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[馬術部] 「馬術部、マル見え」

長谷部悦郎主将インタビュー




 

馬を可憐に乗りこなしていました

――9月は連戦だと思いますが試合はどのように調整していくのですか?
 障害だったら競技場に連れていく前日にハードにやってしまうと競技会で馬も疲れてしまうので早い段階で障害の練習をしておいて輸送する前の日なんかは少し楽にしたりします。馬場もあんまり強い「はみ」でガチガチやってしまうと競技場で収まりがきかなくなってしまうので少し軽めにしたりだとか。やっぱり競技前にガッツリ練習をやるってことはないですね。その前までに本番に近い形で練習をやって、2,3日前になったら軽い練習で、輸送日を迎える感じです。

――食べ物や習慣で特別なことはするのですか?
 なんですかねー。餌とかは変えますかね。麦入れたりすると気合が入ったりするんですけど、いろいろ栄養が必要なんでその他にもふすまっていって小麦の皮を粉砕したようなものとかタンパク質を混ぜてあげてます。でも入れることでカリカリしちゃうような馬には抜いてあげたり工夫をしています。あとは競技場へ行ったらはみを強いものに変えたりしています。

――『はみ』とは
 口につけてひっぱって馬をコントロールするやつです。試合会場に行くと馬も気合い入って緊張しちゃったりするんで、はみを少し強めにしていつも通りの状態に近づけています。

――人間と同じで栄養素まで考えたりしているんですね。
 汗かくんで夏場は塩を多めにしたりだとかそういうことも気を付けてます。

――私のイメージだと馬=ニンジンが思い浮かびました(笑)
 ニンジンは主食じゃないですね(笑)ご褒美代わりにちょっと切ってあげたりだとかで普段あげているのは草を押し固めたキューブ(こぶしくらいの大きさ)でそれを水でふやかして、麦やわらを加えたりしてます。


――それぞれの担当馬があるそうですが、試合で使う馬ということですか
 いや、そういうわけではないんです。1頭1頭しっかり管理・ケアをしていかなければならないので責任を持たせるっていう意味で練習馬にも付けていたりしたいます。ただ、レギュラーには基本的にそういう風になっているんですけど、下級生に関してはあんまりなくて責任という面でという感じです。

――ちなみに長谷部さんの担当馬は稲帥ですが、どんな馬ですか?
 障害と総合をやっているんですけど、障害は本当に勇気のある馬でなにがあっても止まらないというか、そういった面で信頼できるいい馬ですね。ただ、人がケアしてあげないと落下が多い馬でそういうのは必要なんですけど、障害に向けて絶対跳んでくれるいい馬です。

――タフな馬なんですね。稲帥とのエピソードは
 総合なんですけどやっぱり総合力が求められる場面ではカリカリしてしまう馬なので馬場は苦手でいつもごまかしごまかしやっていて大変なんですけど、クロスカントリーなんかは林の中を馬と2人きりなのでそういうところではしっかり跳んでくれるのは頼りになるというか「できるな」と思っていますね。

――信頼関係は大事なんですね
 そう思いますね。勝手に信頼してるだけかもしれないんですけど「お願いだから跳んで」と(笑)

――いつから稲帥は担当されているんですか?
 今年からですね。それまでは別の馬の担当でした。

――乗り始めとか馬も分かるんですか
 どうですかね。でも、人がその馬1頭1頭の癖を、例えば左右いろいろ手前があるんですけど何周かすると反対に回っていますよね。そうすると片側が苦手とかバランスが悪いとかあって、ずっと馬術をやっていたやつらはすぐに見抜いてしまうんですけど、自分はそこまではできないんで聞きながらだったり、やっていくうちに少しずつつかんでいったりしています。

