―― 一番嬉しかったこと
小松:怪我をしていた選手が目標としていた試合に出て、走れた時ですね。勿論、走るからには良い順位になって欲しいとは思いますが、その選手が満足できる結果を残すことができるのが一番嬉しい。自分の調子が悪くて走れなかったというのは僕でもどうしようもありません。でも怪我で走れなかったというのは本人の責任でもありますが、周りの責任も大きいので。そうさせないために、自分がいると思っていますから。
――今の自分に欠けていること
小松:全てにおいてまだまだです。上をみたら優れている人は身近にもたくさんいますから。しいてあげるとしたら、たまに、落ち込んでいる選手にどう声をかけて良いか分からなくなるときがあります。そういう時、自分にもっとユーモアみたいなものがあれば良いなとは思います。
トレーナーという立場から常に体調に気を配ってきた選手たちの、ある意味一年の集大成とも言える箱根駅伝。その年一回の舞台に対して、トレーナーである彼はどんな思いを馳せているのであろうか。
――自分にとっての箱根駅伝とは
小松:怪我無く当日まで持っていくというのが僕らトレーナーにとっての勝負ですので、その発表の場というとおこがましいですが、周りには「うちの選手たちを見てくれっ!」って感じですか(笑)。自分が走るわけではありませんが、ずっと処置をしてきた選手たちが走るので、気持ちの上では選手と一緒です。勝手に僕の気持ちも選手、襷に乗っけています(笑)。トレーナーにとっては、箱根前日までに何をするのかが重要になってきますから、当日は選手の力を信じてサポートするのみです。
明るく人懐こい印象の小松。だが自身は故障で競技を断念した経歴を持ち、トレーナーという役割上故障を抱えた選手とも向き合ってこなくてはならなかったであろう。現在四年生の彼にこれからのことについて訊ねるとこんな答えが返ってきた。「教職も取っているので、今やっていることを高校生にも教えたいんですよ。今大学で普通になされていることが、高校生は知らなかったりするんですよね。もし高校生の時に適切なケアが出来ていれば、大学で競技を続けようと考えたり、もっと伸びた選手もいたかもしれません」知識がなかったというだけで、競技の第一線から退かざるおえない選手は、まだこの日本にたくさんいる。そのことを話すときの彼の表情は厳しかった。
今、この時も、小松は箱根路を走る選手たちの体を調整しつづけている。彼の勝負は試合直前、選手がスタートラインに立つまでつづく。
特集
箱根駅伝特集〜繋げ、臙脂の絆〜
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第79回箱根駅伝公式サイト
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