1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 　 駒苫 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 早実 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1
	全国高校野球選手権決勝 早実×駒大苫小牧 8月20日(日) 甲子園球場

　その日、優勝校の校歌が甲子園に鳴り響くことはなかった。第８８回全国高校野球選手権大会の決勝は、史上２校目の３連覇がかかる駒大苫小牧（南北海道）と２７回目出場で初優勝を目指す早稲田実業（西東京）が延長１５回１−１でともに譲らず、規定により引き分け・再試合となった。

　試合があったすべての日でホームランが記録されるなど、打撃戦を制したチームが目立った今大会だったが、決勝に勝ち上がってきたのは、ともに大投手がいるチームだった。「今大会ＮＯ，１エース」駒大苫小牧・田中将大投手、「クールな豪腕」早稲田実業・斎藤佑樹投手。超満員５万人の観客で埋め尽くされた甲子園。全国４１１２校の頂点を決める決勝は、この両エースによる球史に残る投手戦となった。　　　　　　

　試合が動いたのは８回。１アウトで、駒大苫小牧の２番・三木悠也が、早稲田実業の斎藤の初球ストレートを狙いすましたかのように、センター・バックスクリーンに放り込んだ。ソロホームラン。０―０の均衡が、ついに破れた。「まさか入るとは…」とは三木。「しまった…」とは斎藤。１回戦から一貫して冷静さを貫いてきた斎藤の表情が曇った。値千金。まさに虎の子の１点が、三木のホームランによって、３連覇を狙う駒大苫小牧にもたらされた。

　しかし、その裏、早稲田実業も黙ってはいない。１アウト後、３番・桧垣皓次朗が左中間に２塁打。しかし、駒大苫小牧のレフト・渡辺準輝がまさかの中継ミス。桧垣は３塁を陥れる。優勝へのプレッシャーが、たったひとつのプレーにのしかかっていく。続く打席には、４番キャプテン・後藤貴司。スタンドからは、「ホームラン」の声援が鳴り響く中、打球はセンターへ。「入る！」あわやの大飛球に沸くスタンド。しかし、犠牲フライ。早稲田実業はすかさず同点に追いつく。“王者“に喰らいつく”古豪“。試合は、延長戦にもつれ込んでいく。

　１球に、地鳴りのような歓声とため息が交錯する甲子園。息をのむ展開が続く中、それぞれに優勝への決定的チャンスが訪れた。駒大苫小牧は延長１１回、ヒットとデッドボールなどで１アウト満塁。しかし、スクイズを空振りしチャンスを逃す。一方、早稲田実業も延長１３回、ヒットと連続敬遠フォアボールによる２アウト満塁のチャンスを逸した。

　全国制覇へ。どちらも、一歩も譲らない。１３回表、駒大苫小牧・田中が１塁へ渾身のヘッドスライディングを見せれば、早稲田実業・斎藤は１５回表、この日最速の１４７キロをマークする熱投。両チームに微笑みかける勝利の女神。しかし、女神の干渉を斎藤、田中の両エースは許さなかった。

　延長１５回。球史に残る壮絶な投手戦。駒大苫小牧・田中将大投手、１６５球・１０奪三振。早稲田実業・斎藤佑樹投手、１７８球・１７奪三振。３時間３７分の激闘は、ついに決着がつかず、勝負は３７年ぶり２度目の再試合に持ち越された。

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