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2015年度駅伝特集「エンジ魂」【主務・副務対談】 主務:山下尋矢×副務:江口卓弥

前のページより)


 
チームにとってなくてはならない存在のお二人です   
 

――理想の主務像を掲げていたりしましたか
山下:言葉で言うのは難しいけど、自分の上の三人の先輩の中でも、卯木さんみたいな主務という。でもある特定の個人じゃなくて、それぞれの先輩の良い所を吸収して自分の良い所と合体させてっていう、寄せ集めが理想像で…なかなか言葉で言うっていうのは難しいです、俺それで就活だめだったけど(苦笑)。
江口:福島さんと卯木さんの存在が大きくて、僕がマネージャーになった時も何度か会ったんですけど、その時も話しを聞いててすごいなというのがあって。僕がマネージャーになった時に女マネの方に言われたのが、「三冠した年とその次の年の卯木さんと福島さんの部員日記を読んでくれ」と。そこに男子マネージャーがどうしていくべきかがあるからと言われましたね。漠然と上にいるのが福島さんと卯木さんで、自分もそこを目指してはいるんですけど、自分だけのものを挙げさせて頂くならば、自分の感情を表に出さないと言いますか、例えば、疲れている時にグラウンドで疲れている雰囲気を出さないとか、選手に冷たくしたらだめですし、周りの人にそういう影響を与えないっていうのは心がけているかなと思います。

――福島さんと卯木さんから言われて、今に活かされている言葉はありますか
山下:福島さんなんだけど、今福島さんは商社で働いてて、すごい仕事も大変だと思うんですけど、他のマネージャーの先輩方に主務の仕事と社会人の今とではどっちが大変か聞くと、たいていの人が主務やってた時の方が大変だって言うんです。けど、福島さんはそれなりに主務の方が全然楽だったって言ってて。例えば、自転車で言ったら、一回ペダル踏むとそのまま進むけど、自分でペダル踏んで力入れるとこと、楽してペダル漕がずに進める所はそういう風に進まないといけないというのは言われて、結構自分はずっとペダル漕ぎ続けちゃうような人間だったから、それはすごい印象に残ってます。
江口:僕は前に福島さんと卯木さんと飲んだ時に、僕がガンガンお酒飲めるタイプではないんですけど、「ここで男子マネージャーやりたいんだったら酒を飲め!」と言われて(笑)。最初は笑っちゃう感じだったんですけど、お酒を飲むことで話していく中で見えるのは相手の本音なんで、その本音を上手く引き出せる人間になるには、それの一部のきっかけとして、やっぱりお酒が飲めることは必要なんだぞと。
山下:大事だね(笑)。
江口: お酒の席で仲良くなった人っていうのたぶんその後も付き合いやすいと思うので、そういう関係を築いていくのもすべきことなので。お酒を飲んでから始まる本音の人間関係って言うんですかね、そういう話しをよくされます。

――飲めるようになったのですか
江口:そんなには(笑)。でも自分のキャパが分かるようになりました。どこまで飲んだらダメになるのか、それを超える時にはすぐに準備が出来るようにと言いますか、ちょっとへぼいですけど(笑)。

――江口さんへの質問ですが、山下さんはどんな主務さんですか。
江口: どんな…?
山下:なんだろね(笑)。
江口:人付き合いが上手いですよね。後輩とかと関わるのは多分苦手だと思うんですけど、横のつながりとか他大のマネージャーさんと仲いいとか、普段しょっちゅう会わない人との関わりを大事にしているんじゃないかなと思います。そのおかげで、人の力を使うのがすごい上手いなと思います。早大学競走部で見ると、全部自分の中で解決しようとして辛そうだなと思うこともあって、それでもやっぱり相楽さんに言われたこととかはちゃんと形にぱっとしてくるので、それはすごいなと思います。

