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    石倉弘士(バレーボール部 新人賞受賞)
TEXT=神原一光

 

華々しいデビューの裏側

バレーボール部の石倉弘士(人1)は物凄いルーキーだ。今春行われた関東大学2部リーグで、入学早々サーブ賞と新人賞のタイトルを獲得するという鮮烈なデビューを飾ったのだ。その活躍もあって部は1部昇格も決めた。一躍チームの主軸となった石倉は、186センチというバレーボール選手としては決して恵まれた体格ではないが、垂直飛び105センチという持ち前の「バネ」でコートを飛び回る。

高校時代、名のある強豪校に在籍していた訳ではなかった。チームは「全国に出てもすぐ負ける(春の全国高校バレーは2回戦で敗退)」程だったが、自身は日本高校選抜選手に選出され、その年の高校最優秀選手(MVP)に選ばれるという輝かしい経験を積むことができた。そして、進学の時を迎えた。

現在、学生バレーボール界に君臨するのは筑波大学。当然、高校MVPが大学一のチームに進むことを誰も疑わない。しかし、石倉は筑波ではなく、2部に降格した早稲田大学を敢えて選択した。「筑波はデカいヤツしか取らない。それに”個人の能力”で戦っている感じがした」。日本一のチームをバッサリと切り落とすその言葉の裏には、石倉の確固たるバレー哲学がある。「僕は、バレーはやっぱり6人でやる、その一体感が大切だと思う」その”一体感”が早稲田にあった。また「”勝ちたい”という執念の中にも、”力まず、深く考えない”」という早稲田の雰囲気も石倉を惹き付けた。

気持ちのいいプレー

石倉のプレーは、気持ちがいい。サーブは鮮やかなループを描くの対し、スパイクは直線的に突き刺さっていく。そのフォームにも思わず見とれてしまう。「サーブは、試合の流れを大きく左右する。だからこそ果敢に打ち込んでいきたい」決まれば最高だが、ミスをすればペースを崩しかねないサーブ。そんな表裏一体のショットにも、石倉は動じない。ミスなど微塵も考えない。どんな時も攻めていく、その気持ちがあるから攻めていける。サーブとスパイク、このショットで自分のリズムをきっちりと作っていける。それがチームのリズムにもなる。「スパイクを叩き込んだ時の気持ちは、もう”最高”の一言です。快感かも知れない(笑)」

アスリートは、スポーツを”fun”でなく”enjoy”すべきだ。そんな言葉を聞いたことがある。双方とも「楽しむ」という意味であるが、前者は「おもしろみ、ふざけ、愉快」とするのに対し、後者は「満喫する、十分に満足するほど味わう」と捉える。つまり、funが楽しみを”与えられるもの”とするのに対し、enjoyは楽しみを”得ようとする”。アスリートなら、楽しみを勝ち取ろうと自分のベストプレーをして満足感を味わい、そして試合に勝利しようとする。このことこそが、心の底からスポーツを楽しむことなのではないか。

大舞台になればなるほど燃える!

石倉弘士(いしくら・ひろし)
人間科学部スポーツ科学科1年。
1982年5月2日生まれ。安来高(島根県)卒。186センチ/340センチ(最高到達点)
ポジションはスーパーエース。

 

攻撃の早さが伝統の早稲田に、得意のサーブとスパイクで打ち解けていった石倉は「技術面でも精神面でもチームから学ぶことが多い」という。技術面では「レシーブ」だ。今春のリーグでレシーブ賞を受賞した、主将福田誉(人4)と吉岡祐輔(人4)の両エース、同リベロ賞受賞の副将碓井寿文(人4)のサーブレシーブ陣は、関東屈指のサーブレシーブ成功率を誇る。「みんなうまい。特に上級生の方なんてすごい。僕がスパイク全力で打っても返してきますもん(笑)それに、僕はあまりレシーブが得意ではないので勉強になる」レシーブがうまい先輩達のおかげで、得意のスパイクも苦手なレシーブも強化できる。

精神面では「自主性」と「上下関係」だ。専属コーチのいないチームに「学生だけで頑張っていることにはじめは不安はあったが、自分達で考えることにやりがいがあるし、上下関係も厳しいので社会勉強にもなる」と心も強くなってきた。

石倉は、自分を「大舞台になればなるほど燃えるタイプ」と言い切る。1部昇格後初の公式戦は、チームが2年前に優勝した東日本インカレだ。28日から行われるこの大会で、1部校は初めて”都の西北”の大物ルーキーを目の当たりにするはずだ。

練習開始の集合で部員全員がひとつの輪になるバレーボール部。互いが小指を絡め合う、その中に”挑戦者”石倉弘士もいる。


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