TEXT=棚田和晃
FWの力強さには脱帽。春先からウエイトアップ、パワーアップに取り組んだことが、ここまで結果が出るとは正直思わなかった。FW小型化の近年の流れを意識的に食い止めたことは今後にもつながってくると思う。途中からBK中心の攻撃スタイルに思い切って切り替え、見事な得点力を作り出したことも大いに評価できる。
では何が悪かったのか?
DF力には難があった。選手権でベスト4に残ったチームとの差はこの点。またシーズン前に一番心配していたのは公式戦経験があまりないHB団。来年4年になる田原、沼田、武川への期待は大きく、まずまずの結果を出したと思うが、昨年のレギュラーが抜けた穴を埋めきれたかというと疑問は残る。
いまさらながら(個人的願望)
山崎弘のSOが見たかった、大学時代にもう一度。
シーズン頭から山崎弘がSOとしてでも、FBとしてでもメンバーに入っていれば、また違った展開になっていたかもしれない。少なくとも帝京大には負けなかったと思う。
一言
シーズン終盤のメンバーを見ると、一年生の姿がない大田尾が山崎弘のかわりに早慶戦まではがんばってはいたが。昨年は山下、上村が不動のレギュラーをはっていた。学年など関係ないという意見もあるが、個人的には多少いい一年生が入っても簡単にはレギュラーを取らせてしまうようなチームでは底が浅く感じる。その点で今年は上級生選手が非常に頑張り、伝統校の懐の深さを感じた。
最も期待する選手
大幅に4年生が抜けるBKのキーマン・山下選手。WTB、CTBどちらでも十分に持ち味を発揮してくれるだろう。
課題
一気にスター選手が抜けてしまう来年は、その穴を埋めるのは相当苦しいと思う。もう一度組織的な戦い方を考えないと、個人の能力だけで穴を埋めるのは難しいと思う。誰が欠けても、誰が入っても同じ戦い方ができるのが理想である。
目標
対抗戦では来年残るメンバーの顔ぶれを見る限り、対抗戦では慶応が一番手だが、勝てない相手ではないというのは法政の試合をみれば分かったはず。まずは打倒慶応と対抗戦制覇でいいと思う。選手権に勝つ力がないわけではないと思うが。
ラグビー界へ
早明、または法政(選手権では頑張ったが)、近大、京産大など各リーグ2番手以降の大学がもっと頑張らないといけない。選手権は盛り上がっているが、そこに至る過程の各リーグで優勝争いの面白みがない。今年は特に波乱のないシーズンだった。人気底上げには各リーグでの熾烈な優勝争いが必須である。
もう一つ人気について
早明戦を見てからの疑問である。世界の主流というか、なかなかトライが生まれないラグビーが世界トップの試合では常識になっている。しかし、あの早明戦のようなノーガードの試合は見ている分には、はるかにロースコアでトライが取れないラグビーよりも盛り上がる。ただ早明戦のような試合運びでは強いチームには勝てない。ラグビーマニアはどう思うか分からないが、普段あまりラグビーを見ない人には早明戦のような試合は必要ではないか?
早明戦を見てからずいぶん経つがいまだ結論は出ず。
一言(個人的にちょっと思うこと)
高校ラグビーを見ていて思ったこと。完璧に負けていてもたった一つのトライを取って、大歓声を勝ち取る高校がある。あれも一つの感動である。われらが早稲田大学にはそれが許されない。(駅伝には最近前述のような傾向もあるが)。
結局のところ早稲田が感動を呼ぶのはとにもかくにも勝利を収めた場面である。そんな伝統のプライドが強く見える環境で戦える早稲田の選手たちをうらやましくも思うし、もう少しわれわれ応援する側が、前述の「一つのトライに対する感動」のような見方もできないものかな、とも感じる今日この頃である。
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TEXT=たなだかずあき
早稲田大学法学部4年 早稲田スポーツ新聞会、昨年のラグビー蹴球部担当チーフ。カメラマンとしても活躍。漕艇部担当チーフとしても活動した。無類の女子プロレス好き。
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