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小西沙季主務プロフィール 第一文学部4年 長崎青雲高校出身
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スポーツの試合会場には、様々な役者たちがいる。仲間と勝利をかみ締める選手たち、負けた仲間を必死に慰める応援団、選手をサポートするマネージャー。会場に詰めかけた、そのすべての役者たちが、感動の担い手となり、フィールドにドラマを演出する。
早大相撲部主務の小西沙季さん(一文4)も、その中の一人だ。大柄な5人の部員たちを影から支え、選手のベストパフォーマンス作りに貢献する。今回そんな彼女に、主務・マネージャーとしての仕事について伺った。
「この仕事って、さまざまな人たちとの繋がりができるんです。選手たちや他の部のマネージャーはもちろん、スポーツという一つの共通点で、様々な人と触れ合える。そんなところがすごく楽しい。それにこの仕事をやっていると、一つのことを成し遂げる達成感、スポーツならではの感動が味わえるんです。」
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遠征先の大阪にて。
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さわやかな笑顔で、仕事の魅力を淡々と話す小西さん。その表情からは、苦労など微塵も感じられない。しかし、たった一人での相撲部の仕事は決して楽なものではない。選手が練習に励む相撲場の脇で、いつも多くの仕事に追われている。選手たちへの食事作りはその一つだ。小西さんは語る。
「練習後食べる『ちゃんこ』は、とても大量に作らなければいけない。それに加え鍋には、いろいろな食材をバランス良く入れる必要があります。だから、買わなくてはいけない食材も数多いんです。一回の食事に1万5000円ぐらい使うんこともあるんですよ。今は慣れましたが、マネージャーとして駆け出しの頃は、驚きましたね。」
練習場とスーパーの間の坂。買出しの時は、この坂を何度も往復するという。そして戻ると、休む間もなく多くの仕事と格闘する。
「運んできた食材を切って調理する。その間に選手たちの衣類を洗濯する。これを短時間でこなさなければいけないので、いつも時間との勝負ですね。」 一人でやらなくてはいけない仕事量の多さに「最初は目が回りそうだった」と小西さん。だが、どんなに大変な仕事でも部員の手を借りることはあまりないという。
「選手はなるべく相撲のことだけを考えていて欲しい。競技に専念して欲しいんです。だから、土俵廻り以外の仕事は私ひとりでやりますね。」
大変なマネージャーや主務の仕事。この敬遠されがちな裏方の仕事に小西さんが就いたのには、ある熱い想いがある。
「大学に入る前から、部活は体育会系のものに入ろうって決めていたんです。スポーツって、多くの人たちに感動を与える力があるでしょ? 私も部活を通して、そういったものを味わいたかったんです。」
そう考えていた矢先、たまたま通りかかった教室の壁に目を奪われる。それが、相撲部『マネージャー募集』の案内だった。「迷うことなく電話を掛けた」と小西さん。“相撲部”ということも彼女にとって、決定打となったようだ。
「私の祖父や祖母は相撲が好きだったので、家のテレビにはよく『NHK大相撲中継』が流されていたんです。小さな頃からそれを観ていて。
『相撲』って、柔道のように体重における階級差がないじゃないですか。どの選手も一緒に試合をするでしょ? だから、身体の大きい人が必ず勝つとは限らないんです。大柄の人が、小柄な人を倒す、そんな場面が必ずあるんですよ。テレビで観た相撲にはそれがあった。そんな相撲の取り組みがすごく面白くて。これをきっかけに相撲が大好きになったんです。だから、ポスターを観たときはもう、即決でしたね。」
迷わず相撲部に飛び込んだ小西さん。幼少からテレビ等で、相撲に親しんだ彼女とはいえ、そこは男だけの世界。女性がひとりで飛び込むことは、やはり、多少の抵抗を感じたという。
「相撲って、廻し一枚で試合をするじゃないですか。小さな頃から相撲を観てきましたが、実際に選手たちの中に入ることは、やはり女性としては抵抗がありました。」
しかし仕事を重ねるうちに、その抵抗感は消えていった。今は「一緒に目標を共有する仲間」小西さんは今、部員をこう表現する。
「相撲は確かに男性のものですが、実際サポートをすることに、男性であることや女性であることは関係ないんです。彼らは、同じ目標を持ってスポーツに励む仲間という感覚なので。今は抵抗を感じることはありません。」
部員とは家族のように仲が良いと語る小西さんだが、そこはスポーツの世界。時には気遣いが必要なこともある。
「試合では勝つ時もあれば、負けてしまうこともある。そういう時は、部員との接し方に気を払いますね。個人戦の戦いはもちろんですが、団体戦の試合の時は特に気を遣う必要があります。団体戦は、個人の勝敗がチームの成績に直接反映しますから。
2勝2敗の場面で戦う選手にとっては、プレッシャーが大きい。そこで勝てれば良いですが、負けてしまったら…。もちろん、その選手一人の責任ではありませんよ。でも多くの選手が、『チームが敗れたのは自分のせいだ』と責任を感じてしまうんです。
勝ち負けが明確な相撲の世界で戦う選手たちにとって、誰かに喋りかけて欲しい時もあれば、あまり話したくない時もあると思うんですよ。だからこちらとしても、その場の状況や選手一人ひとりの個性に応じて、コミュニケーションの仕方を変えていく必要があると思うんです。どこでどのように選手と対話するか…これはすごく難しい問題なんですけどね。
でも、これは自然と把握できるものなんですよ。選手とはずっと一緒にいる仲ですから。」
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