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競走部駅伝特集〜襷にかける誓い〜 

全日本大学駅伝直前!! 八木勇樹選手インタビュー

前のページより)




 

八木選手のトラックシーズンでの主な成績
日本インカレ:1500m 2位
5000m 5位

――走っている最中はどんなことを考えているんですか?
 走ってる時は、その時にもよるんですけど、大体僕は、「もう陸上やめよう」とか思ってます(笑)。走ってるときに一回はそう思いますね(笑)。やっぱり上手くいかない時とかが多いと、すごいそれを強く感じることもありますし、試合で、力を出し切った満足のいく走りができないんで、その度に「ああまたか」っていうのは心の中にあります。今回の出雲とかでもそうですけど。「自分はこんなもんなんだ」って常々自分に落胆しながらレースをしてるんですよ(笑)。だからずっと自分自身に疑問を投げかけながら、自分に問いながら走ってるっていうか、「なんでこれだけしか走れないんだろう」って思いながら走ってることが多いですね。

――出雲駅伝ではトップで襷を受けましたが、先頭を走る難しさもあるのでは?
 それはありますね。僕も自分でレースを作っていくタイプじゃないんで、やっぱりそういうのはありますけど、ただ、出雲駅伝である程度一人で走れるっていうのもわかってきたんで。だからこそ足りない面っていうのも多く見えてくるんですが、やっぱり成長しないとって感じですね。現状で満足とか全然できないですし、僕自身はこのまま今の力じゃ、これからの駅伝でやっていけないと思ってるので。今まで力負けしてきて、自分が無力だっていうのはわかっているので、やらなければいけないことが本当に山積みで、課題だらけって感じですね。でも、だからこそ面白いですし、辞められないんです。心の中で「絶対いける」って思いながらレースに臨んで、結果走れなくて陸上やめようとか思いながらも、ふと落ち着いて考えたら、まだやれることがたくさんあるんじゃないかなとか、まだ僕自身が見えてないものもあるんじゃないかなっていうのを感じると、やっぱり面白いなって思います。

――今後の駅伝ではより厳しい戦いが予想されますが、他大学の動向は気になりますか?
 あんまり気にならないっていうか、他大の人を気にしている余裕がないですね。「他の人がこうだから、自分もこうする」とかじゃなくて、僕は僕自身やらなければいけないことがあるので。やっぱり今のままだったら、全日本大学駅伝も箱根駅伝も勝てないと思っているので、そう思っていると、人がどうこうじゃなくて、『自分がやらないといけないことを、一日一日やっていかないとな』っていう気持ちのほうが強いです。このチームは、全員が自分の力を出しきったら、必ず勝てるチームだと思っているので、そのためにも、自分に集中する必要があるのかなっていう風には思います。

――現在のチームの状況はいかがですか?(取材を行ったのは10月29日)
 みんな順調ですね。今年のチームはみんな良い形で出来ていると思います。ただ、これが過信になったらダメなんで、今年のチームは強いと思うんですけど、まだまだやらなきゃいけないこともたくさんあるわけで、ゴールっていうのはないので。そういった意味で、今は本当にみんなで高め合ういい環境が出来ていると思います。

――全日本大学駅伝の区間配置などはまだ伝えられてはいないですか?
 はい、言われてはいないです。けど、大体みんななんとなく感じ取ってはいるっていうか、僕も状態次第でどの区間に配置されるか決まると思うんですけど、これは本当直前にならないとわからないですね。僕達全員の配置が決まるのは前日なんで、結構みんな走るか走らないかもわからない状態なので、夜寝られない人とかもいます。

――最終的な目標は箱根駅伝だと思いますが、チームとして山対策など箱根への意識や取り組みは?
 監督、コーチにはいろんな考えがあると思うんですけど、今年は選手層っていうのが去年より上がってると思うので、その面ではあまり心配は要らないのかなっていう風に思います。逆に上り下りでどうっていうよりも、平地でそれ以上に稼げたら良いわけで、山は特殊区間にはなりますけど、要は一人ひとりが力をつけるっていうのが一番大切なのかなっていう風に思います。

――今年のチームはエースがいないと言われますが。
 精神的なものとかを考えますと、やっぱり矢澤(曜、教3)が安定してますし、平賀(基理、2)もそうですけど、そういうエースって言われてもおかしくないものは二人とも持っていると思います。ただ早稲田のエースっていうとこまでは、誰もいっていないのかなっていう気はします。エースって単純に一番強かったらエースかっていうと、そうじゃないと僕は思うんですよ。竹澤(健介、現:エスビー食品)さんはもう大エースでしたけど、尾崎さんも僕はエースだと思ってて、精神的にまとめられるとか、存在が良い影響を与えるとかっていうのがエースだと思うんです。そういうのを考えるとやっぱりまだいないのかなって。そういう存在になるだけじゃなくて、僕の場合は力でも早稲田のエースにならなければと思ってるんで。ただ、早稲田のエースを語るにはまだまだ力が足りないんで、僕はこれから力をつけていかないとと思います。