――他にも20頭馬がいますが、良い馬・手こずる馬などありますか?
 いい馬は今年入れた総合馬の稲隆なんですけど、この前五十嵐(裕哉、創理3)が全日本の総合で優勝したんですけど、OBさんの寄付金もあって新しく入れた馬です。あとは競馬上がりの若い馬を馬術用に少し調教して練習に使ったりだとか同じ馬といっても稲隆は海外で調教されてきた馬なんで馬術用として生産されたんですけどうち(早稲田)にいる若い馬の中だったらサラブレットです。

――サラブレットというと母馬や父馬が強い馬なんですか
 全然馬によっても違うんですけど血統があるっていうのはサラブレットで大事で、良い馬と良い馬を掛け合わせて新たに作ったりします。


――チームとしての馬術部は。年々部員も増えています
 雰囲気はもともと自由でかなり自分たちで決められる部活なんでそれを大事にしていきたいなと言うのがあります。その中でけじめや責任を持ってやっていかなければならないと思ってます。でもそれは部の伝統というか「自由の中でけじめを持つ」というのがいいところなのかなと思います。

――取材していても本当に仲がいいなと感じました
 あんまり上下関係もしっかりしているという感じではないので風通しがいいのかなと思っていますね。

――スポーツ科学部以外の選手も多いですね
 推薦枠を馬術部として持っていないので、そうするとやっぱり自力で入ってきた子を入れなきゃいけないですし、その中で馬術経験がある子がいればいいなという感じで。五十嵐とか子供のころからやっていて国体で優勝していても理工で自分で入ってきてます。でも逆に「可能性がある」という意味ではいいのかなといろんな学部のいろんな人がいろんな価値観で馬に触れられているのはいいのかなと。

――部活と学業の両立は大変じゃないですか
 僕は本当に勉強いい加減なんで4年間で卒業できればいいやと思ってるんですけど(笑)それぞれ自分たちで比重を分けて部活と両立できているんじゃないかなと思ってます、たぶん(笑)僕はほんとに4年間馬に比重を置いてやってきたんですけどそれぞれ自分のやりたいこととのバランスを考えられていると思います。

――馬にかける思いは常日頃から持ち続けているのですか
 それはそうだと思いますね。やっぱり生き物を扱っていく上ではなくてはならないものだと思います。

――今後も連戦ですね
 調子は関東の大会がよくなかったので、全日本ではそれを修正していかなければならないと思っています。なおかつ自分たち4年生はあと2,3か月で引退なので、その先もスムーズに次の代に移行してまたいい結果を残してほしいなという思いもあるので下級生にこれからもっと今すぐ競技会に出る子だけではなくて何年後かに出る子も伸びていってほしいなと思っています。

――具体的にどのようなところを気を付けますか
 部員が本当に多いので馬を用意してあげる、競技に出してあげるっていう部分を考えると練習をしなきゃいけないし、競技会に連れて行ってあげないといけないし、とやっぱり枠が少なくなってしまうので、その中で練習馬を充実させてあげなきゃいけないなと。あとは1回1回の練習で乗れる時間も限られているので、1回で吸収できるものを充実させてあげたいという風に思っています。

――最後に今後の目標を
 部としては、練習しているものを競技会で、まずは一番大きい全日本でレギュラー陣がいい結果を出さなければならないのが一つでいい結果を出し続けることが部としては大事かなと思います。あとは未経験者に経験させるために競技会に出している部分も他の競技会ではあるので、自分の目標や課題を持って取り組んでいってくれればいいかなと思います。個人的には全日本学生でまずは完走するということが一つ重要なことで、それと今までやってきたことの集大成として一つでも順位を上げられるように、少しでも団体のポイントを上げられるように頑張っていきたいなと思います。


 長谷部主将にお話を伺っていて「心の底から馬術を楽しんでいる」と感じられたことが印象的でした。残り2、3か月を最後まで馬とともに駆け抜ける姿を応援していきたいなと思います。第3回は早学戦観戦レポートです。


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(TEXT=西村侑美、PHOTO=福島瑠都)
 


 
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