2位という好位置につけていても、少しも安心や、喜びという様子はありませんでした。目指すは関東リーグ制覇。まずは早慶戦に勝利し、総理大臣杯、後期リーグ戦にはずみをつけたいところです!
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