「目標はトリノ五輪です。スケートをやる以上は行かなくてはならないところだと思っています」 土井慎悟。早稲田大学スケート部スピード部門に所属し、精悍な顔つき、そして勝負師の如く強いオーラを発する目が印象的な世界を相手に戦っている早大生である。
土井とスピードスケートとの出会いはごく自然なものだった。
「北海道はスキーが盛んだったり、スキーのジャンプが盛んだったり地域によって違うのですが、僕のところはスケートが盛んで保育所の隣にスケートリンクがあり、15cmぐらいのサイズのスケート靴を履いて3歳頃から滑っていました。父もスケート選手でしたし、自分にとってスケートをするのはごく自然なことでしたね」
スピード感と、努力の上で自己ベストの記録を更新したときの何事にも代え難い喜びというスピードスケートの魅力に魅せられた彼はその後、清水宏保選手をはじめ数々の五輪選手を輩出した名門校・白樺学園に進学し、01年世界ジュニア選手権総合優勝をはじめとする輝かしい成績を残す。そして高校卒業後、数々の選択肢の中から早稲田大学スポーツ科学科への進学を決意する。
「実業団へ行く道もありましたし、明治などいろいろな大学からも誘われていました。高校の部の仲間にも明治や専修などの強豪大学に進学する人も多かった。早稲田はそれらの大学に比べるとスピードは盛んではないですけど、でも中学、高校と強い人たちの中でやってきて、今度は自分の力で選手として成長したいというのがあって早稲田を選びました」
早稲田を選んだ土井。しかし一人暮らしなど環境の変化から戸惑いもあり、昨シーズンの前半はなかなか調子が上がらなかった。中学記録、高校記録の更新、そして世界ジュニア制覇と自身の課した目標を着実にクリアしてきた土井にとっては試練の一年であった。
「去年は自分で自分を管理していくことの難しさを実感した一年でした。去年は最初一人暮らしをしていたりと、やっぱり環境の変化の戸惑いを感じましたし。確かに成績だけを見るとあまりよくはありませんが、この1年自分で考えてやった経験が今年にいかせればと思います」
土井は早稲田への進学を後悔してはいないという。高校時代から勉学と競技との両立をしてきた土井は学生生活も人並み以上に楽しんでいる。
「シーズンが始まると遠征などで授業との両立は大変ですね。いろいろな人から協力してもらってなんとか単位はとっています。またスポーツ科学科は、プロに行くような人とか、テレビに出るような人とか、他競技の優秀な選手がまわりに多くいるので刺激を受けますね。野球部の武内君とは話をします。こないだはサッカーの徳永選手とも話しました。ドイツ語の授業とかで一緒なんですよ。徳永君のほうがオリンピック(アテネ)にいくのは先だと思いますが自分も負けたくないですね」
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