――ではマネジャーとして仕事をしていく上での原動力は?
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「チームの心臓部」、「機長をサポートする副操縦士」と渡辺駅伝監督が評する主務と副務。お互いへの想いが目から伝わってきますね。
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福島:すごい綺麗ごとになっちゃうんですけど、でも僕の場合そうだったんで…。チームが勝つこと。マネジャーって最初の1年ちょっとくらいは我慢できるんですけど、そのうちやっぱり辛くなってくるわけで。「なにやってるんだろう」みたいになるんですけど、でも、ちょうどいいタイミングで駅伝が3個勝って、4年になってからはインカレも全部勝っていて。僕の力じゃなくて選手の力なんですけど、選手の力のおかげで自分もその一員にいれたって事が嬉しかったですし、「もっと味わいたい、もう一回味わいたい」って思って、「勝ちたい、勝ちたい」っていう気持ちでやるので、原動力を感じます。
卯木:僕ももちろんチームが勝つっていうのは…まあ前提として。正直言うと、僕の中での原動力は言葉は悪いんですけど、(福島さんを)ライバル的な目線でよく見ているのがあって。マネジャーになったのも福島さんがやってたからですけど、選手時代はほんとに目立ってなかったんです。
福島:喋ってないっす、もう(笑)
卯木:元々チームの中でも目立ってなかったですし、存在消してたんですよ。 ウィルウィン:
ご自分でもそう思っていましたか?
福島:もう申し訳なかったです。
卯木:結構怪我ばっかしてたし、「最近走ってんじゃん」みたいな(笑)。上からじゃないですけど、そんなにわーっ!ていう感じではなかったです。ですけど、(福島さんが)マネジャーの仕事をしていくうちに、監督からもチームの仲間からもすごく信頼得ている姿を見て、すごいなと思って。そういう面で、「こういう人の下で働くんだから、その上に行きたいな」っていう気持ちがあって。それを自分の中のモチベーションにしてました。もちろんチームも勝っていきましたし、それにともなって評価もどんどん上がっていく福島さんを見て、福島さんが抜けたら次は僕が(主務に)なるんで、周りからは同じ土俵で見られるわけですから。「自分もレベルアップしないとな」、「悔しいな」みたいな焦りの精神を持ちながらここまで来ましたね。
福島:でも下が卯木じゃないとだめなんです。卯木の代にもやっぱり結果が残せてない人とか(マネジャー)候補がいて、だいたい毎年そういうゾーンからマネジャーが出るんですけど、じゃなくてその学年は卯木がマネジャーやって、そこのゾーンはまだ選手を続けてるので。でも正直その選手たちだったら絶対…絶対というか役不足というか…。その代では絶対卯木が一番いいと思ったんですよ。だから僕、勧誘しまくったんですよ(笑)。「マネージャーなれ」みたいな。卯木は日本選手権も出てましたし、関東インカレも全日本インカレも出てるんですよ。その中でマネジャーになったのは僕のせいというか(笑)。「めっちゃ勧誘してすいません」って感じなんですけど、でも卯木がいてくれたから…。僕は3年から主務を務めさせていただいてるんですけど、振った仕事は確実に返ってきますし、報告・連絡・相談ありますし。非常にやりやすいし良かったな。ありがとうございます。
――普段から今のようなお話はされているのですか?
福島: 褒め合うのは…いや、高め合ってます(笑)
――普段は言えないけれど、この機会を使ってお互いに言いたいことは?
卯木:マネジャーになって1年とちょっと経ちますけど、思うのは、「結局(福島さんに)届かなかったな」っていう事ですね。そこは自分の中で残念、残念っていうか「悔しいな」って気持ちです。やっぱすごいなんだろうなあ。範囲が広いんですよ、見えている範囲が。色んなところに目が行き届いてるし、振ってくれた仕事を自分が忘れちゃってる時とかも思い出させてくれたり、本当に見えてる範囲は広いなと。あと、フォルダがいっぱいあるっていうんですかね、整理ができるっていうか。僕のイメージなんですけど、フォルダがいっぱいあって、それをすぐにパッパッて取り出せる。僕はここらへんにばーってある感じで結構いっぱいいっぱいになっちゃって、自分の容量の中でしか仕事ができないんですけど、福島さんは容量に余裕を持っているというか。そこはすごい。 ウィルウィン:
余裕が感じられるということでしたが。
福島: いや〜正直ないですね(笑)。 ウィルウィン:でもそれを周りに見せることがない? 福島: いや、見せてる。イライラしてたりっていうのを見せたりもしますけどね。 卯木:そういう時は鎮まるのを待ちます(笑)
――卯木さんは主務になられたら、福島カラーを継ぎますか?それとも違うカラーを?
