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最後の取材−横山を追ってきた3年間。
 最後の取材で聞いた、横山とサッカー、横山のサッカー

   TEXT=小森加織(早稲田スポーツ新聞会)

2001年3月10日、Jリーグが開幕した。誕生から9年目になる今年、ひとりの早大生がその舞台に挑戦する。入学から3年間、その男を追った記者が、早稲田での思い出、プロ入りの決意を直撃。インタビューのその日、去る1月16日は、奇しくも2002年日韓W杯開幕500日前であった…。

鮮烈だった全国デビュー

 新世紀到来に沸いた世間も、普段の落ち着きを取り戻し始めた1月中旬、Jリーグ2部 大宮アルディージャの2001年度新入団選手で、早稲田大学3学年在学中でもある横山聡と、数ヶ月ぶりに顔を合わせた。見慣れているエンジのユニフォーム姿ではなく、 普段着のジャージ姿だ。そちらの方が普通であるはずだが、試合しか見ていない私には新鮮に映った。と同時に、もう2度と、エンジを身にまとった横山を見ることはないのだという事実を、改めて認識した。
 横山とは1年の頃から顔見知りだが、試合後の軽い立ち話が常だったため、テーブルにつき、面と向かって話をするのは初めてだった。そして彼とサッカー、彼のサッカーについてじっくり話を聞くことができた。
 私が横山と出会ったのは1998年8月、全国の強豪が夏の覇を競う総理大臣杯、その1回戦が終了したばかりのスタジアムであった。決勝点を挙げた横山の見せたすがすがしい笑顔が、とても印象的だった。
 この夏のワセダ、そして横山は快進撃を続けた。抜けるような青空と灼熱の太陽の下、ルーキー横山はゴールを重ね、得点王に輝くとともにチームを日本一に導いた。風のように駆け抜けた頂点への10日間、エンジの背番号9が見せた躍動は、人々の脳裏に鮮烈に焼きつけられた。
 
サッカーとの出会い、そして成長の日々



横山聡(よこやま・さとし)
人間科学部新4年。私立多々良学園高校(山口県)卒。
ア式蹴球部FWとして98、99年関東大学リーグ2部得点王。2001年J2大宮アルディージャ入団。
「プレステとかのサッカーゲームに自分が実名で出てきたら、 こんな嬉しいことないですね(笑)」。



 インタビュー当日、横山は大宮への引越しを2日後に控えていた。3年間を走り続けた東伏見のグラウンドと、そのすぐ脇にある紺碧寮は、いわば横山のホームタウンであった。思い出の品の梱包に追われていたであろう時期に、横山は時間を割いてくれた。そして、自身とサッカーとの出会から話は始まった。
 兄が所属していたチームの監督に誘われ、小学2年のときにサッカーを始めた。最初の転機は山口県では敵なしの強豪、多々良園高校に進学したことだろう。高いレベルで揉まれ、また3年連続で全国高校サッカー選手権に出場す
る、という経験を積むこともできた。自らが主将を務めた高校3年時には、誰もが認める県内No1FWに成長していた。
 進路決定に際し、横山は高卒プロの道を断念し、大学進学を選択した。学校選びの条件は関東。「関東は強い」というイメージがあった横山、もちろん大学4年間を、プロ入りへのプロセスと考え、強い関東で自分を鍛えようとワセダを選んだ。入学前年の1997年、ワセダが関東大学リーグ2部へ陥落したことは知っていたが、それほど気にはならなかった。1部と2部にそれほど差はないと考え、1998年4月、横山は関東の名門、早稲田大学に進学した。
 
 大学入学後、横山はすぐに頭角を表し、春から夏かけてレギュラーに定着した。8月の総理大臣杯に続き、9月から始まった関東大学リーグ戦2部においても得点王に輝き、さらに新人王をも獲得した。この大学サッカー1年目のシーズンで、横山は自分の‘武器,を見つけた。ワセダのチームカラーでもある泥臭さ――。クリー ンシュートでなくてもいい。体全体を投げ出してでも、何とかボールをネットに押し込む。強引にやるのが自分のサッカーだと自覚した。
 出来すぎとも言えるデビューシーズンを終え、迎えた2年目の1999年シーズン。横山は見つけた自分のサッカーに磨きをかけるべく、ゴール前での動きの質にこだわった。どう動けばDFをかわしてボールを受けられるのか、どう動くことが得点につながるのか。2年目のジンクスを囁く周囲の声を背に受けながら、それでも負けまいと歯を食いしばった。そして、それは秋の関東大学リーグ戦2部で実を結び、2年連続となる得点王に輝いた。「プロに入りたい」。夢の実現に向け、横山は着実に階段を上っていた。そして3年目、横山にもワセダにも訪れる試練を、この時誰が予想できたであろうか。
→続く

 




 

TEXT=こもり・かおり
日本女子大学新4年・早稲田スポーツ新聞会でア式蹴球部を担当し、3年間、横山番の記者として活躍。





 
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