ワンダーフォーゲル(ワンゲル)。このスポーツに観客はいない。観れば分かるスポーツとは違う。一体ワンゲルとはどんなスポーツなのか?それが知りたくて、そのアスリートに出会いたくて。取材場所に現れた女性は、肩書きのない普通の大学生。
こんなことしてます、ワンゲル。
――ワンゲルは具体的にどんなことをしているんですか?
「ほかの人に説明するとき、山やっているよ、ボートも沢も、自転車もやっているよって言います。早稲田のワンゲルは毎回テーマを決めて、例えば『東北』だったら、その季節に山と沢とボート、自転車でできることはなんだろうって考えてコースを組みます。」
参考までに広辞苑を引いてみた。
「ワンダーフォーゲル:(渡り鳥の意)青年・学生のグループによる山野徒歩旅行の運動。二〇世紀初頭、ドイツに始まる。ワンゲル。」
実際の活動は、年7回全体での合宿、それと並行して個人(少人数)で山へ、沢へとワンダリングに出かける。例えば夏合宿。
「三体に分かれます。自転車、沢・ボート、沢づくし。その内のどれかを選びます。それぞれにコースがあるんですが、ちなみに私は沢が好き。自転車も楽しいですね。大体三週間ちょっと野宿で自炊します。必要なものは全部背負っていくんですが、夏は一回町におりて食料到達。前々から郵便局に送っておくんです。」
野宿だから当然風呂には入らない。
「くっさい!!!!信じられないくらいくさい。自分からこんな匂いが出るんだ、ありえるんだ、このにおいって思います。笑」
異端児の悩みと魅力
――ところで、ワンゲルをスポーツってくくっていいですか?
「いや、あんまり。ダンスと同じ感覚かな。スポーツなんだけど、スポーツと言い切れない。スポーツの意識はないけれど、体動かしてるなって感じです。めちゃめちゃスポーツやってるという感じではないです。」
彼女は、ワンダリングの計画をしはじめたときからそのワンダリングは始まっていると考える。また、どうやってコースを組むか、計画を立てるか決まっていない分、ワンゲルを幅の広いスポーツと捉えている。しかし一方で、多様性と不安定は紙一重。
「『ワンゲルって何?』って、やっている人たちも悩んでたりするんです。活動は山登り、沢登り、自転車とあるんだけど、それに託される意味は多くあって、それを自分自身で定義するのも魅力のひとつだと思っています。」
よく話を聞いたら、もともとワンゲルは山岳部から生まれたらしい。昔々、山だけじゃ物足りない人たちによってできた異端児集団なのだそうだ(次のページに続く)。
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