卯木:マネジャーになった時は全部福島さんの真似をしようと思っていて。それが一番手っ取り早いじゃないですか、成功例を真似するのが一番。でもやっぱり途中途中でどっちが正しいとかは分からないんですけど、自分の中で「こうしたいな」っていうのがあったり、「自分ならこうするな」っていうのが生まれてきて。福島さんの真似をしてても福島さんにはなれないじゃないですか。だから福島さんと並んだりそこからまた上に行くためには、どこかで自分の色というか、そういったものを出して行かなきゃなとは思うので。もちろんいいところは引き継いで…、ほとんどいいところなんですけど(笑)、ところどころで自分の思っているマネジメントをやっていこうかなと思います。
――福島さんは3年の途中から主務をやってこられましたが、ストレスを感じることは?
福島: ストレスですか…。やっぱ3年生なのに4年生に指示を出さなきゃいけないので、最初の頃はそこを理解してもらうというか。立場上言わなきゃいけない事と、福島翔太として言いたい事とが正直あるじゃないですか。でも、立場上言わなきゃいけない事を3年生の時から言わなきゃならなかったので、それはやっぱり常に辛かったですね、はい。正直そうでしたね。
ウィルウィン:
3年生から経験を積んでいる分、4年生になってから余裕を感じる面はありましたか? 福島:そうですね、既に一回やってるっていうのは本当に大きくて、6月に何があって8月に何があってっていうのが全部見えているので、2年目は力の使い方が楽にはなりました。その中でどれだけアクセル踏まずに組織を動かせるか、とか、全力を出さずに全力のレベルで動かすっていうのをずっと意識してやってて。でも今はあと一ヶ月なんで、アクセル踏みます(笑)
――渡辺監督(渡辺康幸=平8人卒)がお二人に寄せる信頼が大きいように感じます。そのような思いを受け取ることは
福島:
ブラジルのツートップってやつ。思いですか。よく食事に連れてってくれるので、それはほんとにありがたい事ですし、結婚式も絶対来てくれるっておっしゃってくれているので。僕の結婚式に渡辺さんと相楽コーチが。それは嬉しいですね。 ウィルウィン:
ちなみにお相手は…
福島:それはまあこれから10年以内に探します、はい(笑)。
卯木:やっぱりほんと監督コーチからすごい信頼されてて。マネージャーってよりもほんと距離近くまでいってるんですよね。
福島:あ、僕の話か(笑) 卯木:はい。近くて色んな事話してもらってますし、ほんとに信頼されてるなっていうのがあって。僕自身は、うーん。感じてるかと言われればまだ直接はそんなに感じてるとは思わない。監督も「評価してるよ」とは言わないと思うし。でも、評価していただけるようにこれから頑張っていこうと思います。
――では理想の主務像、マネージャー像は?
卯木:
難っ!
福島: 僕はいて、竹澤さん(竹澤健介=平21スポ卒)時の主務の丸尾さん(丸尾祐矢=平21スポ卒)っていう、僕が1年生の時の4年生だった方がいらっしゃるんですけど。今ヱスビーでもマネジャーやられてて。竹澤さんが一時期所沢で練習されていたので、丸尾さんも所沢に来て一緒に計測とかしたり、今でも合宿先でたまに一緒になったりするので、お話したりするんですけど、「この人には絶対敵わないな」っていうのはいつも思ってて。というのは、僕の性格の問題もあるんですけど、細かい事とか気遣いが全くできないんですけど、丸尾さんは細部を理解した上で一番上まで全部知っているっていう…、ミクロからマクロまで全部知って、分かって、話して、行動しててっていう方なので、「いや、この人には無理だな」っていう。僕は上でポイントだけ押さえてやってきたので。すごいエネルギーいると思うんですよ。僕もそれ一時期やろうと思って頑張ったんですけど、エネルギー不足でキャパを超えまして。「ちょっとこれは無理なんだろうな」っていう。丸尾さんには頭が上がりません。
卯木:僕は…うーん…、全然浮かんでこない。 福島: 好きな経済学者とか言えばいいじゃん。 卯木:本読まないですもん。 福島: 東野圭吾でいいじゃん。
卯木:いや〜。
ウィルウィン:
では、マネジャー像などに関係なく尊敬している人はいますか? 卯木:歴史上の人物で。大石内倉助って知ってます?忠臣蔵の人で。大石内倉助の言葉で僕の座右の銘になっちゃうんですけど、「本懐を遂げるまでは耐えがたきを耐え忍びがたきを忍び」って言葉があって、それが昔から好きで。つまり、最終目標が達成されるまではどんな事でも耐えて、努力しろっていう。普通の事ではあるんですけど、それを実際忠臣蔵で命かけて反乱を起こしたっていうのがあるんで。
理想とするマネジャーは…、そうですね、全部全力でやれる人。そんぐらいのキャパを持ってるような人っていうのがありますね。「ここは8割でこっちを一生懸命やろう」とかじゃなくて、自分のキャパシティが高ければ高いほど、全部に対して高いレベルで当たれるんで、どんなことでも全力で、フルスロットでやれる人間。 福島:絞り出したな〜(笑)
――マネージャーになって改めて感じたこととは
福島:なんですかね…
卯木:先行いいっすか?