――今度は山下さんへ質問ですが、江口さんに言いたいことはありますか。
山下: 言いたいこと…。でもさっきのお酒を飲むことと、自分よりはるかに江口の方が人を使うのは結構上手いと思います。これから結構こいつ自身の就活が入ってきたり、立場が上になって色々大変になると思うんだけど、そこで自分がやんなきゃやんなきゃと思って、自分の中に溜め込んでキャパオーバーになってっていうのは自分の失敗としてあったんで、今もそれ出来てるけど、これからも人の力をもらいながらやってくれたらなと思います。
江口:女マネの方の力も借りながらということですね。
山下:そうそう、やってくれるから。


――マネージャーとして大切にしていることは
山下:選手とかの言葉には気を使っているつもりです。例えば、平和真(スポ3)とか高田とか、チームを引っ張っていくような人間って、個人的な意見なんですけど、同期とか後輩とかにはあんまり自分の弱みとか悩みを立場的に言えない選手が多くて。そうなった時に求めてくるのが、平は先輩がいるからその人とか、高田は先輩がいないからマネージャーである僕らのとこに持って来ることが多くて。監督やコーチの前では、大丈夫ですって言ってても、内心実はそうではなかったりすることも少なからずあるんで。毎日一緒にいれば、調子いい時はこういう言葉発するけど、そうでない時はこういう言葉使ったりするなというのはなんとなく分かったりするので、そういうのを見極めて、監督・コーチにスパイじゃないですけど、彼は不安要素がありそうですよという話は伝えて、そこから解決策考えて…。言葉は大事なんじゃないかなと思います。
江口:気付くのは大事なのかなと思います。
山下: そうそう、それ。
江口:自分はこうなんだとか、今ちょっと調子が悪いとか、伝えてくれる選手だったらいいんですけど、そうじゃない選手もいるわけで。そういった選手の変化に事前に気付いて、こちらから声かけるのが理想だけど、自分がその選手の変化に対する知識が0の状態で、もし相手が助けを求めてきた時に対応することと、自分が10分かってなくても3でも気にしてあげて分かってたら、それで返せるものが違うじゃないですか、。そういう変化に気付くっていうのは出来たらいいなと思っていて、それは試合の時もそうだと思うんですけど、選手が試合の前アップを終わって、招集所に行くときとか、一番最後まで近くにいれるのは付き添いをしてる僕たちなんで、そういう時に何が出来るかっていったら、相手の変化に気付かないと出来ないので。大事な局面で何かが出来るように、準備しておくのが大事なのではないかなと思いました。

――お二人から見てこの一年で成長した選手はいますか
江口:僕は柄本勲明(スポ3)です。去年の箱根のエントリーメンバーにも入ってて、すごい調子が良かったんですけど、(今年の)4月5月ぐらいから調子を崩し始めて、夏合宿も全然走れなくてポイント練習にも着いていけなくてっていうのが続いてて。本人は周りの人に助けてもらったっては言うんですけど、そこから這い上がってきて、今蓋開けてみたら、エントリーメンバーにも入ってて練習でも前にいて、成長というか乗り越えることが出来た選手なのかなと思います。前野陽光(スポ4)さんも3年生の頭ぐらいからずっと同じ所ばっか怪我してて、大丈夫かなこの人と思ってたんですけど、急に怪我をしなくなって、何かに気付いたか何かを超えたんだと思うんですけど、今は前線で戦ってます。
山下:三井泰樹(人科4)と柄本と前野は今年頑張ったかなと思うんだけど、それ以外でも、今年はBチームの選手達の底上げが夏以降にすごいあって。今年に入って初めて今集中練習を一緒にやってて、想像してたよりはるかに力付いてて、まとまって練習出来てるので、下の子達の底上げがチームの上昇気流につながってるんじゃないかなと思います。
江口:高田さんが30秒縮めるのは難しくても、下の層の人達が縮めるのは出来るんですよ。その30秒が縮まってきたのかなと思います。相楽さんもこの先良い意味で悩むと思います。
山下:分かんないよね、相当接戦。上の人達もその危機感は感じてて、良い傾向だと思うし、新チームになってからも面白いんじゃないかなと思います。来年OBになる身としては…ちょっと早いか(笑)。とりあえず今年ね!



