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 春のスポーツシーズン開幕が待ち遠しいこの時期。特別企画として、競走部・江里口匡史選手のスペシャルインタビューを全3回に分けてお送りします。
 第1回目のテーマは「2010年度シーズンを振り返って」。大学ラストイヤーとなった昨年は、関東、日本インカレや日本選手権といった国内の主要大会では全て優勝。しかし一方で、シーズン最大の目標に掲げていた11月のアジア大会では悔しい結果に終わった。江里口選手の目には2010年度の自身の戦いぶりはどのように映ったのだろうか?(取材を行ったのは1月22日)





 
江里口匡史選手プロフィール
  スポーツ科学部4年
  鹿本高校・熊本出身
  自己記録  100m:10秒07
        200m:20秒88

――まず始めに、2010年度シーズンを振り返ってみての感想は?
 最終的には世界大会の舞台で自分の実力を発揮するために、昨シーズンは海外の試合の経験を増やしたり、国内であっても海外の選手と走るグランプリの試合などもあったので、そういった試合で自分の実力をどうやって発揮していくのかっていうのをメインにおいたシーズンでした。7月ぐらいまでは比較的自分の中でも感触も良いまま、7月にはヨーロッパにも遠征に行って10日間くらいで4試合に出ました。初めてあんなにバタバタしたまま、試合で走って次の日は別の国に移動してっていう経験をして、4試合とも全部国も違ったんですよ。そういうこともしながら前半シーズンは日本選手権も勝つことが出来て、関東インカレもやっと100mで勝てて、個人的な結果を見れば、すごく前半は良い感じで過ごせたかなとは思いますね。

――その7月のヨーロッパ遠征で感じたことは?
 まず、スポーツっていうものの見方が海外はやっぱり日本とだいぶ違うなと思うので、単純にこれが陸上競技なのかなっていうような楽しみ方もまた見つかりましたし、あと、日本だと陸上の試合っていうとスタンドと競技場の中がちょっと遠いような感じがあるんですけど、海外だとそこも近いような、陸上競技がエンターテインメント的な活躍というか、そういう見られ方もしてるのかなと思いました。それは多分陸上に限らずスポーツ全体に対するものの見方だと思うんですけど、そういう中で自分が競技をやると、単純にパフォーマンスが良かったものに対して会場は色々反応しますし、自分では良くなかったと思ったとしてもすごいそこに来てる人達は楽しそうに陸上を観ていたので、そういうのっていいなと思いましたし、自分もそこで走れているのが楽しかったです。

――やはりヨーロッパの試合だと観客も多かったり、雰囲気も違いますか?
 そうですね。日本だと試合があったら、試合に出る人の家族とか友人とかが来るじゃないですか。あっちの人達は、自分の知り合いとかがいない試合でも多分観に行ってるんですよね。昼からビールとか飲みながら単純に陸上を観て楽しんでいるところもあるので、そういうのはヨーロッパのすごく良いところだと思いましたね。

――具体的に、経験になったなと感じた部分は?
 途中までは10人くらいの団体での移動だったんですけど、3試合目からは一人で全部移動と試合とをやったんですね。飛行機の日程とかは立ててもらってたんですけど、現地での実際の移動とかは全部一人でやって、母国語の使えない場所で色々人に聞きながら物を見ながら判断して移動していく、そういうことをやることも今回の目的の一つとしてありました。競技場に行っても、代表として行けばいつも体のケアやメンテナンスをしてくれる人がいるんですけど、それもなく自分で自分の状態を確かめながらどうやった方がいいのかっていうのを見て、いざ試合に出る。試合が終わった後も、終わってすぐご飯を食べて寝るんではなくて、次の試合に向けてケアをしたり、またすぐ移動になるのでその移動の疲れを抜いたり。今までは日本にいると自分が競技をすることだけに集中できる環境が多かったんですけど、それ以外の部分を自分でやることで、試合でも少し物怖じしなくなったというか、海外でも堂々としていられるようになったなと思います。