箱根・全日本で勝つために必要なことは、メンバーそれぞれが自分の力を出すってことに尽きると思います。

――平賀選手を始め、後輩達の活躍からは刺激を受けますか?
 刺激は受けますね。やっぱり後輩には負けられないっていうのもありますし。後輩が入ってきてから自分自身変わったっていうのもあって、今の後輩達がいなかったら、今の僕もいないと思うんで、後輩には感謝してます。でも負けたくないです。大迫(傑、スポ1)は、ご飯とか食べにいったりジョグとかするときに話すと、こだわりとか芯の強さを持ってるなっていうのを感じますし、高校時代の後輩の志方(文典、スポ1)も春先に良い記録を出して、力自体はかなりあるんで。やっぱりあいつは僕の高校時代の強い姿しか見てないので、あいつの前で格好悪い走りはできないっていうのもあります。佐久長聖勢も走れてて、西脇工業の二人も走れてるっていうことで、伝統校の力っていうのがすごい大きいと思うんですけど、色々な学校の伝統とかが合わさった今の早稲田大学競走部は、本当に良い環境だなって思います。もう言葉では表現できないんですけど。ただ、この良い環境を僕がまだ生かしきれてなくて、僕が気づいてない面が多々あると思うんで、常に何が足りないのかっていうのを探求していかないといけないのかなって思います。

――そのために、主将という役割は適任ですね。
 そうですね。ただ探求していくだけじゃなくて、やっぱり早稲田大学って日本の学生陸上界とかを牽引していく存在だと思うんですけど、そこの主将となると、日本の学生陸上っていうものも背負っていかなければならない立場だと思うので、そういうのには僕はまだまだ力も及ばないですし、何もかも足りないんで、早くそれに見合うような存在になれるように、結果を出せればなと思います。

――全日本・箱根に向けたチームとしての目標、八木選手個人としての目標を教えてください。
 チームとしては、当然優勝しかないと思うんです。2位だったらもう他の順位と変わらないんで、優勝しかないですね。個人としては、それにどう貢献できるか。やっぱり駅伝って個人で走るわけじゃないので、自分がこうするとかそういう欲を出すんじゃなくて、前の走者から受けた襷を次の走者に渡すっていう、駅伝ならではの醍醐味っていうものがあると思うので、良い流れを作って、優勝を決定付けられるような走りができたらなとは思います。まあ、まだまだ力が足りないんで、大きいことはいえないんですけど(笑)。

――練習では常に先頭を走ってると伺いますが、まだまだ力不足を感じますか?
 はい、足りなさ過ぎです (笑)。練習に関しては、ちょっと変わってきてて、一年目二年目から比べると練習の質的にはそんなに上がってきてないんですよ。なぜかというと、今練習に対する集中力を、良い意味で自然と落とせてるっていうのがあって、それが上手く試合で結果が出せることにつながってきていていると思います。今まで練習でMAXを出し切っていたのが、自然とそのMAXが出なくなってきてて、良いのかわからないですけど(笑)、練習に集中し過ぎなくなってきたんですよ。それが上手く試合との調整のバランスにつながってるのかなって。今まで練習に傾きすぎてて、試合が全くダメだったのが、上手く調整できてきたんで、あとは本当結果だけですね。ただ、勝負って本当に難しくて、一番になりたいっていう思いが強くても、みんなそれは一番になりたいわけで。やっぱり勝ちを知ってるからこそ、勝つことは難しいっていうのがわかるので、それをうまくやらなきゃいけないんですよね。

――最後に、ファンの方へのメッセージをお願いします。
 応援してくれている人には本当に感謝しているとか言ったら、安っぽくなっちゃうんですけど、何で走ってるのかって考えると、僕自身のためだけだったら僕はとっくに陸上辞めてると思うんです。やっぱり応援してくれる人とかそういう人がいるからこそ、陸上を続けていられると思うんで、駅伝で最高の力を出して、そういう姿を見ていただきたいなと思います。


 インタビューを通して終始出てきたのは、「自分はまだまだ力が足りない。」、「これからもっと成長しなければならない。」という言葉。現状に満足することなく、常に上を目指す八木選手の陸上に対する熱い想いが、強く感じられました。今後の全日本大学駅伝、箱根駅伝では、八木選手の激走が早稲田大学を優勝へと導いてくれることを期待したいですね。

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(TEXT= 染谷知里、PHOTO=岡崎聡
 


 
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