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ワンダーフォーゲル部牧野佐千子日記


text by 牧野佐千子

 合宿の出発の日が迫ってくるにつれて、ちょうど私たちが山にいる間の週に天候が悪化し、風も強く、気温も氷点下、大量の雪が降り積もるだろうことが見えてきた。

 ただでさえ54代初合宿、事故後の一年のスタート合宿であり、多くの意味合いのある合宿で決して失敗は許されないのに・・・。しかも私は合宿のリーダーは初めてだ。出発日、新宿駅ホームに集合。その日の朝に、新人が一人不安を抱え合宿不参加。ほかの新人だって不安に違いない。どうやって、全体を納得させるのか。それに、もし新人が慣れない雪上で足を滑らせでもしたら・・・、凍傷にでもなったら・・・、天候悪化は分かっていたはずなのにこんなところに連れて行ったリーダーである私の責任だ。もちろん、自分個人の危機管理だってある。

 このときは、不安と重責で押し潰されそうだった。

 合宿の数日前、年間方針に、合宿の計画作りに、と、自分のモチベーション自体を確かめる余裕もなかった私は、あるOBの人から叱責されていた。その人は、事故後の部を動かしていくという現状から、「私のせいじゃない」と逃げ道つくろうとする私の甘さを見抜いていた。

 そんな無責任さで、事故のことを引き合いに出して、年間方針の冒頭「金政が帰ってきたときに誇りに思えるような部にしたい」なんていうことを言うな、と。

 本当にその通りだった。私は自分の立場ばかりに同情している自分が情けなくてみっともなくて、金政に申し訳なくて、そのときは涙が止まらなかった。

 そのOBの目にも涙が滲んでいた。

 一緒に活動していたこともないOBが、ここまで言ってくれるものか。「ワンゲル」という組織のすごさ、その人の心のすごさを思った。

 合宿が始まり、実際に一歩、山に足を踏み入れると、集中力が研ぎ澄まされ、行けるとこまで行くぞ、と自然と思えた。

 結果としてこの合宿は、深雪のため途中撤退となったが、この合宿を境に新しい体制でこの先どうやってやっていくのかが見えてきた。

 私自身も、全身の力をつぎ込んだひとつの合宿を終えて、部を動かすものとしても、個人としても、たくさんのものを得た。

 この先の活動をやっていくにあたって、この秋合宿の体験と、あの日のOBのことばが、私を叱り、励ます力の原点になるだろう。

 自分のことばかり書いてしまったが、多くの人の協力があっての合宿だった。たまに見えなくなるけど、今も多くの人が信じられないぐらいの尽力をしてくれている。常に忘れないでいたい。最後に、金政の復帰を心から祈って。




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