 

欧州遠征でまわった国はスイス、チェコ、
スウェーデン、ポーランドの4カ国。

――海外転戦を経験して、自身の中に変化などはありましたか?
 自分の中で何か試合になると、その自分の最高のものを出していかないといけない、常に自己ベストを狙うような姿勢で試合に臨まなければいけないって思ってたんですけど、海外で連戦を繰り返すうちに、もちろん自己ベストを狙うのは重要なんですけど、自分がメインとする試合は別にあるので、そこに繋げるためにその日のポイントを自分なりに一つ置いてみたり、その日のうちの最高の走りを心がけるっていうように、『試合の捉え方』が少し変わってきました。アップの段階で今日は自分のどこの動きが重いとか、どこの筋肉が張っているっていうのを、ちゃんと自分が感覚として感じながら、「じゃあ今日の試合はこういう動きで試合に臨んでみよう」とか、「今日はこういう状態だからこれぐらいの動きやタイムを狙っていこう」っていう風に思えるようになったので、少し大人になれたのかなと思います。いつも全力疾走しているような高校生のような試合運びをしていてもダメだと思うので、重要な試合を定めてそこに向けていくための練習というか慣らしというか、『試合に繋げるための試合』っていうのを出来るようになったかなと思いますね。

――海外での経験と同時に、前回の取材では「2010年度は早稲田の選手として結果を残したい」とも話していましたが。
 学生最後の年だったので、やはり学生の試合はすべて勝つことを自分では義務付けて臨んでいました。3年まで(日本)インカレに関してはずっと勝ってましたし、学生には負けないってことを自分の中で決めてやっていたので、4年目が一番自分にもプレッシャーをかけていたと思いますし、周りもそういう目で見ていたと思うので、100mに関して言えば、自分で勝つと決めて実際に勝つことが出来たのは自分の成長出来た一面かなとは思います。けど、リレーに関しては一度も勝つことが出来なかったので、そういう意味でのチーム作りであったり、特に自分が所属している短距離ブロックの全体的な強化というか、個々の能力の発揮が出来なかったのが、自分の責任が大きくあると思いました。やはり個人で勝つことが出来てもリレーで勝てないとダメですし、特に4継は伝統のある種目なのでそれが勝てなかったことがすごく悔しかったなと。

――2010年度はチームの主将として臨んだシーズンでしたが、いかがでしたか?
 良くも悪くも責任は主将に来ますし、自分で結果を残すことも大前提なんですけど、早稲田として戦っていく上では、やはりチームの成績っていうのをすごく重要視していかなければいけないなと思いました。そのためには、自分が競技で見せることももちろん重要なんですけど、今考えればその試合までの過程の中でもっと出来たことがあったかなと。関カレや全カレの前も、もっと「チーム全体で結果を出すんだ、自分のベストの走りをしていくんだ」と、個人のレベルの違いはあったとしてもその試合に向けて各々のベストを発揮させるようなチームの雰囲気作りが大切で、それが少し足りなかったかなと…。

――それでも、日本インカレでは46年ぶりの総合2位に入りました。
 8月は夏休みでずっと陸上に専念できたんですけど、やはりみんな練習練習って形でそこのチーム作りに関しては上手くいかなかったかなと思います。日本インカレに関して言えば、4年生があまり成績を出せなかったですし、下級生がすごい頑張ってくれたんでああいった結果(総合2位)にはなれたかなとも思いますけど、やっぱり上級生の引っ張り方が、ちょっと僕らが失敗したかなと思いますね。それが反省点で、自分も試合前は競技に集中してっていう形に少しなり過ぎて、やっぱりそこをもっと率先してやっていかなければダメだったかなと思うので、そこは難しいなと感じました。

 

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(TEXT、PHOTO=岡崎聡)

 

 


 
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