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 11月7日に控える全日本大学駅伝の直前企画として、今回は八木勇樹(スポ3)選手にお話を伺ってきました。大学入学以来思うように結果が出せず苦しんできた中、今年9月に行われた日本インカレ、先月行われた出雲駅伝では、早稲田の主軸として堂々たる結果を出し、復活の烽火を上げた八木選手。最近の好調の裏側にある想い、今後の全日本・箱根に向けた意気込みなど、様々な事を語っていただきました。





 
八木勇樹選手プロフィール
  スポーツ科学部3年
  西脇工業・兵庫出身
  自己記録  5000m:13分43秒49
        10000m:28分55分24

――まず、先日の出雲駅伝について伺います。早稲田としては14年ぶりの駅伝タイトル獲得となりましたが、この結果については?
 今年の目標として、(渡辺康幸駅伝)監督が三大駅伝全部優勝するっていうことを掲げて、夏合宿からずっとやってきたので、出雲駅伝でまず優勝できたっていうことは、目標を一段階クリアできたということで、喜ばしいことだと思います。

――1つ勝ったことで、チームとして更にプレッシャーが強くなったのではないですか?
 やっぱり早稲田大学って、前からずっとそうだったと思うんですけど、優勝するのが宿命になっているので、一つ勝ったということで、これから他大学も注目してくると思いますし、マークしてくると思うんですけど、それでも、やっぱり優勝候補と言われて優勝するっていうのがチームとしても必要だと思うので、僕としてはちょうどいいかなって思います。

――八木選手は3区区間賞という結果でしたが、ご自身の走りについては?
 内容が全然良くなかったです。僕自身としては、たまたま区間賞だったっていうだけで、目指してるところも全然違いますし、結果的にチームの優勝に少しでも貢献できたのかなっていう風には思いますけど、まだまだあの力だとこれから先戦っていけないんで。そんなに区間賞っていう結果については特に何も思っていないです。

――ご自身の走りの内容について点数をつけるとしたら?
 20〜30点くらいだと思います。2qくらいから全然自分の走りができなくて、自分としてはいつもみたいな失敗レースの感覚だったんですよ。ただ今年は、きつくなってからどこまでがむしゃらに粘れるかっていう練習をやってきて、監督からも今年はそういうのが出来るようになってきたっていう風に言われていたので、それを今回上手くレースで出せて粘れたっていうのが、1秒差の区間賞につながったのかなと思います。

――監督という言葉が出ましたが、渡辺監督と八木選手の間には信頼関係の強さや大きな期待を感じます。
 信頼関係というか…あんまり信頼されてないと思うんですけど(笑)。三大駅伝に一年目から起用していただいて、二年目は力は全然足りないのに重要な区間やエース区間とかで使ってくださったっていうのは、監督の中で僕に対する何か狙いっていうものがあるんだなっていうのを自分自身感じているんですが、去年は全く監督のその期待に応えることができなかったので、「今年こそは」っていう想いがあります。監督の指導が正しいっていうのを証明したいですね。

――9月の日本インカレでは、監督の期待にも応える活躍だったと思いますが。
 部員や周りの方々はみんな結構祝福してくださったんですが、監督とコーチだけ褒めてくれなかったんですね。でも逆に、僕としては良かったかなって思います。複雑な感じなんですけど、ここで褒められたくなかったというか。監督が「高校時代勝ち続けてきて、大学で全然走れなくなったから、今この結果で、走れてるってみんな勘違いしてるだけで、お前はこんなもんじゃないんだから。」っていう風に言ってくださって、まだまだ監督の求めてくださっているところが上だっていうのを感じ取れたので、僕ももっと上を目指さなければいけないなって思います。

――久々に表彰台に乗った気分はいかがでしたか?
 表彰式の前に下で待機してるときに、上から「まだか?」みたいな声が聞こえてきて、誰かいるんだなとは思ってたんですけど、上がる瞬間に見たら、部員のみんながいてくれて、それがめちゃくちゃ嬉しくて、「ああこの部にいて良かったな」っていうのをすごい感じました。こういう応援してくれている人がいるから頑張れるんだなっていうか、そういう人がいなくなったら逆に僕はダメなんだろうなっていうか、みんながいてくれるありがたさっていうのを実感しました。

