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  Realvoice年間プロジェクト 

2010/2/26掲載 

競走部 江里口匡史 第4回

  日本選手権初優勝や世界陸上出場といった好成績を残し、江里口選手にとってまさに『飛躍の年』となった2009年。大活躍だった一年を、彼自身は今どのように分析しているのか。また、大きな期待のもと迎える2010年度シーズンへの決意、そして更にその先に彼が見据えるものとは?
 約1年間に渡り江里口選手の素顔に迫ってきた「RealVoce2009」もついに最終回。第4回目となる今回も、2部構成でお送りします。前編では、激動の2009年を振り返っての感想と、現在取り組む冬季練習について。そして後編では、2010年度シーズンへの抱負とその先に描く目標、自身の将来像について語って頂きました。



江里口匡史選手プロフィール
熊本・鹿本高校出身
スポーツ科学部3年
自己記録:100m 10秒07
 

――まず始めに、改めて2009年度シーズンを振り返ってみての感想を聞かせて下さい。 
 2009年は自分の中でも目標としていたものが、最低限達成できた年だったなと思います。ただ、その目標を達成したことで、更にその先にある課題がまたはっきりと明確になってきました。なので、これから自分自身が世界に向けて出ていく上でも、順序を踏まえて少しずつ階段を上っていったかなと思える一年だったので、そういう意味でも良い一年でしたね。

――大活躍の一年だったと思うのですが、ご自身としては「最低限」の結果でしたか?
 今振り返れば、それが最低限だったなと思います。到達できなかったら別の思いもあったと思うんですけど、到達することができたので。到達した後は、欲を言えば「もっと結果を出したかった」とか「(もっと)走りたかったな」という気持ちがまだ残っていたので、そういう意味で、最低限での目標クリアかなと思います。

――具体的に目標とされていたのは、昨年8月の世界選手権ですよね?
 そうですね。一番はまず『世界陸上に出場する』ってことがまず目標で、他にも『ユニバーシアードの個人種目で3番以内』や記録としては『(100mで)10秒1台』っていうものを目標にしていました。なので、目標としては達成したんですけど、やはり世界陸上に関して言えば、まず自分は出場することが目標だった分、いざ出場するってなった時にその先のところがまだあやふやというか、自分の中でブレている部分があったので、試合ではよく自分自身というのが分からないまま、競技してしまったなという感じがありました。目標の位置が低かったわけではないと思うんですけど、今振り返ってみればまだ上を目指せるなという感じがありますね。

――日本選手権の優勝以降、一気に注目を浴びるようになったと思うのですが、戸惑いなどはありましたか?
 最初はやはりありましたね。日本選手権が終わってから世界陸上までは1ヶ月半位ではあったんですけど、本当に「自分自身の時間がない」というか、逆に合宿に行った方が自分自身の時間がとれる位の感じでした。(世界陸上が)終わった後の9、10月頃まで色々あって、なかなか自分自身のペースも掴めなかったですね。でも、それだけ世界陸上に対する世間の人達の期待が大きいっていうことを肌で実感できましたし、トップの人達はもっと自分のリズムをなかなか取れない中でやっているんだなという事を学べたと思います。

 

――ご自身で掲げた目標を達成することができた要因は?
 やはり、自分では「本気でそこを目指してたからこそ、達成できたんだろうな」と思える部分が大きいですね。僕が大学1年目にも世界陸上はありましたし、2年目にはオリンピックがあったんですけど、目指すといってもまだ言葉だけのような感じだったなと思うので、(3年目は)本気でそこに出たいという気持ちと、目指していく上でのそれなりの覚悟や行動が備わったその結果として、目標が達成できたんじゃないかなと。そこに向かっていく『意志の強さ』が1、2年目とは比較にならないほどのものがあったと自分の中では思います。

――2009年は大きな故障もなくシーズンを乗り切ったことも大きいのでは?
 第一にまずケガをしないっていうのは重要な部分だったので、もちろんセルフケアでできる面は自分で予防していかなければいけないんですけど、競技力が上がるほど体への負担は大きくなりますし、自分自身でできる範囲とできない範囲があると感じたので、そこは行きつけの治療院の先生に時間を作ってもらってお願いして、状態を見て相談しながらやっていました。自分の体に対して気を遣うというか、ケアは年々できるようにはなってきているので、それがもっとできるようになればアスリートとして一流に近づけるんじゃないかなと思います。

――2009年で一番印象に残っているレースは?
 印象に残ってるのはたくさんあるんですけど、自分の中で良い走りをしたなって思えるのは、『日本インカレ』ですかね。それと、何が何でも負けられないというか、後がないような気持ちで臨んだのが日本選手権でした。あと、試合に臨む気持ちは少し違いはあったんですけど、そういう意味で印象に残っているって言ったら、もちろん世界選手権で全然ダメだったっていうのも自分の中ですごく残ってますし、ユニバーでラウンドを踏んで戦っていったのも印象に残っている試合なので、去年はシーズンを全部走り通せたっていうことでも印象に残る試合が多かったです。それだけ自分の中で一つの試合に対して集中できていて、色々な捉え方をしながら試合に臨めたかなと思います。

――日本選手権では、10秒07という自己記録をマークしましたが、時間が経ってみて改めてこの記録について感じることは?
 タイムに関しては、客観的に見ても素晴らしいタイムだとは思うんですけど、日本選手権での走りを改めて映像で見たりすると、「そんなに走り自体の完成度は高くないんじゃないかな」と自分の中では思いましたね。「ああいう走りであったら、まだ何度か自分の中でも出せるんじゃないかな」とか、「まだあれは完成した走りではないな」という感じで見られるようになってきました。あの時は、あれが自分が出せるものを出し切って試合に臨んだと思ったんですけど、その後時間が経って冷静にレースを見直したり、今の練習の感じから見ても、やはり今は「あれは自分の中で手の届かないくらい良い走りだったわけじゃないな」と思います。なので、タイムを出せたことはもちろん良いことだと思うんですけど、まだまだ伸びる余地はあるかなと自分で思えるので、そういう意味でもこれからのために繋がる一本だなと今は思います。


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(TEXT、PHOTO=岡崎聡)

 

 


 
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