 
チームを支え続けたお二人の熱い思いが伝わります   
 

――この一年を通して印象に残ってることは
山下: 去年と今年の全日本が印象に残ってます。去年は7位で、どん底の状態で、たぶん大学入って一番やばいなと感じて。今年は4位でいいとは言えないんだけど、1区の信一郎が決めてくれて。個人的なんだけど、前日に信一郎の付き添いするって決まっておききながら、小さいことでけんかじゃないけど言い争いになって。やばいなと思って、でもその後お互い俺が悪かったとか話して、次の日にああして走ってくれたんで、結構グッときましたね。もちろん、箱根に向けても良いステップになったと思います。
江口:僕も去年の全日本なんですけど、井戸浩貴(商3)の付き添いをしてて、あんまり最初からいい流れではなくて…。そのままズルズルと後半の区間に入ってきたんですけど、井戸の前の区間が光延誠(スポ2)で、光延が襷もって走ってきて、その光延の顔を見た時に、どうしていいか分からないような顔してラストスパートしてきたんです。ヘロヘロの状態で泣きそうな顔で帰ってきて、これがどん底の状態のチームなんだなというか、去年1年生だった光延にそれをさせてしまったチームがあって、それがあったからこその今なんじゃないかなと思います。光延もそれ経験してから、今までは何となく走って走れてきた自分と、ならなきゃいけない自分ていうのが、あいつはあの時に見えたんですよ。そこからあいつは変わって、自分に足りない距離踏むとか、どうにかしようと思ってて、その変化が最初に見えたのが、去年の全日本だったと思います。僕自身も変化を促せるようになりたいと思いましたね。去年は光延に声をかけてやることが出来なかったので…。

――今年の出雲、全日本を振り返って
山下:自信は今すごくあります。出雲は6位で全然ダメだし、全日本も優勝目指してたのに4位で、しかも最後3秒差で(駒沢に)負けて、数字だけ見たらそんなにいいとは思えないんだけど、明らかに右肩上がりでチームはきててます。特に全日本に関しては1区秒差で入ってきて、3位以上のポジションで走るっていうのはしばらく早稲田になかったので、もちろん走ったメンバーもそうだし、周りで見てた周りの部員も、前で走るってこういうことなんだなというのは感じれたと思うんで、箱根に向けては大きな収穫だったなと思います。
江口:出雲と全日本は箱根で勝つための布石にはなったんじゃないかなと思います。僕の主観なんですけど、このチームの核になる選手が出雲と全日本で結構重要な経験を踏んできたかなと思ってて。柳(利幸=教4)さんなんかは、出雲走って全日本はメンバーから外れてっていうので、関係者から見たら残念だなと思うんですけど、出雲を走り終わったとき柳さんは区間賞の走りをしたと思ってて、でも実際はそうではなくて、そこに自分の現実的な走りと走らなければいけない記録の差があって。これが明らかに見えたのが出雲駅伝で、全日本で外れたっていうのがさらにそれに拍車をかけるというか、柳さんがきっと箱根で成功するための糧になるんじゃないかなと感じていて…。それは他の選手も一緒で 、全日本は1区の信一郎さんがしっかり走ってくれて、優勝争いに絡めるレースだったと思うんですけど、その流れをつなげなかったていうのも平の中にあると思うんですよ。それが今後の平にどうつながるかっていうのは明白なことだと思うんで、そういった経験を出雲と全日本で核になる選手がそれぞれ出来たんじゃないかなと思います。

――出雲や全日本の後にチームで話し合いのようなことはしたのですか。
山下: しましたね。学年関係なくみんなで話し合いして、今まではみんな表に出てなかったですけど、発言したり行動で示したり、態度を見てれば分かりました。

