(前のページより)
――指導者という面で印象に残った人はいますか?
高校の先生ですね。選手に思ったことを徹底してやらせるという面では高校の先生は非常に厳しかったですから。そのやり方が僕はできないとわかっているんですけど、ああいう風にやらせられる人はすごいなと思っています。指導者っていうのは本人達がやりたくないことをいかにやらせるかが勝負ですから。僕は高校の先生みたいなやり方はできないけど上手く気持ちを持っていって同じことを彼ら自身にやらせることはできるんじゃないかと思っています。
――大学卒業後に留学を経験していますが、どのような思いのもと決意されたのですか?
拍子抜けすると思うんですけど、だいたい三年生から四年生にかけて就活をやらないといけないじゃないですか。うちにはOBに研修部会というのがあって、彼らが就職指導するんですよ。大体みんな考えてないんですけど、僕も同じく考えていなくて…。僕はどう考えてもキャプテン終わった一年後に普通の会社で研修受けているイメージがなかったんですよ。たぶんこれからすごい一年間があって、その後に整理する時間が必要だと思ったんです。その時につっこまれない逃げ道は留学しかないなと(笑)。どっか会社行くとなったら面接してるのかとかエントリーシート書いたのかとか言われるのでとりあえず留学って言ってギリギリまで粘ってましたね。
――その留学の経験を通して得たことというのは。
たぶん日本で普通に就職していれば一応早稲田のキャプテンとして通じる部分がすごくたくさんあったでしょうし、利用すれば利用するだけ価値のあるものだとわかっていたんですけど、それを全部ゼロにしてラグビーもとっぱらってこう勝負したいなと。相当差別も受けましたし、語学留学生にあしらわれたりもしましたから。でも、それはすごくいい経験になりましたね。
――自分の世代の学生と今の学生に変化を感じる部分というのは?
すごく感じるのは自分で考える環境がなくなっているのはすごくかわいそうだなって思いますね。物事を吸収する力であったり、対応する力は持っているんですけど、自分で生み出して壁を叩いていくってことが欠けていますね。それは能力がないんじゃなくて、彼らにその環境がないからだと思うんですよ。昔はコーチングにしろ、すべてにおいて誰も何もやってくれなかったんです。当然ながら、いまのようにフルタイムコーチがいて毎回プレーを事細かにチェックされてビデオ撮って編集してミーティングでフィードバックしてくれるというのはなかったですから。(昔は)自分達で考えて解決策を求めていたっていうのは大きいなって。彼らにその力が去年はないなって感じたんですけど、ないんじゃなくてたぶん環境がないだけで、それを生み出してあげればきちっと彼らは対応すると思いますね。あとは、たぶん同じ理由だと思うんですけど色んなところから常に評価されチェックされることに慣れてしまっているので異常に失敗を恐れるし、駄目っていわれることに対して拒絶感ってあります。僕からすると練習中にたとえばこれをやれって時の、その前段階での失敗なんかはどうでもいいからって思うんですけどね。
――仕事の経験からいまの指導に繋がってると感じることは?
僕がやっていた仕事はコンサルティングとかリサーチだったので、明確にこれがそのままっていうのはないですね。プロジェクトマネージメントっていまいろんなところで出てきていますけど、それはすごく勉強になりましたね。物事の企画構想を練ってプランニングしてそれを期限までにどういう風に組み立てていくかっていうことは自然に培いましたから。去年はそういったことをわかっているにも関わらず現場に落とし込む時の変え方ががラグビーと仕事は全然違うってことがあって、そこの転用の仕方が自分でもうまくいきませんでした。今年はそういう意味ではだいぶイメージはあります。
――指導する上での魅力と言うのは?
これは一般的ではなくて僕の個人的な意見なんですけど、人が成長するのを見るのが好きなんですよ。僕が施したとかいうことは一切関係なく、人がその場で目の前で成長する姿を見ることにすごく幸せに感じるんですよ。それを毎日目の当たりにできるっていうのは僕にとっては最高に嬉しい仕事ですね。本人達が嫌がっていることが、僕にとってはすごい大事なことで、それをいかに最後ほっといても彼らがやってくれるってことが指導者の一番の醍醐味かなと去年すごく感じましたね。最初提案して選手が嫌がれば嫌がるほど僕としてはわくわくしてきていつかは「やっぱよかったですね」って言わしたいんですよ。
――監督にとって早稲田の存在というのは?
チャレンジャーじゃないですかね。チャレンジャーのシンボルになってほしいですね。
――これから目指すチーム像について?
さっきの話もそうなんですけど、早稲田としてはどんなに勝ち続けても強い相手は必ず前に現われる訳ですから、ずっとチャレンジャーっていう気持ちを忘れないでほしいですね。それは自分の能力をわからないゲリラ的なチャレンジャーじゃなくて地に足がついた本当に自分の力をわかっていてひとつのチャンスを大事に戦う自信を持ったチャレンジャーになってほしいなって思っていますね。
周りを指導する以前に自分の存在をしっかり客観視できる力こそ監督として求められる資質なのかもしれない。スタイルをしっかり持って自分の強みを最大限に生かす中竹監督の指導方法はしっかり地に足をつけ大きな実を結ぼうとしている。国立の空に来年こそ必ず「荒ぶる」が響き渡るはずだ。
|
2/2
|
関連URL
早大ラグビー蹴球部公式サイト
関連記事
監督論 第1回 「競走部 渡辺康幸選手インタビュー」
監督論 第2回 「ア式蹴球部 大榎克己選手インタビュー」
監督論 第3回 「ラグビー蹴球部 中竹竜二選手インタビュー」
|