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後半に入っても、両校の情勢は変わらず、相変わらず早稲田が攻め続け慶應はカウンターを狙う展開へ。1分には玉田英史(商4)のドリブルから矢島へつなぎ、シュートを放つが、惜しくもゴール左へ。7分には兵藤が出場し、その際にはスタンドから一際大きな歓声が飛んだ。その後も8分に玉田のスルーパスから山本がシュートを放つが、GKにセーブされ、こぼれ球を矢島が狙うもクロスバーに直撃し、あと一歩のところで追加点を奪うことができない。逆に、疲れの見え始めたところをつくように、慶應もDF松井が惜しいシュートを放つなど、カウンターを仕掛けていく。膠着状態が続き、去年に続きまたしても引き分けに終わるかと思われた終了間際の43分、徳永がドリブルからペナルティエリア内へパスを送り、それを途中出場の高橋が落とすと、この日精力的に動き回っていた松橋が冷静にゴール左へ流し込み、待望の追加点を奪った。そしてこれが決勝点となりタイムアップの笛が吹かれた。
実力差から考えると、もっと差がついてもおかしくなかった。しかし、このような切迫した試合となったのは、やはり早慶戦という特別な試合だったからだろう。慶應イレブンの体を張った守り、そしてタイムアップのホイッスル直後に崩れ落ちた姿は、勝利を目指す熱い想いをスタンドまで届けた。普段からア式蹴球部をサポートしているウルトラスワセダも、応援団、そして大観衆と一体になり、いつにもましてすばらしい応援を繰り広げた。おそらくインカレ決勝よりも盛り上がったこの試合。1万人近い大観衆の中、国立競技場という最高の舞台でプレーすることを許された早稲田、慶應の両校の選手たちは、それに報いる以上の最高のプレーを見せた。接戦を制し歌った勝利の歌は選手たちのプレーを讃えるかのようだった。大榎監督も「あそこで得点を決め、勝利を飾ったみんなを誇りに思う」と言っていたように、観衆もまた同じ気持ちだったに違いない。もし、大学サッカーをこの試合で初めて体験した方がいたら、是非これからも試合へ足を運んでほしい。そこにはいつでも、ボールを必死で追いかける選手たちの姿があるのだから。
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