――箱根駅伝を目前にして、今のチームの雰囲気は
山下:(例年と)一番違うのが、今故障者が一人もいないことです。毎年ポイント練習とか朝の集団走とか足が痛くてやれない選手がいて、それに比べて今はいないんですよ。一人でも故障者がいるだけでちょっとマイナスな雰囲気出ちゃうんで、それがないっていうのはいいかなと思います。
江口:チームの輪から外れている人がいないですもんね。
山下:選手も選手でたぶん手応えを掴んでて、優勝狙うぞっていうのはオーラ的に溢れ出てるよね。
江口:去年も俺たち感じてましたよね(苦笑)。
山下:まあね。紙一重だからね。余裕こいてフワフワした気分でいるのと、自信持って臨むのって似たようで、そこの境を見極めるのが難しくて…。
江口:今のこの感覚が、夏合宿終わった後の出雲の前の感覚とどこまで一緒でどこが違うのかっていうのを見極めないといけないと思うんで、今年の箱根もああいう結果でしたけど、僕たちは勝つつもりで臨んでたので。感覚と現実の間には差があるので、何かアプローチかけていかなきゃなと思います。

――他大学にはない、早稲田の強みとは
山下:形的には、短距離と長距離が別れてて、今までは別々なところがあったんですけど、今年は高田とかは人を引きつける力が強くて、あいつが結構架け橋的な存在になっていました。 長距離が中距離とか短距離とかと一緒に補強したり、速い動きの練習に一緒に混ぜてやったり、逆に短距離の選手が長距離の選手とダウンとかジョグしたりとかっていう姿がグラウンドで見受けられる回数が増えてきて、そこは他大学にはなかなかないことなのかなと思います。違う視点から物事の捉え方とか価値観とかを共有してっていうところにつながると思うんで、そこで選手がきっといいものを得てるんじゃないかなと思います。
江口:少数精鋭とまでは言えるのか分からないですけど、他大と比べて部員数が少ないことに意味があるんじゃないかなと思ってて。精鋭とまでは言えないけど、雑草軍団とか東洋さんに使われてますけど、結構僕らもそうなんじゃないかなと感じてて、それは短距離も長距離も。決して陸上の結果だけで入ってきた子達ばかりじゃないんで、競技力が足りない子もいるんですけど、その子達がドロップアウトしないチームの雰囲気が一番の強みなんじゃないかなと思います。たぶんそういう子のほうが競技力が高い選手よりも意識は高いかもしれないし、そういう子に刺激を受けてもっとトレーニングしなきゃって考えて上にいく選手も事実いるんですよ。少数の粒の揃った選手がいることが強みなんじゃないかなと思います。

――箱根の重要区間は
山下:1、2、5区!!
江口:僕は4、7区ですね。誰も故障することもなく、今まで以上のことが出来てるので、区間配置とか重要区間で迷うっていうよりかは、誰が入って入らないかが内部にいる僕たちにも分からない、予想がつけられない状況です。

――箱根での目標は
山下:総合優勝です!!
江口:見たいですね!最後勝ちきるっていうのを見たいです。

――最後に、読者の方とファンの方にメッセージをお願いします。
山下:沿道の応援で自分の名前呼ばれたり早稲田の応援をされたりするだけでも、特に選手は気持ち変わってくると思うんで、出来れば沿道で声出して応援してもらえると嬉しいです!
江口:テレビや沿道で応援してくださる方がいるから頑張れるので、変わらない声援をいただきたいなと思います。あと、感覚と現実にはギャップがあるって言ったんですけど、色々なメディアから出されている前評判と現実にもギャップが絶対あると思うんで、頑張っているかは蓋を開けてみないと分からないですけど、早稲田のチームはきっと本当に頑張っていると思うし、僕と山下さんも本気なんで、前評判とかにとらわれずに、純粋な気持ちで見ていただいて、蓋を開けた時の結果を評価してほしいなと思います。

――ありがとうございました!

お二人の「熱い想い」のつまった対談、いかがでしたか?戦う意識を持ちながらサポートに徹し、 選手一人一人の変化に対する「気付き」を何よりも大事にしていることが、お二人の言葉から伝わってきました。そして、お二人の温かい人柄が選手達の心のよりどころになっているのではないかと感じました。来る箱根駅伝では、全員駅伝で蓋を開けた時の結果を期待するとともに、お二人の献身的なサポートにも注目です!  

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(TEXT=川口恵、PHOTO=松嶌萌)
 


 
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