みなさん、こんにちは!今回の早稲田スポーツ探訪も前回の野球部百周年記念フォーラムに続いて私、長友がお送りします。今回観戦に行ったのは新宿コマ劇場前です。なぜ競技場ではなく、コマ劇前なのでしょう。それは読んでいただいてのお楽しみ、ということで早速本題に入りたいと思います。
コマ劇前。早大生なら誰でも一度は聞いたことがあると思いますが、一般の人にとってはなかなか聞き慣れない言葉ではないでしょうか。実は、春秋に行なわれる六大学野球・早慶戦が終わった後、例年慶應が夜の銀座に向かうのと同じくして、早大生は新宿・歌舞伎町に繰り出すのです。。歌舞伎町には新宿コマ劇場があり、そのコマ劇場前の広場で早大生は歌い、踊り、騒ぐのが恒例になっているのです。そのコマ劇場前広場には、丸い球の形をしたオブジェがあります。オブジェをめぐって繰り広げられる『戦い』。そのオブジェに登って号令を掛けることを“天下を取る”と呼び、皆酔いに任せ、必死になってオブジェ争奪戦を行うわけです。
早慶戦は銀座・新宿と学生の集う場所は別れるのですが、問題はラグビー早明戦です。早明戦の場合、学生は皆新宿で酔いつぶれます。早慶戦後は歌舞伎町に早大生しかいないので、“天下取り”は早大生同士で行われるわけですが、早明戦後は明大生も歌舞伎町に集まるため、早明入り乱れての『戦い』となります。まさに『もう一つの早明戦』。しかし、それはラグビー早明戦とは全く異質のものなのです。
早明戦を観に国立競技場に足を運ぶファンの比率は、毎年明治ファンの方が断然多いことが通例です。今年はスタンドを埋めたのは7:3ぐらいで明治が多かったように思いますが、早稲田ラグビーが盛り上がっていたせいもあり、これでも例年よりは比較的早稲田率が多かったとのことです。試合の方は、終始明治ペースながらも、最終的には早稲田の奇跡的とも言える大逆転勝利。しかも目の前で対抗戦完全優勝を決められ、明治ファンはそれはそれは歯がゆい思いをしたことでしょう。その苛立ちをどこにぶつけるのか。今年のコマ劇前はまさに思い切り憂さを晴らす場としては最適だったのではないでしょうか。ここからはコマ劇前に場所を移して、その模様を中継風にお伝えします。
夕方6時前。早明戦が終わり、神宮外苑から歩いて新宿に向かい、『戦い』前の状況をと思い、まずはコマ劇前に足を運びました。すると、そこにはすでに明治ファンの姿が。早明戦で毎年ゴール裏を陣取って応援することで有名な、メイジカラーの囚人服を着た一団がオブジェの上や周りで「メイジ!メイジ!」と旗を振りながらアピール。早くも『戦い』の様相を呈していたのでした。
私が再びコマ劇前に戻ったのは8時半過ぎ。そこはもう明治勢の独壇場でした。大勢の人が押し合いへし合いの中、応援旗を手にメイジコール。早明戦の応援でも見せた「前へ!前へ!」や「押せ!押せ!」などという重戦車攻撃が得意の明治らしいコール。上の写真を見ていただいても分かるように、ラグビーとは違い早稲田の付け入る隙はないといった感じでした。
そんな中でも早稲田勢の頑張りもありました。終始明治勢がオブジェを占拠する中、急に一人の学生が“登頂”。黒い上着を脱ぐと、そこにはエンジに早稲田と入ったTシャツが!その瞬間歓声が上がり、その歓声とともに明治勢によって下に降ろされる。これもコマ劇前の醍醐味といったところでしょうか。
時刻は9時過ぎ。コマ劇前のボルテージが上がるとともに、腕に『明大』の腕章を付けた明大職員の方たちが竹ぼうき等を片手に大勢集まってきました。騒ぎの様子をじっと見守ること1時間余り。10時過ぎになり、職員たちはほうきで掃除を始め、オブジェ付近を占拠していた明大生や早大生たちをあたかもゴミを払うかのように一掃しはじめました。それから数分後。あっという間にオブジェ周りにいた学生たちは消え、明治勢がいなくなった広場では早大生が見知らぬ人どうし肩を組み合い、校歌や応援歌を熱唱。勝利の余韻に浸るのでありました。
早明戦直前に発行された大学広報紙にも、コマ劇前の騒ぎについて『夜の歌舞伎町も、「志高低頭」の早稲田魂で!』と注意を促していました。早大生には明治勢ほど激しい学生は少なかったように思いますが、一部には掃除をしてる明大職員の周りを囲んで校歌を歌い出し、酔った勢いで一升瓶を地面に投げつけたりと、マナーの悪さを露呈していた学生もいて、いただけない部分がありましたね。ラグビー観戦をして、その後仲間で勝利の美酒を味わうことは確かに大きな楽しみであり、良き伝統です。しかしそれと同時に、最低限のマナーを守ることも大事なのではないでしょうか。今年も相当な盛り上がりを見せた早明戦、そしてコマ劇前。良かれ悪かれ、コマ劇前の歴史はこれからも続いていくことは間違いないでしょう。
コマ劇については、近日中に特集を公開する予定です。こちらの方も乞うご期待ください。では、今回の探訪はこのあたりで。
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