福島:うん。
卯木:じゃあ先行で。僕は2つの視点から感じてて。1つは選手に対して思う事で、自分も前はその1人だったんですけど、やっぱりそれぞれがめちゃめちゃプライドって言ったらあれですけど、自分の持ってる考えが強いなって改めて感じたっていうのがあって。各地方や学校で1番活躍してた人物が集まってくるんで、自分がスタンダードだと思ってやってる人間が多いっていうのがあって。でもそれを崩そうとは別に思わないですね。それぞれの基準っていうものを残しつつも、でも1つの方向を向いてやらないと勝てないじゃないですか、駅伝って。っていうのがあるんで、やっぱ良くも悪くも芯がすごい強い人物が多いなっていう。
もうひとつは監督に対してなんですけど、渡辺監督なり礒(繁雄=昭58教卒)監督なり選手の人間的成長を期待してるなっていうのを感じて。単純に陸上で速くなればいいとかじゃなくて、社会に出て一つの歯車として動く時に必要な資質とかそういった育成まですごい見てくれてるなって。選手だった時は分からなかったんですけど、マネジャーになって監督と話したり、監督のやってる事を客観的に見るとそういう事が分かって、「早稲田すごいな、素晴らしいな」と。手前味噌ですけど、思いました。
ウィルウィン:
卯木さんから見ていい意味で成長したな、変わったなと感じる選手は? 卯木:変わった選手…。
福島:これ重要っすね!これでクローズアップされるからね。
卯木:クローズアップですね…。神内(隆年=スポ3)なんですけど。あいつもすごい自分の中のプライドとかエゴが強くて。でも怪我も多くて一回崩れかけてほんと色んな人に話聞いたり、試行錯誤してて自分が見えなくなってた時期があったんですけど、最近は一周して自分の当初のプライドというか軸が再構築されてきたというか。それがどういう結果に繋がるかは分からないですけど、一か八かといいますか、当たればでっかいですし外れればまあ変わってない状況かもしれないですけど…、でも今の神内には爆発してくれるんじゃないかっていう期待はしています。 ウィルウィン:
神内選手はお調子者キャラというイメージがありました。
卯木:確かにそうですね。結構チャラチャラしてて、ミーティングとかでも的を射ない見当はずれなことばっか言ってて、馬鹿にされるキャラなんですけど。でも、この前ミーティングした時に、「絶対俺来年関カレ全カレ出て箱根も走る。周りが何を言おうが俺だって走るから」って言ってくれてたんで、すごい、ちょっと感動しました。
福島:選手やってると自分の殻に籠るのが普通じゃないですか、競技者として結果残すために。でもマネジャーになると自分の殻に籠るとかがないわけで、組織を見る余裕があったりとか、起こった色んな問題を一般化して考えられる立場にいるわけで、そういうふうに組織を見られるようになったのがマネジャーになってからなんですけど、でもたまに選手でもそういう考えを持った人がいるんですよ。そういう人ってだいたい強い選手なんですね、結果を残せてる選手で。やっぱそういう選手が人間力的にも競技力的にも成長していって、世界に出ていったりだとか成功していくんだなって感じました。それが誰かっていうのは…秘密です(笑)
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