WasedaWillWin.com
 


  

 140人という大集団を纏めあげる中竹監督。しかし、黄金時代を築いてきた清宮監督から引き継ぐことにおける重圧は想像以上に大きいものであったに違いない。前年は3連覇のかかった大学日本一を逃すなど悔しい思いも経験した。今回のインタビューでは就任当初から現在に至るまで、その胸の内を語ってもらった。





 
 

――監督就任当初、どのような部分に難しさを感じましたか?
 去年でいうと二年連続で日本一にもなったチーム、それも学生は清宮さんの監督像しか知らないんですね。監督のある姿がひとつしかなかったんですよ。成功を収めているから彼以外のやり方をやると誰もが反発するっていうのは、やはりやりにくかったですね。うまくいかないと学生はまだ子どもなので監督のせいにするんですよ。僕自身もものすごいラグビー理論を持っていればいいんですけど、ないのに学生は期待して清宮さんと違うことばかり探してこの人駄目なんだと。清宮さんが戻ってくるはずもないのにずっと求めていたし、その文句ばっかりだった。最後の一ヶ月に文句言っても監督この人から変われないんだってやっとわかったという感じですね。自分達で戦わなければいけないし、一緒に戦う仲間なのに常に敵視していてはいけないんだなと。

――選手との信頼関係は築けましたか?
 1対140くらいなので。基本的になんでもそうなんですけど、組織って人数少ない方だったり力の弱いものが入るとそこに誰も同調しようとしないんですね。そういう意味では去年の春シーズンは一切信頼感はなかったんじゃないんですかね。

――監督自身、選手ひとりひとりとの対話を大切にしているようですが。
 そうですね。形上は全員に面談を年に2回はやっていますね。僕の場合しゃべっててもわかると思うんですけど、怒っても怖くないんですよ(笑)。自分でもわかってて、怒るのも嫌いなので、怒鳴って何かをさせるというのは自分のスタイルにあってないなと思っていて。ずっといろんなところで主将とかリーダーをやってきたんですけど、そういう人はカリスマがあってリーダーシップがあるとみんな勘違いするんですよ。リーダーシップなんか全然ないですからね。基本的にはそこにいる人達の気持ちを乗せて彼らに頑張ってもらうっていうタイプなので。だから、去年に関しては学生は迷った部分もあると思うんです。僕がもっと前面に出て突っ走ってくれれば彼らはついていくって感じだったんですけど、僕にはそういうやり方は合わないし、学生の最大の力っていうのは絶対でないと思っていたので。今年はそれを(学生が)わかってくれて、僕が前面にでるというよりも彼らが前面にでなければいけないんだって最初から理解してくれているのでやりやすいですね。

――指導の面ではどのようなことを意識しましたか?
 うまくいっているところは引き継ごうと思いました。でも、いくら同じことをやるって言って引き継いだとしても言う人が違えば違った形で伝わるわけですよ。そこはすごく戦いましたね。早稲田っていうのは、もちろん早稲田らしさが大事なんですけど勝つことが前提なので。自分のやり方云々よりも勝つためにはどこまで譲歩してどこまで変えるっていうバランスはすごく迷いましたね。


 
 

――選手にとって監督の存在とはどのようなものだと思いますか?
 それは監督によって違うんじゃないでしょうかね。やるのは選手ですから勝たせるためにどう方向づけをしてあげられるかですかね。監督はそれぞれ自分達のスタイルを持つべきなんですけど、いわゆる本で書いている監督のあるべきことを並べたとしてもそれ全部できるはずもないですから。要は自分のやり方がいかにチームにとってフィットして学生を勝たせるために効果的かということなので、具体的にこれとこれとは言えないですね。けど、一番重要なのはきちっとプランニングしてあげて勝たせてあげること、自分達がやった成果が試合で出て勝てれば自信はつくので、そこが大事ですね。

――自分のやりたいことが選手に伝わっているとわかる瞬間は?
 僕が言いたいことをグラウンドレベルのキャプテンや他のリーダーがパッと言ってくれた時に伝えたいことが浸透してきたなと思いますね。さっき(変化を感じたのは)最後の一ヶ月とは言いましたけど、やはり四年生は必死なので、僕の意図を掴もうと努力していましたから。でも(僕の意図を)なかなか掴めなくて、そのもがいた姿を今年の連中は見ていたと思うので、そういう意味では今年は春シーズンから方向性はすごい理解していてうまくいっているとは思いますね。

――そこが一年目と二年目の変化ですか?
 そうですね。こうすると失敗するなっていうのが去年わかったので今年はそういう意味では相当割り切っていますね。去年なら色々大事なことがあって十個あったら十個全部やろうとしたんですけど、結局十個全部をできる時間も力もなかったんですよ。今年は最終的には十個求めるんですけど、春のうちはそのうちの二つだけということで、他の事はやりたいんだけどもまず二つを徹底しろってことで、それが徹底できたことは大きな成長ですね。

――指導の際、「論理」ということを大事にしているようですが。
 根本的には根性は必ず論理的に見せることが出来ると思っています。気持ちの低いときと高いときは目に見えてわかるわけだし、どうやったらそれが高まるかについても理論はあると思うのでそこは突き詰めていきたいですね。根性論とセオリー論っていつも対極にあるんですけど、僕は同じことを違う局面から言っているだけだと思いますね。今年なんかはそこをはっきり言えるようになりたいです。

――大きな組織を動かす上で意識していることはありますか?
 まずは組織として競争原理を生み出してあげることですね。それで、そういう仕組みでは乗っからないスランプに引っかかったときに個人的に引き上げてあげるという意識はしています。

――自分がいなくても勝てるチームを目指しているようですが。
 そうですね。でも、ほんとにいなくなったらいらないですから(笑)。たとえいなくなっても局面ではそれぞれがきちっとやってくれればっていうがありますね。

 

1/2

 

(TEXT=村山裕太、PHOTO=平野峻)

 

 


 
WasedaWillWin.com HOMEへもどる