TEXT=鈴木雄大
「今年の早稲田はフォワードが強い」
今年の早稲田の前評判はこれに尽きた。伝統的に重戦車と称されてきた明治に比べ、早稲田のFWは比較的非力とされてきただけに、この評価は心強かった。しかもBK陣は「学生最強タレント集団」が揃っているとくれば、今年は正月を越せなかった前シーズンの雪辱を晴すであろう、ファンならずともそう考えたに違いない。
しかし、その期待はシーズン前半にしてあっさりつまづく。前半戦のヤマ、帝京戦でまさかの敗退。熾烈なレギュラー争いを勝ってきたSO武川のケガという不安があったにせよ、敗因はそれだけではあるまい。強化されたがゆえにFWにこだわりすぎた、そこに帝京の素晴らしいディフェンスが待っていた。まさに完敗であった。
チームの修正が図られた対抗戦後半だが、早慶戦で10-31と敗れ、慶應に2年連続の対抗戦優勝をさらわれてしまった。しかし、ここまで全ての試合を危なげなく勝ってきた慶應の継続ラクビーを苦しめたディフェンスは評価できた。勝負所のノックオンで点差がつく結果となったが、それほど実力差はないという印象であり、ミスの修正次第では続く早明戦、大学選手権への希望も消えていなかった。
そして早明戦。
17点差の劇的な逆転勝利ではあったものの、ここは苦言を呈さねばならないだろう。この試合から復帰したFB山崎弘をはじめ、爆発的なBKの攻撃力は素晴らしかったが、早慶戦まで見られたディフェンスの強さは見られず、また前半にはノックオンのミスも多かった。最後はフィットネスで逆転に成功したものの、あと5分明治のスタミナが続いていれば試合はどうなっていたことか。早明戦の勝利で意気はあがったものの、選手権に向けて残った課題は多かった。
選手権初戦はその不安をそのまま露呈した形となる。前半の大量リードに守られた形で、62-32と京産大に解消したものの、後半だけのスコアを見れば24-26。ディフェンスの不安とミスの多さはそのまま2回戦の関東学院戦で力の差となり、2年連続で正月を越すことはできなかった。
今シーズンの成績は世界的な潮流としての継続ラグビーの戦術云々以前に、ミスの多さと組織的ディフェンスの弱体化があらわれた結果だと自分は見る。その証拠と言うのも何であるが、選手権準決勝では法政の素晴らしいディフェンスが優勝候補筆頭の慶應の継続ラグビーを封じ込めた。来シーズンの向けての課題はここにあるだろう。
しかし、ツボにはまった時のBK陣の攻撃力、そして強化されたフォワードの頑張りは目を見張るものがあった。早明戦では多くの早稲田ファンが「フォワードで行け!」と叫び、明治ファンが「バックスだバックス〜」と叫ぶという状況さえ生まれた。
来シーズンに向けて
来シーズンは4年生の卒業でかなりの選手が抜けてしまうが、FWではオーストラリア、ニュージーランドにそれぞれ留学が決まった上村、高森を、BKでは1年生ながらシーズン中盤までレギュラーとしてFBをつとめた大田尾を注目したい。
とにもかくにも、来シーズンの早稲田の活躍を期待してこの文章を締めたいと思う。
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TEXT=すずきゆうた
早稲田大学人間科学部3年。ワセダウィルウィン4月発行予定のマガジン「Spart!(仮)」の編集長。ラグビーの観戦歴は5年ほど。早稲田入学前はOBである父親の影響から関東学院大のファンで、史上初のリーグ戦グループ同士の決勝戦を密かにほくそえんでいる。
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