――大学入学以来なかなか結果が出ず、辛い時期もあったと思うのですが。
 入学してきてから、僕の思い描いていたプランだとか目標だとかっていうのを、全くクリアできなくて、理想として思い描いているところと現実とのギャップで、部から離れたいと感じることがありました。みんなが期待してくれてるのに、それをことごとく裏切ってきて、ずっと迷惑を掛け続けてきたので、部に居づらくなってきて。陸上も、勝つために、一番上に立つために僕はずっとやってきたんで、全然歯が立たない、練習は出来ていても、試合で毎回結果が出せなかったら、何の意味も無いんで、本当に「陸上をやめようかな」とかずっと考えてて。それで、去年とかは前駅伝主将の尾崎(貴宏、現:富士通)さんにずっと相談してたんですけど、尾崎さんが親身になって考えてくださって、そこでちょっと、なんとか頑張ろうって思えたっていうか、助けてもらいました。


 

出雲で優勝した今、僕らは一番危機感を
持たなければいけない。

――尾崎前駅伝主将からはどういう言葉をもらいましたか?
 何ていうんですかね。尾崎さんの存在が、安心させてくれるっていうか、精神的支柱でしたね。走りもそうなんですけど、存在がでかかったっていうか、最上級生の在り方っていうのを見せていただいて、何を言われたってわけではないんですけど、その時その時に言われた一言で非常に救われてるっていうか、尾崎さんがこう言ってくれるから大丈夫なんだなって思えたんで。とにかく存在が大きかったです。

――尾崎前駅伝主将が卒業されてしまってからは?
 現駅伝主将の中島(賢士、スポ4)さんが、僕一年生の頃からずっと同じ部屋で、食事とかに連れて行ってもらったり、どこに行くにも一緒にいたりして、ずっと面倒見てくださってたんで、中島さんの存在も大きいです。本当にお世話になってるんで、最後は優勝して終わって欲しいっていうか、より学年が上がるにつれて、四年生に優勝して終わって欲しい、四年生のために自分達が頑張らないとっていう気持ちが強くなっています。

――色々な思いがあって、優勝への気持ちが強くなっているんですね。
 はい。それと、この前の10月16日の幹部交代式から、僕が全体の主将になったっていうのもあって、今は駅伝主将は中島さんで、部をまとめるのは僕の役割になってて、ちょっとややこしいんですけど。主将になってチームを背負うっていうか、早稲田大学競走部っていうのを背負っているんで、負けてしまうとやっぱり後輩とか部員に示しがつかないですし、そういう意味でも、負けられないっていう気持ちが強いです。背負ってるもののでかさに、押しつぶされそうなんですけどね(笑)。

――主将になった経緯というのは?
 僕が入学してきたときに、短距離と長距離の距離感だったり、部としての在り方にちょっと僕は違うなって思う部分があって、四年目で主将になって部を変えたいなっていうのがありました。ただ、(主将になるには)競技結果っていうのが大事で、やっぱり結果が出てない人が何を言っても通らないので、僕達の学年で話し合って僕が主将って決めたときは、まだ日本インカレの前だったんですが、日本インカレで僕が入賞しなかったら、(主将には)ならないっていうのを自分自身で決めていました。だからそれで入賞できたっていうのは、よかったと思っています。

――八木選手はチームへの想いが人一倍強いんですね。
 「部を良くしたい、もっと良くしないとまだ総合優勝には届かない」っていう僕の想いが最終的にみんなに伝わったのかなって思います。でも、ここから部がどうなっていくかっていうのが大事で、まだまだこれからやらなきゃいけないことはいっぱいあります。

――具体的には短距離と長距離の連帯をより強めていくことなどですか?
 そうですね。やっぱり短距離と長距離は同じ部としてやっているので、ここは一つにならないといけないと思います。どうしても、関東インカレ・全日本インカレって、長距離では出られる選手が少ないので、応援に回って、大会に感情移入しにくいっていう部分もあると思うんです。そこをいかにチームとして行動するかっていうか、今まではどうしても個人個人になってしまうところがあったので、『一つのチーム』っていう意識を確立しなきゃいけないのかなと思います。

――長距離ブロック長は三田(裕介、スポ3)選手ということで、八木選手とはいいコンビという感じがしますが。
 そうですね。三田とはずっと一緒にいるんで、やっぱり良いですね。ふさわしいのが誰かってなったときに、やっぱり三田っていう風になったんですが、チームの一番上に立って、チームをまとめるっていう点では、三田が適任かなと思います。

 

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(TEXT=染谷知里、PHOTO=岡崎聡)

 

 


 
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