九鬼の大躍進が止まらない。
大会1日目、強い雨が降りつける中での予選。1組目の飯塚(中大)や2組目の江里口(大阪ガス)らが余裕を持った走りで順当に決勝進出を決めていく。
九鬼(スポ2)は最終3組に登場。スタートダッシュを成功させると、ぐいぐい加速し、中盤から猛追してきた慶大・山縣との一騎打ちに。接戦の末、0.01秒の僅差で予選の「早慶対決」を制したのは山縣だった。
九鬼は2着でのゴールとなったが、記録は10秒23。4月下旬に出した自己ベストを0.02秒更新、そして五輪B標準突破のおまけつきだ。記録を確認した九鬼の顔には満面の笑みがあふれた。
翌日の決勝。大会の花形種目を観ようと、競技場内に観衆の熱気が高まる。
九鬼の右レーンには江里口がスタンバイ。錚々たる8人のメンバーが立ち並んだ。
そしてスタートのピストルが鳴る。
この音にいち早く反応したのは江里口でも山縣でもない、エンジのユニフォームの九鬼だった。伸びのある走りを披露し、他選手を圧倒する。
「九鬼が優勝するかもしれない」―前評判とは異なる戦線に誰もが目を見張った。レースの行方は江里口と九鬼との争いに。両者互いに一歩も譲らぬまま、ほぼ同時にゴールへと跳び込んだ。
電光掲示板に表示された優勝者は「5レーン」、江里口だった。
九鬼は0.01秒差の2位。優勝は惜しくも叶わなかったが派手なガッツポーズを決め、喜びを大爆発させた。
日本選手権初出場の九鬼にとって、当初の目標は「決勝に残ること」だった。それが終わってみれば、国内トップの選手が集う中で堂々の2位。自身の成長は勿論だが、何よりも九鬼が出場するとあり、大好きな地元・和歌山の友達や恩師など様々な人が駆けつけてきてくれたことが彼の背中を大きく押したに違いない。
織田記念、そして今大会と大舞台のここ大一番でしっかりと決め、ますます頭角を現してきた九鬼。男子100m界に新たな旋風を巻き起こす存在となりそうだ。
【男子100m結果】
九鬼巧(スポ2)
(予選3組) 10秒23(+1.3) 2着☆自己新記録、五輪B標準突破
(決勝) 10秒30 2位
関連URL
早稲田大学競走部公式サイト
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