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ベースボールマガジン社 朝岡秀樹

 文学部卒業
在学中は総合格闘技サークル・大道塾に所属
         北斗旗軽量級やアマチュア修斗全日本選手権など、名立たる大会で優勝を経験
卒業後はベースボールマガジン社に入社
      「格闘技通信」の編集長を務め、現在は出版編集部でムックの編集に携っている

 ベースボールマガジン社1階の受付ロビー。そこには多くのスポーツグッズが置かれたガラス張りの展示スペースがある。「世界の盗塁王」の異名を持つプロ野球選手・福本豊を始めとする野球グッズはもちろんのこと、サッカー・アルゼンチン代表で、現在はFCバルセロナで活躍中であるリネオル・メッシのサイン入りユニフォームやプロレス界で活躍したタイガーマスクまで、スポーツファンなら誰しもが目を輝かせて喜びそうなプレミアものが所狭しに飾ってあるのだ。

 それもそのはず、当社は1946年の創業以来、スポーツ競技を専門的に取り扱ってきたスポーツ出版社の草分けだ。創業以来引き継がれてきた『ベースボールマガジン』を筆頭に相撲やラグビー、バトミントンなど、扱うジャンルは多肢に渡る。

 その中の一つ『格闘技通信』は、これまで各社報道機関に取り上げられる機会の少なかった、空手やキックボクシングなどコアな競技を大々的に取り扱い、長年ファンたちの心を惹き付けてきた総合格闘技の専門誌である。

 この編集長を2度に渡って務め上げたのが、総合格闘技サークル・大道塾の卒業生である朝岡秀樹さん(文学部卒)だ。早稲田スポーツOB・OG訪問第3回目の今回は、そんな朝岡さんにお話を伺った。




 取材の冒頭、朝岡さんは胸に大事そうに抱えてきた書類の束の中から、一枚の用紙を取り出しこちらに見せてくれた。B2サイズの紙の上には、様々なポーズをとった人々の写真が掲載されている。


 

 その紙の正体は、5月にベースボールマガジン社から発売されたムック『We Love Technique2』の付録ポスター。(インタビュー当初)まだ出版されていない貴重なものだ。カラフルな柔道着をきた選手、グローブをはめファイティングポーズをとっている選手、はたまた廻しを着けた力士たちまで、ポスターには世界各地の格闘技が一同に介している。国も違えばルールも違う。技だって様々なものがある。

 そんな紙面を前にして、朝岡さんは話を切り出した。

 「僕は編集で、格闘技の“芸術性”を表現したいんです。 柔道や相撲、キックボクシングなど一言に格闘技と言っても、当然そこには様々な種目があります。もちろん競技によって技の名前や形は異なるんです。 でもね、そんな中にも一つ共通しているものがあるんですよ。それが技の持つ“美しさ”なんです。どんな種目の選手でも、一流と呼ばれる人の技はやはり美しい。勝ち負けを争っている中にも、アートのような芸術性があるんですよね」

 技の細部から見えてくる競技者の極致。この仕事で朝岡さんが手がけたかったのは、まさにそのあり方だという。

 「選手が持つ美しさって、ただ単に身体を鍛えていれば出来るというものではないんですよ。選手自身の心の有り様から生まれてくるものだと僕は思うんです。基礎を学び、きちんとした精神力を兼ね備えた選手だからこそ、リングに上がった瞬間に美しい技を放つことができる。これは、その道を極めた一流の選手だからこそ為せる業なんですよね」

 あくまでも技術に特化する。そのために競技の細部まで目を光らせる。このポスターは、そんな理念の中で作られた一つの作品だ。

 「多くのスポーツ雑誌には、選手の人間ドラマにスポットを当てた記事が多いですよね。辛い練習の積み重ねで試合に勝てたとか、家族が亡くなったとか……。もちろん、このような感動話はスポーツの魅力の一要素だと思いますよ。
 でもね、僕が雑誌で手がけたいのは、そういった人間ドラマではないんです。追求しているのは、リングの上で戦っている選手たちの姿。すべてが技術面での話なんですよ。技がどうであったか、選手のメンタルはどうだったか、など細部まで追い求める。
 あくまでも、試合会場やリング上の出来事にこだわること。それが、僕の仕事なんです」

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(TEXT=小垣卓馬、PHOTO=池田恩、小垣卓馬)

 

 


 
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