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「監督論」

競走部 渡辺監督インタビュー

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――大学生を指導する難しさというのはありますか?
 一つ言えることは大学生って4年間で終わってしまうんですよ。これからっていう時なんですよね。逆に実業団というのは10年間くらい預かれるじゃないですか。そういう意味でもうちょっと時間がほしいなと思いますね。即戦力で入ってきた子はいいんですけど、やっと力をつけてきた子っていうのは3年目の夏合宿超えたくらいからがーってでてくるんですよ。その子達があと一年で終わっちゃうというのはもったいない気がしますね。そういう意味で4年間というというのは長いようで短いですね。

――監督自身の世代と今の世代の大学生の違いとは。
 今の子はお利口さんで何も悪いことはないんですけど、逆にそれが競技の向上に繋がってないと思いますね。可もなく不可もなくって子が多くて面白みに欠けますね。自分勝手ではないけど、もうちょっと目立ったり違うなっていう選手がいて欲しいですね。

――それはどういう理由からだと思いますか?
 育ちとかもあるんじゃないですかね。たとえば、“明日休みするから好きにしてもいいよ”って言ってもどこにもいかずにずっと部屋に閉じこもっているとかね。その辺僕は“けじめをつけて法を犯さなければ、発散をして戻ってきなさい”とは言ってますし、朝から晩まで厳しいことをやるわけですから絶対ストレスもたまるんですよ。今の子は発散の仕方がわからずに違う方向に行くこともあるので、それは心配ですね。

――技術面において指導法の変化というのはありますか?
 僕があまりこういうことを言うと怒られるかもしれないんですけど、昔の根性論であったりとかとにかく練習量を増やして水を飲まないでというようなやり方は古いんじゃないかと思っていますね。もうちょっと最先端な技術で練習量を少なくして内容を濃くしてやっていく時代なんじゃないかと感じてます。というのは、今の子は育ちがいいせいで、体も強くなくて骨も弱くて疲労骨折することが多いんですよ。昔のやり方だと故障者が8割9割になってしまってチーム自体がなりたたなくなってしまいますから。

――これまでで印象に残っている指導者はいますか?
 僕の場合はQちゃんの監督だった小出先生じゃないですかね。僕、市立船橋(高校)でちょうど入れ違いでリクルートに行ってしまったんですけど、練習場所はずっと一緒でよく声もかけてくれてもらいましたし、接点がすごいあったんですよ。僕の中でカリスマ監督と言えば小出義雄というのがありますね。

――どのような指導方法だったのですか?
 そうですね、あの人の場合は褒めて選手を育てるタイプでしたね。監督って口下手より口が上手い方が絶対にいいと思うんですよ。あと、明るくて、選手をその気にさせるのが本当に上手かったですね。

――指導する上で他の指導者を参考にすることはありますか?
 ありますね。だからと言って、人の真似で監督って出来ないと思うんですよ。いろいろな優秀な指導者、楽天の野村監督だったりとかあげればきりがないですけど、そういう名指導者のいいところを少しずつ参考にしたいとは思っていますね。

 

――渡辺監督自身の魅力をあげるとすると。
 チームが必ず壁にぶつかるときが良いときでも悪いときでも来るんですよ。そういうときに下を見ないで前を見て明るくっていうことが僕のモットーです。そういう雰囲気だったりとかマイナスのイメージを持っているときだと良い結果が出ないのでそれを少しでもプラスに方向付けてあげられればと思っています。

――実業団で活躍されていましたが、その経験を通して得たことというのは?
 実業団は大学生と違って給料貰うじゃないじゃないですか。故障した時とか壁にぶつかった時に外野の声が入ってきて給料ドロボーだなんて言われましたからね。その辺から変なプレッシャーがあっておかしくなっちゃいましたから。そういう意味では大学生の方が伸び伸びできるかなっていうのはありますよね。外野の声が入らないくらい図太くなればいいんですけど、僕はそういう性格じゃなかったんで実業団で苦労したっていうのはありますね。

――指導する上で特に大切にしていることはありますか?
 一人強い選手が出てきたりすると指導者がそうは思ってなくても、その強い選手に行きがちなんですよ。エースにほれないようにして平等に扱うようには意識しています。特に個人競技なので大きい試合があるとどうしてもそっちの方に行かないとってことがあるので、選手から見たらどう見えてるかはわからないですけど、みんな平等に10人選手がいたら1人の選手に対して10分の1と考えてます。

――指導の中でモットーとしていることは。
 もっと練習しろみたいな(笑)。そんなこと言ってる場合じゃない(笑)。さっき言ったように今の子ってものすごい故障が多いんですよ。なんか子どもみたいなこと言いますけど、今の子達って牛乳をまったく飲まないんですよ。たぶん腹壊すとかで家で親から飲まされていないんです。自分達の頃はってあんまり言いたくないんですけどそういう育ちってあるんですよ。骨も弱くてシンスプリントをやるやつが多いですし。やっぱりきれいなところに住んでいて冷暖房完備だとか時代が流れているというのは、それはそれでいいとは思うんですが、故障しやすい体な分、能力の高い子の集まりなので年間通じてコンスタントに練習すれば絶対強くなるっていう考えですね。だからといって練習量を急に増やすことはできないので、1週間なり1ヶ月に分散させてうまいことやらせていくって考えです。

――指導の魅力というのは。
 それは強くなるのがわかることですね。陸上の場合ってタイムに表れるじゃないですか。特に夏場越えて涼しくなった秋・冬っていうのは全く変わるんですよね、人が変わるくらいに。それは楽しいですね。8月9月って相当練習やらせてますから10月の涼しくなったくらいから化ける選手っていうのは何人もいるんですよ。

――最後に早稲田とはどのような存在でしょうか?
 僕自身が早稲田大学に育ててもらったっていうのがあるんで。早稲田大学があって箱根駅伝があって名前が売れていまの自分がいるので、自分の中では早稲田大学の監督をやっていることが生きがいですね。だから胸を張ってWを背負ってやっていると感じてます。選手も同じような気持ちでやってもらいたいと思いますし、Wのマークをつけて走るっていう誇りを持ってやってほしいですね。僕も卒業してよかったと思いますし、この大学以外だったら考えられないですね。それだけ早稲田大学っていうのは重みがあって特別なものですね。


 しっかりビジョンを持った監督。そのような印象を受けた。常に上を向いて前を向く。その姿勢こそがチームに安定した力を発揮させ早稲田を1歩ずつ成長させていくはずだ。125周年節目の年、箱根駅伝での早稲田の走りを期待したい。

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関連URL
早大競走部公式サイト

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(TEXT=村山裕太 、PHOTO=神崎風子
 


 
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